環境省へのパブコメ出しました。
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案件番号: 195140066
案件名
:「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議の中間取りまとめを踏まえた環境省における当面の施策の方向性(案)」に関する
意見募集について
所管府省・部局名等: 環境省 総合環境政策局 環境保健部 放射線健康管理担当参事官室
意見・情報受付開始日: 2014年12月22日
意見・情報受付締切日: 2015年01月21日
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【意見その1】
受付番号 201501210000329056
(2)福島県及び福島近隣県における疾病罹患動向の把握
について、「がん以外の疾患」については「既存のデータベースを活用する」との方向性が示されているが、これでは不十分・不明確である。
チェルノブイリ原発事故以降、放射能汚染区域においては、甲状腺がん以外にも、甲状腺機能低下、白内障、心臓疾患、免疫不全、白血病、糖尿病をふくむ多種多様な内分泌系疾患などの増加が確認されており、とりわけ子どもにおける疾患の増加が見られる。
ウクライナ・ベラルーシ・ロシアにおいては、福島県中通り地方よりも汚染度の低い地域でもこれら疾患の増加が現実におきていることから、福島原発事故による広範な汚染区域においても、予防原則にたって、多種多様な疾患や症状の増加に備えた健康管理・支援体制を早急に整える必要がある。
これまでの福島県健康調査においては、甲状腺がんや「心の健康」など狭く限定された疾病のみを想定した調査がなされてきたが、今後はこれらに加えて、甲状腺炎、甲状腺機能低下、白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、貧血、白内障、循環器系疾患、肝機能低下、免疫・内分泌系障害、乳がん、糖尿病など、幅広い疾患を想定した検診項目を立て、血液像の詳細な検査、心電図検査、尿検査も含めて長期間実施する体制を整えるべきである。放射能汚染は県境を越えて大きく拡がっており、健康調査と医療費減免を含む医療保健支援は福島県外でも実施していかなくてはならない。現在かならずしも顕著な汚染が残留していなくとも事故直後に放射能雲が通過した地域も対象に含める必要がある。
福島原発事故による県外避難者は、46都道府県860市町村に離散しており、10年後、20年後には、福島原発事故で被ばくした人々が全国のあらゆる市町村で暮らしている状況を想定して、医療支援の態勢を準備することが求められる。したがって、国が責任をもって健康管理体制を構築するとともに、都道府県の保健行政、基礎自治体である市町村の臨床現場との連係を重視して対処すべきである。臨床的な早期把握と必要な医療保健支援とをうまく繋げるためには、一方では多様な領域の専門医との円滑な連絡が不可欠であり、他方では地元の開業医や保健師をふくむ総合医療・保健関係者との連携が、ともに重要である。そのためには、環境省・厚生労働省・文部科学省が省益や権限にこだわらず協力しあうことが必須である。
環境省においては、「子どもの健康と環境に関する全国調査」(エコチル調査)など既存の調査プロジェクトの枠組みや経験を活かすことも重要である。健康管理支援体制の設計・運用・評価、および健康データの一元化と利用については、倫理的な側面もふくめ、透明性・独立性・公正性(とくにメンバー構成における公正さ)を備えた検討委員会による監査が求められる。
現行の医師法においてはカルテ保存期間が5年とされているが、労働安全衛生法による事業主健診では(想定される有害物質の種類に応じて)30年ないし40年の保存が定められている。原発事故災害も長期の健康影響が懸念される「公害」であるとの観点から40年ないしそれ以上のデータの保全が重要であり、この点を法令化すべきである。
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【意見その2】
受付番号 201501210000329089
100mSv以下の放射線被曝(いわゆる低線量被曝)の危険性について、中間とりまとめではあたかもリスクが証明されていないかのように記載されているが、最新の科学的知見に照らせば明白なエビデンスが続々と提出されており、そのことについては専門家会議に招聘された複数の外部専門家から会議の席上、具体的に指摘があった筈である。中間とりまとめがこれらを無視しているのは重大な瑕疵である。
低線量被曝による健康影響を示す疫学的調査データは少なからず存在する。代表的なものとして、
・広島・長崎原爆被爆者寿命調査(LSS)第14報(Ozasa K et al, 2012, Studies of the mortality of atomic bomb survivors, Report 14, 1950-2003: an overview of cancer and noncancer diseases.
Radiation Research 177:229-243)
・テチャ川流域(マヤーク再処理工場爆発事故の影響地域)住民の疫学調査(Krestinina LY et al, 2007, Solid cancer incidence and low-dose-rate radiation exposures in the Techa river cohort: 1956-2002.
International Journal Epidemiology 36:1038-1046)
・15か国核施設労働者におけるがんリスク(Cardis E et al, 2007, The 15-country collaborative study of cancer risk among radiation workers in the nuclear industry: estimates of radiation-related cancer risks.
Radiation Research 167:396-416)
・原発周辺で小児白血病に有意な増加がみられるとしたドイツの調査(Koerblein A, 2012, CANUPIS study strengthens evidence of increased leukemia rates near nuclear power plants.
International Journal of Epidemiology 41:318-319; Schmitz-Feuerhake I et al., 1997, Leukemia in the proximity of a German boiling-water nuclear reactor: evidence of population exposure by chromosome studies and environmental radioactivity,
Environmental Health Perspectives 105, Supplement 6:1499-1504)
・子どものCTスキャンと白血病・脳腫瘍の発症の相関についての英国の調査(Pearce MS et al, 2012, Radiation exposure from CT scans in childhood and subsequent risk of leukemia and brain tumors: a retrospective cohort study.
Lancet 380:499-505)
・CTスキャンによる医療被ばく(5ミリシーベルト前後)で子どものがん増加が確認されたオーストラリアでの大規模疫学調査(Mathews JD et al, 2013, Cancer risk in 680 000 people exposed to computed tomography scans in childhood or adolescence: data linkage study of 11 million Australians.
British Medical Journal 346:f2360)
などがある。
これらの知見に照らせば、福島原発事故の影響地域(福島県内に限らない)においても予防原則に立った対処をとるべきことは明らかであり、国際的な標準でもあるLNTモデルに基づく考え方を遵守した施策をとっていくことが求められる。ICRPの2007年報告においても、LNTモデルが予防原則にふさわしいアプローチであることが明記されている。
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提出した意見は、以上2本。
「原発事故子ども・被災者生活支援法」との関係について、支援法の理念に即した施策を具体化せよ、などなど言いたいことは他にも色々あったのだが、時間切れ(・_・、)
● 専門家会議(いわゆる「長瀧会議」)の「
中間とりまとめ」のあまりのひどさについては、
「放射線被ばくと健康管理のあり方に関する市民・専門家委員会」によるカウンターレポートで厳しい批判がなされている。 →
経緯こちら レポート本体(PDF)こちら
● 専門家会議の委員である春日文子さん(日本学術会議・前副会長)は、環境省の施策案の不十分さについて、また専門家会議の「中間とりまとめ」それ自体の不十分さについて、雑誌『科学』2015年2月号に寄せた文章「
環境省専門家会議中間取りまとめを踏まえた新たな施策の要望」において切々と述べておられる。
● 国際環境NGO「FoEジャパン」が出したパブコメ →
こちら
● 原子力市民委員会の報告書『原発ゼロ社会への道 ── 市民がつくる脱原子力政策大綱』の第1章第4節「健康の権利」もぜひ御覧あれ。 →
こちら