2011年9月29日

【Nuke】除染活動を通じて見えてきたこと


 月刊『部落解放』11月号(10月中旬発行予定)の巻頭コラムに寄せた文章(8月末執筆)をもとに、若干手を加えたものを以下、公開します。

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 2011年3月11日の原発震災(東電事故)により、政府が住民の避難や避難準備を指示した区域からさらに数十キロ離れた地域でも法定の「放射線管理区域」をはるかに上回るような汚染が生じている。本来、ただちに避難(最低限でも小児と妊婦の退避)がなされるべきだが、事故をなるたけ小さく見せかけたい政府は消極的な対応に終始し、「ただちに健康に影響しないので心配するな」との大本営発表が繰り返された。小さな子供や胎児を抱える親たちの中には意を決して自主的に避難した人も少なくないが、住居・仕事・学校・介護など様々な制約のある中で汚染地に住み続けざるをえない人々も多い。安心情報を鵜呑みにして危機感をもたず「普通の日々」を送る人もまた多い。

 このような異常な事態を憂慮した私たち(いくつかの大学の教員と福島住民の協働チーム)は放射能除染・回復プロジェクトを立ち上げ、5月中旬の第1回調査を始めとして、福島市(おもに北東部のホットエリア、すなわち放射能汚染濃度の高い区域:渡利地区、御山地区、大波地区など)に通って、通学路や公園や駐車場などの放射線測定、家屋や農園の除染実験、企業との話し合い、記者会見などを展開してきた(プロジェクトの基本的な考え方や進行状況は7月19日の記者会見資料を参照されたい)。

 事態のあまりの深刻さとスケールの大きさ故、私どもたかだか十数人の活動はドンキホーテの如き混乱と滑稽さを伴う。しかし、活動を毎月重ねるにつれ、少し見えてきたこともある。

 当初、国も県も市も、汚染は心配ないレベルだから避難も除染も必要ないとの姿勢だった。5月頃は「じょせん」という言葉を聞いても一般の人には何のことか分からないのが普通だったろう。しかし、私たちのグループ以外にも放射能除染を試みる動きは日々増えていき、それらが報道されたり、土壌汚染濃度についてのデータが次々と明らかになるにつれ、「このまま住み続けてよいのか」という問題意識を明確にする住民も増えた。行政の側からすれば「住民の不安」が放置できないレベルに達したのである。

 7月中旬あたりを境に、行政側は突如「除染計画」に積極的になり、そこにビジネスチャンスを嗅ぎつけた企業や原子力業界団体の動きもにわかに活発化した。だが、行政主導の除染は「住民を安心させる」ことが目的化しており、「避難させない」ための口実にされている。

 継続居住が可能な地域の除染は急ぐべきだが、そもそも「継続居住が可能かどうか」の判断ができるほど綿密で徹底した線量測定を行政が怠ってきた(あるいは測定結果を公開しないできた)というのが実情である。除染作業では、ホットスポットの確認や高線量の要因(たとえば児童公園であれば芝地や滑り台着地点の土など)の特定と除去を優先しておこなうが、地域全体として線量が高すぎるところでは、まず立入禁止にしたり住民を避難させたりして、そこの除染は後回しにするという判断も時には必要となる。

 除染の可能性だけを強調して、食品による内部被曝を過小評価するのも大きな間違いだ。校庭の土を削って放射線量が下がったのでもう大丈夫、さぁ「地産地消給食」を、といった倒錯した押しつけは受け入れがたい。

 私たちのプロジェクトでは、「避難させないための除染」という考え方をとらず、除染と避難は「放射線被曝低減」のための総合対応の一環として連携して実践されるべきもの、との考え方に立つ。また、放射能を拡散させないための配慮として、できる限り水を用いず、固めて剥ぎ取る方式を追求している(詳細は前掲ウェブサイトを参照)。

 福島県やいくつかの市町村では、圧力水洗浄、つまり放射性物質を含む汚れを高圧ポンプで洗い流す方法を提唱している。この方法だと、除染現場から汚染を移動させることはできても回収することができない。汚染水の行き先を考えずに「洗え、洗え」では、放射能を拡散させ二次的な汚染(たとえば下流でのホットスポット形成や農業用水への混入)を招く。現時点でも下水処理場の労働者の放射線被曝は深刻な問題であるが、それがさらに悪化する恐れも高い。

 洗い流すことによる一時的効果は、住民にひとときの「安心」を与えるかも知れないが、落ち着いて考えれば、人々がたがいに汚染を押しつけ合う結果となる。自らを守るために放射能を洗い流そうとする人も、下流でそれを押しつけられる人も、ともに原発事故の被害者なのである。被害者どうしを分断し、被害を押しつけ合うような「除染」であってはならない。行政主導の除染事業では東京電力の責任と義務が不問に付されているが、加害者企業の「汚染物引き取り責任」と賠償責任を見過ごすわけにはいかない。

 原発震災によって脅かされているのは人々の健康であり、経済の基盤である土地と水であるが、同時に、避難や移住のための正当な支援を受ける権利の著しい侵害でもあり、被害者が加害者になる状況を強いられるという悲劇でもある。原発震災は人災であると同時に「人権災害」でもあるということを銘記したい。



2011年9月15日

【Nuke】福島市での除染活動で見えてきたこと

 急な企画ですが、明後日 9月17日(土)京都・堺町画廊にて、簡単な報告会をおこないます。おもな話題は:


 ・福島原発事故による地域別の汚染状況
 ・除染の必要性と可能性(場所によっては不可能性)
 ・「除染」と「避難」の関係 ── 避難させないために除染するのではない
 ・「放射能除染・回復プロジェクト」の福島市での活動(5月〜8月)
 ・その他の様々な「除染」活動、やり方/考え方の違い、問題点など
 ・「除染廃棄物」をどうするか


などです。


  →  →  → 詳しくは、ピースメディアのボードを御覧くださいね。


2011年7月20日

【Nuke】除染プロジェクトPressRels



放射能除染・回復プロジェクト 記者会見

2011719日 於:福島市・コラッセふくしま

 本日の記者会見において配布する資料とその趣旨は、以下の通りです。時間の制約があり、すべてを詳しくお話することはできませんが、お問い合わせやご指摘をぜひお寄せください。


■ 添付資料1 放射能除染・回復プロジェクト 声明文

 プロジェクトの発足の経緯、基本的な考え方、活動状況について述べました。本プロジェクトは、福島県民からの呼びかけを受けて、エントロピー学会(http://entropy.ac)有志と複数の大学の教員らにより始められ、住民と一体となって進められています。


■ 添付資料2 測定事例

 本プロジェクトがおこなってきた放射線ホットスポット調査、民家の除染実験の成果の一部を紹介しています。なお、本プロジェクトの福島市での活動を紹介した映像も、合わせてどうぞ御覧下さい。

http://bit.Ly/josen526

http://bit.Ly/josen527

http://bit.Ly/josen613


■ 添付資料3 放射能除染マニュアル(第1版)

 本プロジェクトが、福島市内での実験・実践をふまえ、住民のために作成したマニュアルの初版です。その大きな特色は、次の4点です。

放射能を拡散させないための配慮(具体的には、できる限り水を用いず、固めて剥ぎ取る方式を追求)していること

東京電力の引き取り責任と補償責任を重視していること

特殊な(あるいは高価な)機材や薬剤を用いず、市民が普通に入手できて使うことのできる道具・資材による除染方法を提案していること

「避難させないための除染」という考え方をとらず、除染と避難は「放射線被曝低減」のための総合的な対応の一環として連携して実践されるべきもの、との考え方に立つこと


 すでに、福島県災害対策本部も放射能除染のマニュアル「生活空間における放射線量低減化対策に係る手引き」を発表しましたが、この手引きには、安易に圧力水ポンプを使用して放射能を拡散させ二次的な汚染を誘発する危険、回収した落ち葉の焼却処理の奨励など、見過ごすことのできない問題があり、東京電力の責任と義務についても不問に付されてしまっています。

圧力洗浄の問題点については、上記マニュアルの付録としてまとめてありますので御覧ください。


【8月8日追記: 除染マニュアルの第2版はエントロピー学会のウェブサイトに掲載されています。校正確認ののち、当サイトにもアップします。】


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以下、「声明文」(上記 添付資料1)のテキストを貼り付けておきます。

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東京電力福島第一原発事故により、福島県を中心とした広い範囲に大量の放射能が降り注いだ。3月末の段階で福島市と川俣町の学校・保育所などでの放射線測定が保護者の手によっていち早く実行された。その結果をふまえた保護者・市民からの要請により、4月の時点で、福島県による学校運動場の調査データが発表されて、子供たちの放射能被曝の厳しい実態がわかってきた。子供たちの被曝は運動場だけでなく、通学路や児童公園や家庭生活圏でも生じている。福島の子供たちは、一刻も早く避難すべき状況にある。

一部の子供たちは家族とともに自主的に避難している。しかし、まだ多くの子供たちが福島で不安を感じながら暮らしており、一刻も早く放射能除染を行なうべきである。「避難」と「除染」という2つの方法は、互いに矛盾するものではない。子供たちの健康と生命を放射能の脅威から守るという最も重要で基本的な立場に立つならば、「避難」と「除染」は相互補完的なものである。ところが、国や福島県は、避難させないことを目的に“除染”を呼びかけているかのようにみえる。もしそうだとしたら、国や県の姿勢は、守るべき根本価値を見誤った本末転倒な態度である。

 

福島における子供たちのこのような現状を憂慮した私たちは、「子供たちの放射線被曝量を可能な限り減らす」ことを目的として「放射能除染・回復プロジェクト」を立ち上げ、活動を開始した。すでに、2011517日から19日には除染すべき民家の事前調査と通学路のホットスポット測定を行なった。610日から14日には、3軒の民家と通学路の一部の除染を実施した。そして、716日から19日には、企業や自治体の管理地におけるホットスポットの調査と、民家、果樹園のモデル除染を実施した。

 政府や自治体を頼りにして除染してくれることを待っていても被曝状態が続くだけである。子供たちの被曝を避けるためには、市民自らが除染を実施していく必要に迫られている。そこで私たちは市民が実施できる「放射能除染マニュアル(第1版)」を作成した。そこでは、福島県が実施しようとしている除染方法ついて、とくに「圧力洗浄機」を使用することの問題点を強く指摘した。

県の除染方法には、そのほかにも、落ち葉などの焼却処理を認めていること、汚染土などの保管方法があいまいであることなど重大な問題点がある。私たちは、福島の放射能除染作業における重要な原則の一つとして、除去された放射能汚染物質は東京電力に引き取らせ、最終的には福島第一原発へ戻すことがあると考える。さらに、子供たちの通学路や児童の生活圏における被曝量を減らすためには、家や学校だけでなく、商業施設の駐車場や自治体の管理地を含む公共の場所に数多く存在するホットスポットを除染しなければならないが、県が実施しようとしている除染計画には、それらが決定的に抜け落ちている。

 私たちは今後も、放射能除染マニュアルの改善、実証的モデル除染の実施などを提案し、一刻も早く福島が放射能汚染から回復する活動を継続していく決意である。

 

■ 《放射能除染・回復プロジェクト》 福島の住民の呼び掛けに応じてエントロピー学会有志と複数の大学教員らにより始められ、住民と一体となって進めているプロジェクトです。

 連絡先:中里見博(福島大学行政政策学類)h-naka@io.ocn.ne.jp 


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 プロジェクトには、これまでのところ、福島大学、京都精華大学、同志社大学、大阪大学、名古屋大学の教員が参加・協力しています。


2011年6月28日

【Abs/Nuke】Koongarraのウラン開発、事実上不可能に

【ジャビルカ通信】号外 2011年6月28日配信



こんにちは、細川です。(重複してご覧になる方、ごめんなさい。)


すでにツイッターで速報しましたが、パリで開催中のユネスコ世界遺産委員会において、

北オーストラリアのクンガラ Koongarra 地区を世界遺産「カカドゥ国立公園」に編入することが決定されました。


これで、同地区でウラン採掘権をもつ仏・アレバ社(旧・フランス国立原子力開発機構)によるウラン採掘は不可能となりました。

30年以上にわたりウラン開発に抵抗を続けてきたグンジェイッミ・アボリジニーの希望が、やっと1つ叶いました。


次は、操業中のレンジャー・ウラン鉱山の閉鎖、そしてカカドゥ国立公園への編入、そして、

「凍結」中のジャビルカ鉱区の開発断念、そしてカカドゥ国立公園への編入

── これらの実現をめざしていきましょう。


クンガラ鉱区では、日本の旧動燃(現・核燃サイクル機構)もナチュラルアナログ試験を繰り返すなど、開発に関与してきました。


グンジェイッミ先住民族法人(GAC)のプレス発表(英語)およびクンガラ地区の土地権代表者であるジェフリー・リーさん(Djok Gundjeihmi氏族)の声明(グンジェイッミ語と英語翻訳)は

こちら↓です。

http://www.mirarr.net/media/GAC_media_UNESCO_27_June2011.pdf



【注釈】

(1)クンガラの先住民族土地権をもつジョック(Djok Gundjeihmi)氏族とレンジャーおよびジャビルカの先住民族土地権をもつミラル(Mirarr Gundjeihmi)氏族は、ともにグンジェイッミ語を話すアボリジニー集団で、相互に親族関係にあり、多くの神話・儀礼を共有しています。(グンジェイッミ語の表記で dj は英語の j に近い音、h は声門閉鎖子音です。)


(2)ジャビルカ(Djabulukku、英語表記ではJabiluka)、レンジャー、クンガラの3つのウラン鉱床地区は、カカドゥ国立公園の中に位置しますが、ウラン開発のために国立公園(および世界遺産)指定から除外されるという不自然な状態が続いてきました。このことは、世界遺産委員会でもこれまでたびたび問題視され議論されてきましたが、今回、クンガラのカカドゥ編入という至極まっとうな結論が出たことは、ジャビルカ開発問題の今後にも強い影響をおよぼすと考えられます。



細川弘明 拝 twitter.com/ngalyak

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★アジア太平洋資料センター(PARC)の雑誌です。

 『オルタ』2011年7・8月号

 特集 本気で脱原発

 執筆陣: 田中優/大島堅一/糸長浩司/山内知也/

      佐久間智子/村田あづさ(祝島通信)/福田 邦夫/ほか

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