2008年8月28日

【Abs】アボリジニがクック収集品の返還求める

【禁転載】

以下のメールは先住民族の10年市民連絡会の内部MLですので、転載・引用はご遠慮ください。

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Date: Wed, 27 Aug 2008 00:28:46 +0900
From: "Hosokawa K. via Nifty"
Subject: Re: FW: アボリジニがクック収集品の返還求める

小林さん、拝復、細川です。
お知らせありがとうございます。

At 9:19 PM 08.8.26, Kobayashi Junkoさん wrote:
>アボリジニがクック収集品の返還求める(8月22日)CNN
>
>アボリジニがブーメランの返還要請、キャプテン・クック収集品
>2008.08.22 Web posted at: 21:02 JST Updated - CNN/AP
>http://www.cnn.co.jp/business/CNN200808220029.html

●細川が見たニュースはAP電(ヘラトリ)、APP電(ジ・オーストラリア ン)、ブルームバーグです。
http://www.iht.com/articles/ap/2008/08/22/news/Australia-Boomerang.php
http://www.theaustralian.news.com.au/story/0,25197,24223604-2702,00.html
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601088&sid=ahrlnEqsLS7A&refer=muse

投資家が好んで情報源にするブルームバーグによると、予想落札価格は6万ポンド(以上?)とのこと。ざっと1220万円也。
本物かどうかは、これらのニュースからは判断できません。(ちょいとウソ臭い...)


>アボリジニの代表者は、ブーメランを取り戻せれば豪州の2文化の調和のシンボ
>ルともなり、若い世代の豪州国民にアボリジニ文化の偉大さを教えることにもな
>ると強調している。

●「代表者」とありますが、「??」です。(英語原文は leader)
APに登場する Merv Ryan というスポークマンは、ノーマークの人物で、背景 がよくわかりませんが、後述のモリスン議員の声明を読むと、自由党系の人脈 のように思われます。すくなくとも地元アボリジニーのあいだで大きな代表権 をもつ人物ではなさそうです。

APでは「Gweigal people」という集団名を挙げていますが、おそらくこれは Dharawal アボリジニーのなかの Gwiyagal 系のグループのことだろうと思わ れます。Gwiyagal はボタニー湾の南側のグループですので、キャプテンクッ クが最初にアボリジニーとコンタクトした地域の集団であることは確かです。 しかし、今日のシドニーのアボリジニーの政治学からすると、こういう場合、「代表者」として発言権があるのは Dharawal 全体のエルダー(またはそのスポークスマン)だろうと思われますし、メディアも当然そちらに裏取り取材をする筈 ですので、今回それらの情報がニュースに反映されていないので、信頼性としては、ちょっと「?」です。まぁ、もうしばらく様子を見ていれば、いろいろな声が挙ってくるだろうと思いますが。


>AP通信によると、豪州政府は競売参加を検討している。

●ニュースでは、ピーター・ギャレット(環境大臣と文化遺産大臣を兼任)が 落札の可能性について検討するよう文化遺産省に指示したとされています。


>シドニーを選挙区とする議員は英国に対しブーメランを贈り物として豪州に
>寄贈するよう促している。

●この議員は、クック選挙区のスコット・モリスン下院議員(自由党=野 党)。英国に働きかけたわけではなく、「ラッド首相が英国に働きかけるべき だ」「9月のオーストラリア議会でこの件を要請したい」と表明しただけで す。

モリスン議員の声明は彼の公式ウェブサイトに載ってます。
http://www.scottmorrison.com.au/info/pressrelease.aspx?id=67

現時点では、あまり十分な判断ができませんが、野党議員が先住民族をダシに して、政府につっこみを入れる材料にしようとしている(先住民族問題で大き なポイントを稼いだラッド政権に対して、野党としても先住民族の味方をする ことでポイントを稼ごうとしている?!)、といった程度に見ておく方がよい かも知れません。Dharawal の人たちがわざわざ自由党に肩入れするとは思わ れませんので。

以上、政治的背景とメディアリテラシーの観点からコメントしました。

アボリジニーの文化遺産を返還すべきだという、原則論はその通りなのです が、こういった話は政治的に脚色・利用されやすいので、注意深く見ておく必 要があります。これまで、遺産返還運動(※)を長く続けてきて大きな成果も挙げているグループ(タスマニア先住民族センターなど)が今のところこの件につい て沈黙しているので、しばし静観したいと思います。

※正確にいうと「遺骸や遺産の返還運動」で、これまでの主眼は欧州各地の博物館の「コレクション」になっているアボリジニーの遺骨や遺髪などを取り戻して故郷で埋葬儀礼をおこなう、というところにありました。

クリスティーズの競売は9月25日にロンドンで開かれます。
http://www.christies.com/presscenter/pdf/08202008/121442.pdf