2011年10月1日

【Nuke】高木基金緊急助成の中間報告

高木仁三郎市民科学基金(高木基金)は3.11原発震災をうけて、この事故への市民科学の対応に特化した緊急助成をおこないました。その中間報告会の会場でのメモを公開します。
敬称略で失礼します。やりとりの一部、記入できていない箇所があります。ごめんなさい。

なお、この報告会の録画もUstアーカイブとして公開される予定。
(後日、録画とメモを照合し、抜けたところや食い違っているところを修正していきます。)

【追記1(10/2)高木久仁子さんからのご指摘を受け、お名前の間違いなど、記載を一部修正しました <(_ _)> 】
【追記2(10/8)報告4のなかの欠落部分(補償請求の意義)を補いました。】
【追記3(2012/12/23)報告1のなかの欠落部分(今後の課題3)について青木一政さんのご教示をえて補いました。】


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高木基金の中間報告会(原発震災緊急助成)
 2011年10月1日(土曜日)13:00-18:15
於:カタログハウス・セミナーホール(東京 代々木)

(録画を明日以降Ustで公開)

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定刻開始、司会=菅波 完(基金事務局)
(0)河合弘之(基金代表理事)あいさつ

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13:14-13:43 【発表1】
青木一政(福島老朽原発を考える会
「子どもの生活環境の放射能汚染実態調査と被ばく最小限化のための課題明確化」

・国・行政の調査や対策が子どもの生命・健康を最優先にしたものでないこと
・大学・研究機関による調査も子どもに焦点をあてておらず、被害最小化の実践を伴っていない。
・私たちの目的は2点:子どもの生活環境の放射能汚染実態を明らかにする、市民として取り組むべき課題を明確にする(→市民だけでできないことも行政に働きかけて実現をめざす)
・市民の実践活動と一帯の活動として研究を進める。(実践活動からの要求に応えるかたちで調査課題を修正しながら進める。)
・メンバー: 青木、阪上武(以上、ふくろうの会)、中手聖一(子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク)、富山洋子(日消連)、アイリーン・スミス(グリーンアクション)
・ラボの活動: 住民からの相談をうけて測定調査、専門家・専門機関の協力を得る(仏ACRO、神戸大・山内教授など)、子どもの被ばく最小限化をめざす他団体とも協力、国・行政への交渉・要請、メディアへの告知など
・活動事例(1) 福島県内の学校の汚染調査、米NIRSから送付されたγ線測定器10台で計測開始、学校に休校を求める、ブログに多くの保護者からの書き込み(3日間で650件)、
・活動事例(2) 江東区など東京周辺のホットスポット調査、スラッジプラント(下水汚泥焼却場)からの2次汚染があることを発見。三郷市の汚染状況も調査(→ 市への要請活動)
・活動事例(3) 福島の子どもたちの内部被曝調査、尿検査(検査した10人全員からセシウム検出)、フォロー検査で「追加的被ばく」が進行しているという事実が判明、
・被害は続いている。被ばくは続いている。
・測定して、実態を把握することで「やるべきこと」が見えてくる。
・市民の側からの不安・危惧を大切にする。
・みずから測ることで、感度をあげ、知識と技術を身につける。
・信頼できる専門家のちから、信頼できるデータが大切。
・調査結果を積極的に知らせる → 世論を動かしたい。
・今後の課題(1)「除染キャンペーン」に惑わされない(除染の効果の検証・監視)
・今後の課題(2) 内部被曝の実態が隠蔽される恐れ(県の健康管理調査だと検出限界が高すぎる) → 被曝予防につながる調査を進めなければいけない。
・今後の課題(3) 国・行政の測定、対策は子どもへの健康被害防止最優先になっていない。→子どもの被ばく最小化の立場から測定、調査を継続する。
・今後の課題(4) 避難範囲拡大・自主避難者支援の動きがまだ弱すぎる。連携強化していきたい。

・質問(選考委員=藤原寿和)県の「健康管理調査」の監視はどのように?陰膳調査の予定は?
 ── 答え(青木):県の調査は後追い。私たちは予防の観点から考えて行きたい。尿検査は便利(本人が行かなくても正確に計測できる)、継続したい。食品汚染については、まだ対応が十分できていないが、行政を動かすような調査・提言をしていきたい。

・質問(フロア女性)尿検査の検出限界は?
 ── 答え(青木):ACROの検出限界は0.3Bq/L(500cc, 24hr)、放医研の検出限界は13Bq/L、予防に繋げるためには前者のレベルが必要。

・質問(瀬川)助成金で購入するサーベイメーターは何に使う?
 ── 答え(青木):ホットスポット調査を継続する。

・質問(フロア男性)粉塵のデータはないか?(政府もまったくやってない?)評価が必要では?
 ── 答え(青木):山内教授の協力をえて、学校グランドでの吸引測定調査を検討している。

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13:44-14:13 【発表2】
村上喜久子(母乳調査・母子支援ネットワーク)
「母乳の放射能検査、福島原発事故による体内被曝」

・参考資料『土と健康』427号(2011年8・9月合併号)に掲載された報告記事
・チェルノブイリ事故のときに母乳が汚染されたことを想起した。民主党議員を通じて政府の対応を求めたが梨の礫。
・共同購入グループで牛乳の放射能検査をしていた経験から、もう自分たちで測ろう、ということになった。3Bq/Lが検出下限らしい。
・3月時点での試行検査で5人中4人の母乳から検出
・本格的な調査をするため、希望者を募り、検査会社に予約とり、クール宅急便で母乳100ccを送る。380名余り(4月から福島・茨城・千葉、6月以降は東京・神奈川・埼玉・栃木も)の母乳から30検体(29名)
・予想よりもはるかに広範囲で検出。内部被曝に詳しいと思われる研究者に大勢(片っ端から!)相談したが、母乳のことについてはっきりした知見を示す方はいなかった。
・検出された母親についてはアップルペクチン(富山?のメーカーで開発)を服用して様子を見てもらっている。また、低農薬りんご(共同購入)の皮付き甘煮での離乳食なども試みた。再検査でNDになった人が多いが、再度検出されたケースもある。
・検出結果から地域的傾向は読み取れない。
・紙おむつから尿を1kg集めて濃縮して検査(0.5Bq/L前後の検出限界)9月採取でも0.5前後の検出例がある。より詳しい調査、継続調査が必要。ぜひ支援の寄付をお願いしたい。
母乳も500cc集めると0.5Bq/Lくらいの検出限界を達成できる(しかし検査費用も高くなる)。

・コメント(選考委員=大沼淳一)検査結果が勝負。尿で2Bq/Lでれば体内に数千Bqあると考えてよい。サンプルに濃縮にかければ感度はあがる。5ℓあつめて500ccに濃縮すれば検出感度は10倍になる。やはり検出限界を下げないとデータで勝負できない。

・質問(選考委員=遠藤邦夫)メチル水銀も体内で不均等にたまるが、放射能の場合は?
── 答え(大沼)放射能だから特別な挙動をするわけではない。セシウムはあくまでセシウム(カリウム・ナトリウムと同属)としての化学挙動。

・コメント(瀬川さん)セシウムは実は甲状腺に多くたまる。
・質問(草薙?さん)アップルペクチンの使用について
 ── 答え(村上)チェルノブイリでの経験に学んだ。りんごの皮と実のあいだにあるペクチンが有意に排出効果があった(富山薬科大の田沢教授の紹介したデータ)。

・質問(選考委員=藤原)アップルペクチン投与の効果検証は? ── 答え:実験のような意味での検証はできていない。
 ── 補足コメント(瀬川)吸収を妨げる方法なので、ほかの栄養素の吸収もさまたげる。栄養状態などの経過観察を注意してほしい。
 ── 答え(村上):田沢先生の論文では、栄養吸収を妨げないという知見。

・質問(選考委員=藤原)測定機のメーカーと型式をあとで教えてほしい。

・質問(選考委員=山下)政府はなぜ検査しない/公表しないのか?
 ── 答え(村上):私たちの発表の後追いで検査はしている。政府調査のほうが対象広く実施できる(産婦人科 ── ほぼ3割から検出。私たちに検査を申し込んでくる母親は、ふだんから食べ物や健康にきをつけている方たち(ゆえに検出ケースが少ない??)、政府調査のほうが広い実態を反映する面があるかも。

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14:14-14:46 【発表3】
石田美聡(未来につながる・東海ネット 市民放射能測定センター;通称Cラボ)
「東海地方・市民放射能測定センターの開設と食品および環境の監視」

・Cラボの3つの軸: 食品放射能測定体制の確立、政府の暫定基準に対抗して市民の自主基準を設定する、ネットワーク化にむけて各地にチームを派遣
・7/29測定器(アロカのNaIシンチ)入荷、8月にボランティア測定者の養成講座、9月25日センター開所
・検出限界 10分測定で30Bq/kg → 測定時間延長により5Bq/kgくらいまで達成可能(4000円)、10Bq程度なら2000円
・できるだけ「安く、気軽に」開かれた測定室をめざす。ボランティア測定者による運営。市民科学者を育てる営みでもある。(養成講座に約40名・老若男女が参加)
・測定事例: 藤枝市のほうじ茶、60分測定と1000分測定、宮古沖タラ 90分測定、セシウム検出、(どこ?)栗 230分測定、
・試料の量と測定時間で検出限界が変わってくる。800gで10分だと30Bq限界、90分だと10Bq限界、360分だと5Bq限界。
・まだまだノウハウの蓄積が必要。試料の濃縮方法をマニュアル化し、依頼者自身に前処理をしてもらう方向。ソフトウェア改良もメーカーに求めている。
・自主基準値の検討、食品群別に異なる基準を追求したい。ウクライナの事例、Fコープ(九州)の基準(チェルノブイリ事故時)などを参考に「東海基準」を設定した。
・国の暫定基準、6.82mSv、Fコープ基準 0.22mSv をふまえ、東海基準 0.35(Cs134係数加味)を算出した。
・データは原則公開していく。
・当面は依頼検査を中心に、抜き打ち市場検査、給食検査、陰膳調査などを併行していく。他団体との共同調査も。養成講座も各地でおこないたい。

・コメント(フロア男性、北区の田中さん)1.ストロンチウム・プルトニウムのことも念頭においてほしい、2.恒常的な被ばくの危険性(ペトカウ効果、がん以外の病気など)を養成講座でしっかり教えてほしい、3. ICRPの「シーベルト」の概念が怪しいということ(基準の急な改訂など)もふまえて欲しい。

・質問(フロア女性、八王子市民講座)測定室を立ち上げたい、どのようにお金を集めましたか? 無料測定という無謀な夢をもつ者だが、測定費2000円/4000円の根拠は?
 ── 答え(石田):福島など深刻な地域の支援も視野にいれている。意味のある調査は無料でしている。測定器購入500万円、100万円は高木基金から、残りは草の根カンパや協力研究者が講演で稼ぐなど!

・質問(林洋子)測定室の運営は、費用かかると思うが、どうしている?
 ── 答え(石田):場所代は生協等の協力で仮設置でスタートした。5Bq限界を追求すると時間かかってしまうので、1日2〜3検体しか処理できない、それだと収入が不足、会員制度なども検討、まだ全体のコスト見通しがついていない。

・質問(フロア男性)東海基準の根拠は? 分析しないことを勧める場合もある、とのことだが、どのような場合?
 ── 答え(石田):測定時間の制約があるという前提で考えた。実効線量1mSvに満たない線を追求、1mSvを信じるのではなく基準設定のためのあくまで目安。事故後、摂取量ゼロは不可能、できるだけ少なく抑えるという観点で。

・質問(遠藤邦夫さん)安全係数は?
 ── コメント(瀬川)化学物質と放射能は違うので、安全係数という考え方とらない。政府基準は出荷させなかったら補償するわけだが、自主基準はそういうものではない。

・質問(フロア男性、たまあじさいの会)原子炉メーカー日立の測定器を使わなければならないということをどう考えるか?
 ── 答え(青木)ベラルーシ製のものは安くて性能も良さそうです。
 ── 答え(フロア男性、草薙)日立アロカは、日立メディコの子会社が最近買収したので日立グループにはいっただけ。
 ── (大沼)老舗のキャンベラもArevaに買収された。

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14:46-15:12 【発表4】
除本理史 [助成受給者=大島堅一氏の共同研究者]
「福島原発事故による被害補償と費用負担」 

参照:『世界』8月号の論文

・除本(よけもと)氏は公害の被害実態調査、被害補償の問題が専門、3月まで東京の大学、4月から大阪の大学、5月以降、大島と共同研究
・「支払われざる被害」をなくすための補償のあり方を明らかにしたい。そのために被害の全体像を明らかにする。
・今回の事故は規模が大きすぎる。従来の補償制度ではカバーできない。財源確保、費用負担、連動するエネルギー政策などに注意して問題点を明らかにしたい。
・被害構造(1) 地域社会がまるごと被害を受けるような状況が面的に広がっている。自治体として存亡の危機におかれる市町村がいくつもあるという事態は前代未聞(足尾鉱毒事件の谷中村廃村というケースがあるのみ)。
・被害構造(2) 「地域を引き裂く」ことが被害の本質、地域とは自然環境・経済・文化(社会・政治)という3要素の複合体。これらがバラバラに解体され、住民はそのどれをとるかという選択を強いられている。従来は、地域のなかで被害に対応していくことが当然だったが、今回はそうはいかない。
・被害構造(3) 家族離散という被害のかたち。母子避難、分散移住など。経済と環境のあいだで家族が引き裂かれている。
・被害構造(4) 先行きの見通しが立たない極めて不透明な状況下で、人生設計における重大選択を強いられる。「確実な選択」をしようと思えば「ふるさとを捨てる」ことを覚悟せざるをえない。21%(読売新聞9月調査)の人々がそう決断、事故後1ヶ月では7%、事故後3ヶ月では15%、半年後に21%になった。地域社会崩壊が進行している。失ったものは金銭で代替できないが金銭賠償というかたちだけが論じられている。
・被害実態と原賠審指針との距離を測る。金で償えないということを前提に考えないといけない。そのうえで距離を縮める必要。
・補償請求の意義: 指針と実態との距離があまりに大きいと深刻な事態になる。被害者がみずからの被害をきちんと請求し、事故被害の全体像を明らかにすることが重要。それが「原発のコストの顕在化」にもつながる。

・質問(フロア男性、北区の田中さん)債権者や株主の責任を問うべきだが、社債の扱いは? 賠償再建を優先するような法律が必要では? 電力会社の賠償債務を有限化する与野党の動きはモラルハザードを生む。
 ── 答え(除本):今日の発表では財源論の部分を省略した。資料3頁めの中断右側のスライドを見てほしい。大口債権者(銀行など)の負担を求めていくことが重要。社債権者については実態がよく把握できていないので、経済への影響が見極めにくい。原賠法の枠組みで債権カットも可能。有限化についての認識は、田中さんとまったく同じ。

・コメント(理事=中下裕子弁護士)自主避難の問題が正念場を迎えている。日弁連が強く言ってはいるのだが、なかなか展望がひらけない。「言論統制」のような状況も発生している。測定に対する制約も生じつつある。このままの状態では、危機的。
 ── 答え(石田):いま避難対象地域の調査を先行させているので、自主避難」の問題をまだ十分分析できていないが、公害問題における「未認定」問題に近い構造だろうと思う。

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休憩 15:13-15:24

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(番外)吉岡斉(高木基金顧問)
首相官邸の事故調査委員会の動向
・菅首相は意欲的な枠組みを用意してくれたが、野田首相はまだ委員会に顔出ししていない。
・内閣官房は徹底した秘密主義、箝口令もしかれており、メールも「機2」扱い。録音はできるが、非公開扱い。
・各地視察を勧めている。福島はもちろんのこと、女川、柏崎刈羽、浜岡も行った、原町火力も行った。東電がどういう会社かということが、そこはかとなく判ってきた。
・事務局を中心に事実関係の調査、8割がた終わった。「検察方式」で下っ端からヒアリングを進めている。いま部長級くらいからヒアリング、大物はこれから。ストーリー作りにはいる段階。
・年内に中間報告を公開、年明けに外部レビュー(これも公開)。
・再発防止が調査目的、原発無くせば簡単なのだが、メンバー顔ぶれからするとそうはならないだろう。しかし、政府・東電の用意するストーリーには乗るまいという気概をもった委員が多い。報告には期待してほしい。
・国会の調査委との関係は、よく見えない。
・事故解析をどこまでやるのか。東電のシナリオ(現実から乖離した想定)を斬っていくことが課題。

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15:35-16:07 【発表5】
吉田明子(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会;略称 eシフト)
「エネルギー基本計画の課題分析、市民版基本計画策定、社会ムーブメントづくり」

・60団体、180名くらいが参加; 吉田氏はFoE-Japan事務局
・3つの活動分野: (1) 事故被害の最小化、責任の明確化、(2) エネ政策転換、(3) 社会ムーブメントの巻き起こし
・震災後に原発問題に取り組み始めた団体・個人が多い。6月に「市民委員会」をスタートさせた。
・再生可能エネルギー促進法の成立にむけてロビー活動を集中的におこなった(7月・8月)。
・「市民版エネルギー基本計画」「エネルギーシナリオ市民評価」の議論を進めている。議員むけ政策勉強会も。
・今、政府レベルで走っている3つのプロセス:
1.国家戦略室「エネルギー・環境会議」成長戦略の再設計、来年6月に決定される。不透明。
2.経産省エネ庁「総合資源エネルギー調査会」エネルギー基本計画のみなおし、飯田哲也さん、伴英幸さんがメンバーに入った。10/3の初回はインターネット中継もされる。インプット
3.内閣府「原子力委員会」原子力政策大綱見直し、こちらも伴さんが委員に入っている。
これらのプロセスへのインプットを強めていく。
・議員へのアプローチ: 院内セミナー、要望書・声明など
・市民版エネルギー基本計画: 8つの視点からカウンター提案。自然エネ飛躍、高水準の省エネ、原発の着実な廃止、化石燃料依存から脱却、分散型エネ社会の構築、電力システム改革、クリーンエネ技術の産業育成、コスト根本的見直し、政策決定プロセスへの市民参加
・メッセージを伝えること(情報共有・広報)はできるが、メッセージを受けた人がみずから動いてアクションをおこすことに結びつけることが課題。ロビーマニアル(地元の国会議員への働きかけ、など)の用意。

・コメント(基金顧問=吉岡)「市民版基本計画」ということが、私は「基本計画」廃止がよいと考えている(吉岡氏は最初のエネルギー基本計画をが策定されたときの委員)。エネルギー基本法の規定そのものがおかしい。原発を治外法権としている。基本法の抜本的改定が必要。国家計画で民間を縛るのは社会主義的計画経済の性格、経産省が決めるというプロセスを認めること自体まちがっている。
 ── 答え:政府の基本計画に沿って作ろうというわけではない。

・質問(理事=中下弁護士)政府の3つのプロセスの関係・調整は? 国家戦略室がベースになるのか?
 ── 答え:不透明です。菅首相はかなりリーダーシップをとって、戦略室ベースで進めていたが、首相交代後、混迷。

・コメント(理事=藤井石根)今は経済の視点でエネルギー確保を論じるが、人口減という長期的な条件のなかで見ないといけない。
 ── 答え(吉田):脱原発は1つの視点では解決できない。運動にネットワーク化が必要なのは、それゆえ。

・コメント(瀬川)エネルギー経済にかわって日本社会は何を優先していくのか、という視点も議論に盛り込んでほしい。

・質問(フロア男性)原発の「即廃止」ではなく、なぜ「着実な廃止」なのか? 電力シナリオで大丈夫というのなら即廃止を言うべきでは?
 ── 答え:グリーンピースの2012年シナリオもあり、即廃止も可能というシナリオはある。異なるシナリオとの比較分析もしていく。

・質問(フロア女性)イタリア、ドイツで原発廃止がすぐに決まったのは何故か? 政治のシステムの違いであれば、それを導入する方向で考えるべきでは?
 ── 答え(吉田): ■■■
・コメント(細川)政府の土俵、つまり日本国家としての戦略・計画ということに寄りすぎている。エネルギー資源を大量に輸入している国だということをもっと深刻に考えてほしい。

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16:07-16:31 【発表6】
佐藤大介(NNAFジャパン)
「福島原発事故の全容をアジアに伝える」

・各国もちまわりでノーニュークス・アジアフォーラム(NNAF)を続けてきた。会議だけでなく、現地住民の運動との連携を重視してきた。
・今年のフォーラムはタイで開く予定だったが、事故を受けて、タイの原発計画が「延期」されたため、タイの運動家からの提案で、急遽、日本で開くことに。
・福島原発後、アジア各国で反原発運動が強まった。
・タイ 立地候補地で、福島事故直後から反原発デモが繰り返されている。
・韓国、サムチョック(候補地)、コリ(古い原発が稼働中)などで活発な反対運動。
・フィリピン: バタアン原発の「復活」を警戒
・インド: ジャイタプールとクダンクラム、あわせて990万kWの新設計画。 計画規模もでかい、住民の反対規模もでかい、弾圧規模もでかい!
・インドネシア、ジュパラ(関電が調査したとこ)
・事故後しばらくはアジア各国で報道続いたが、すぐ下火に。「日本の人はおとなしく、がまんしている」というトーンでの報道。 → 実際はどうなっているのか知りたいという声あり。
・NNAF 2011 7/30-8/6 福島・東京・広島・祝島、45名参加。経産省交渉、東電への抗議活動も。
・「原発を容認してきてしまったことに慚愧の思い。これから計画されている国の皆さんは、ぜひ体をはってたたかってほしい」という中手聖一さんのメッセージがアジアからの参加者にはもっとも印象的だったという。
・「ヒロシマを経験した日本が平和利用の原発を進めている」というのがアジアでの推進の決まり文句。そうではないんだ、とうことを明確なメッセージとして発していかないとだめ。
・NNAF 2011はタイNation紙、Bangkok Post紙などで報道された。台湾でも報道があった。韓国からのフォーラム参加者が8/24に報告集会をひらき、分厚い報告書をいちはやく発行した。次回開催希望に手をあげた国が6つもあり(例年はおしつけないなのに!)、議論のすえ韓国で来年開催することに。
・インド(クダンクラム)では、フォーラム参加者の学者ウダヤクマール氏が民衆とともに反対運動の先頭に立っている。9月中旬から無期限ハンストもいったん始まったが、建設計画を見直す動きが出て、いったんハンストも中断している。

・質問(選考委員=藤原)最大の推進国である中国からの参加は?
 ── 答え:東京でのフォーラムには中国の環境運動家の参加もあった。中国では反原発は「反国家運動」とみなされるので、注意しながら進めている。ウェブで原子力技術に対する科学的な批判などが少しずつ出始めている。そういった動きが弾圧を受けないかどうか様子をみつつ、進めている。

・質問(フロア女性)ベトナムはどうでしょう?
 ── 答え:高木基金から減額されたのでベトナム語への翻訳の企画は断念した(会場苦笑)、しかし、やはりベトナムへの情報伝達は重要、考えていきたい。

・質問(フロア男性)アジア各国では使用済み燃料の処分についての議論はどうなっている?
 ── 答え(佐藤):台湾では乾式貯蔵をすすめている。ベトナムとは使用済み燃料引き取りが輸出条件、それをモンゴルに持っていく構想だったのだろう。韓国では再処理の反対運動が強まっている。

・質問(フロア男性)アジアで「日本では反原発運動はない」という認識になっているので残念。日本は政治的な自由もあり弾圧もないのに、これでは中国やベトナムの人たちにメッセージを送れない!

・コメント(選考委員=大沼)東大の原子力の学生はほとんどアジアからの留学生、そういった状況もふまえて運動続けてほしい。

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16:31-16:58 【発表7】
島田恵(六ヶ所みらい映画プロジェクト)
「避難区域の人々の生活環境の変化と意識調査、六ヶ所村民・青森県民の意識調査」

・六ヶ所の映画のクランクインをした途端に、福島事故がおきた。福島とつなげた作品に練り直すことにした。
・フッテージ(制作中の映像断片)上映、福島、東京(子どもたちの政府交渉)、六ヶ所、大間、弘前。
・六ヶ所村、菊川さんインタビュー「村では推進は一握りの人だったのが、事故後は、それまでどちらかというと反対派にシンパシーを感じていたような人も、国の政策が変更になったら六ヶ所で仕事がなくなるかもしれない、生きていけないかもしれない、という危機感を抱いて、むしろ推進側に寄っている。」

・質問(フロア女性)写真で記録をとってきたあなたが映画という手段を使おうと思ったのは、なぜ?
 ── 答え:六ヶ所に12年住み、そのあと家庭の事情もあって東京に戻ったが、そのかん鎌仲さんの『六ヶ所村ラプソディー』が広まったことなども見て、映像で訴えていくことの強みを感じた。友人知人たちから無謀だと言われつつ、映画制作にとりかかった。

・質問(選考委員=山下博美)外国語版を用意して、アジア各国などに伝えていくつもりは?
 ── 答え:いま具体的計画はないが、できればやりたい。

・質問(瀬川)2012年を記録するということが重要では?
 ── 答え:2012年3月クランクアップというスケジュール。編集しながら、追加撮影をして、12年秋に公開したい。

・質問(フロア男性)調査概要にある「数字データ」とは何か? プロジェクト名の「みらい」に込める思いは?
 ── 答え(島田):自主避難の数、人口動態、お金のデータを中心に盛り込む。原発が稼働する限り未来はない。全廃されたとしても膨大な「負の遺産」が残る。そういった状況が、子孫の目にどう映るかという視点を保ちたい。

・補足(島田)みんなの目が福島に集中しているあいだに、六ヶ所で何が進んでいるか(英国からの高レベル廃棄物輸送など)、核のごみ問題という側面をもっとクローズアップしていきたい。

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16:59-17:31 【発表8】 
白石草(OurPlanet-TV
「福島原子力発電所事故をメディアはどう伝えたか」

・独立系メディアが受けられる助成金というのがほとんどない。高木基金のことは最初から知っていたが、今回、助成をいただいてここでお話できるのは嬉しい。
・OTVはスタッフ4名、うち制作は2名。原発事故以降、関連した独立ニュース番組を毎日2本くらいのペースで公開してきた。
・この事故があって脱原発できなければ日本はもう脱原発できない、というのと同じ程度に、この事故でメディアが変わらなければ日本のメディアは二度と変わるチャンスが無い、と強く思う。
・日本のメディア制度の特殊性(独立行政委員会が無い、クロスメディア規制が無い、パブリックアクセスが無い、記者クラブが有る、広告会社が寡占)が、社会に情報がきちんと出ない原因になっている。
・海外の環境アクティビストは、必ずといっていいほど、ラジオやテレビの番組を持っている。それが当たり前。パブリックアクセスが十分保障されている。日本のメディアにパブリックアクセスの枠が無いのは異常。
・事故を報じるメディアの実態をふまえ、日本の主流メディアが抱える問題を明らかにしたい。
・NPO・NGO、市民によるメディアの可能性をさぐりたい。成熟した市民社会を形成するためのメディア環境のあり方を提示したい。
・原発事故とメディア調査 アンケ189名(by一橋大・大学院、白石氏が教えているクラスの学生と)「TVを見ていること」と「福島事故のことをよく把握している(と思っている)」ことが連動している、しかし具体的知識を問う(e.g.「1号機のメルトダウンがいつ起きたか知っていますか?」)設問をかけると、TVから主に情報を得ている人では3割しか知らない、インターネットで主に情報を得ている人は過半数が知っている。
・人々の意識と情報接触の関係を明らかにしたい。
・提言は、来年3月に放送する番組で打ち出したい。

・コメント(選考委員=藤原)今回の事故のような状況では、正確な情報を伝えない日本のメディアの惨状は犯罪と言ってよい。ぜひこれを変えていきたい。期待している。
 ── 答え(白石):日本ではマスメディアが総務省から分離独立していない。独立行政委員会がなかったらEUには加盟できない。発送電分離と同じ問題。この機会に変えないとあと100年は変わらない!

・コメント(理事=中下弁護士)科学者のコメント(メディアでの発言)についてもぜひ検証してほしい。
 ── 答え(白石):犯罪とみなして分析を進めようとしているメディア研究者は少なくない。調査研究動向をきちんと把握して、レポートしたい。

・質問(瀬川)雑誌メディアは今回かなり奮闘しているが、それをどう評価するか? また、政府による「デマ規制」は実際にどのようにおこなわれているのか?
 ── 答え(白石):『週刊女性』『女性自身』『女性セブン』の取り組みは特筆に値する。メディア規制について、たとえば読売新聞の「三郷にホットスポットがあるというデマのチェーンメール」云々の記事は、背景もふくめきちんと解明したい。

・コメント(フロア男性)日本では科学者がかなり多く官庁に在籍している。その人たちが動きがとれないという現状が問題。

・質問(選考委員=遠藤)番組で言われたことの分析だけでなく、言われなかったことの分析が必要では? ── 答え:メディア研究者が全番組解析などの構想をたてている

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17:31-18:07
全体討論 

中下(理事): 今日の皆さんの報告を聞いて、高木基金として緊急助成という対応をして本当によかったと思う。研究に規制をかける通達、科研費の選考がおこなわれる時期なので、弁護士会として不当な規制をしないよう申し入れるが、かなり危ぶまれる状況。健康調査については福島県医大に一本化しようと強引にやっている。しかし、データがそこに集約してしまったら、将来、被害を訴えても裁判に勝つためのデータが無くなってしまう。これは大問題。「エコチル」(大規模疫学調査)を活用すべき。
菅波(事務局):「調べるな、測るな」という規制の動きは強まっている。
瀬川: 健康調査の資金管理を掌握しているは資源エネ庁の核燃サイクル課である。せめて厚労省か環境省にひきとらせるべき。
細川(理事):「半減期」という用語の使い方が意図的に不適切。半減期×10倍(2の10乗分の1)で考えるのが基本。「除染」については、緊急除染と恒久除染のちがい、農地の除染と市街地の除染のちがいなど、きちんと区別しながら考えないといけない。
藤原(選考委員): 災害廃棄物の埋め立て基準(8000Bq/kg)を10万Bq/kgにまで引き上げる動きあり。管理型処分場なら、それで対処できるという議論。しかし「ちゃんとした管理型処分場って、一体どこにあるの?」という実情を踏まえて考えないといけない。千葉県に残土処分場がたくさんあるが、これまでほとんどフリーパス、何の規制もない、そこに除染廃棄物が持ち込まれるという恐れもある。
瀬川: 廃棄物は「発生者責任」で考えるのが基本。消費者責任もあるだろう。福島は東電の電気を使っていなかった、という事実を重く受け止めるべき。本来は、東京に廃棄物を持ってきて、東京の人が避難する(人口は減らしたほうがよいし、ふるさとと思っている人も多くない)、くらいの議論をちゃんとすべき!
遠藤(選考委員): たぶんこの会場に来ている人は「普通の人」じゃないかも知れない。世の普通の人は政府発表や安全解説をうのみにしていたり、放射能についてのごく基礎的なことも理解していない。
細川: 市民測定は事態を動かすモーメントとして必須。「不正確だ、測らせるな」という圧力はかかるだろうが、それでも測り続けることが大切。
坪井: ふつうの女性です(会場笑)。市民による放射線測定の交流会などしてます。食品基準の目安も、海外と日本で全然ちがう数字が言われていて混乱している。
菅波: 全体討論の時間をもうすこし取りたかったが進行が押して30分くらいしかとれず申し訳ない。

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18:08 閉会挨拶 高木久仁子(基金事務局長)
・「高木仁三郎さんが生きていたら今どうしているでしょう」と多くの方から問われるたびに絶句する。核と人間のつきあいは100年もたってない。仁三郎は核分裂発見の年に生まれたことを意識していた。人間がコントロールできない技術、つきあってはいけないものだという確信をもち、自分の生きているあいだに止める・無くすことを目指して生涯をかけたが、それが果たせずに逝かねばならなかった。生きている私たちは、おろおろしながらも出来ることを精一杯しながら希望につなげていきたい。