2012年8月4日

【Nuke/Mundo】ギンリンさん台湾の若者たちの運動を語る


陳炯霖(ダン・ギンリン)さん報告会

「台湾 原発のいま
台北の若者と過ごした二年間」

集会ちらしで予告されたタイトルは「台湾の原発は今」でした。)


会場: 大阪・天満橋の「エルおおさか」南館 75号室
日時: 2012年8月4日 14:40-16:30
主催: ノーニュークス・アジア・フォーラム
参加者40名弱でした。


以下、当日会場からの中継ツイートに加筆修正してまとめました。
オリジナル・ツイート(43連投)は → こちら

※印をつけた箇所は、細川の感想。【質問】は聴衆からの質問。その他は、特に発言者が明記されない限り、陳炯霖さんの発言および映像の内容を細川が抜粋・要約したものです。


まず、映像での紹介。台湾の「反核四」2010年8月ヒューマンチェーンの様子、若い人の参加が多い。(※とてもカラフル。)ヒューマンチェーンの最後は大雨にたたられたが、虹が出て、参加者は皆、「おぉ、これはイケるかな!」と思った(そうです)。

「諾努客」(NoNuker)の運動、「直走珈琲」諾努客たちのコーヒーショップ。2008年の学生運動の盛り上がり(野草莓學運)。台湾では「今の若者はイチゴのように弱い」と言われるので、開き直って「野イチゴ」運動と名乗った。

台湾の学生運動は、とても真面目という印象。2009年rulesを作り、「直走珈琲」店を運営。店員はアクティビスト!という規定。2010年、核四廠(第4原発)の稼働問題に取り組み、現地(貢寮 コンリャオ)でミニコンサートなど開いて地元住民と交流。

若者が急に大勢来たことで貢寮の人たちは喜んだ。現地の反原発運動(自救会)は老齢化して「疲れて」いた。2011年2月、貢寮反核自救会の再結成大会を老若合流で開いた。予定ではすでに核四は稼働していた筈だが、事故・故障が続いてまだ稼働してなかった。

かつての自救会は強力な住民組織だったが、疲弊していた(30年「反対」を続けるのは大変)それを立て直そうということで再結成大会。その直後、フクシマ3.11の衝撃。

2011年4月15日「経済部」(日本の経産省にあたる)に黄色い大きなバナーをかけた。「原発ないと電気が足りない?ウソ!」というバナー。4月30日にはサウンドデモ「向日葵廢核行動」総統府の前などで展開。

当時のニュース映像を流す。福島から大賀絢子さん、うのさえこさんも参加【 集会チラシ(このページ冒頭でリンク)の裏面の写真参照 】して、大規模な集会、ダイインなど。台湾の有名な芸能人も参加した。(※とてもカラフル!)

このとき(2011年4月30日)、初めてデモに参加するような人、若い母親とかも大勢参加した。諾努客(NoNuker)は、ちょっと変わった新しいことをしたいという機運強かった。映像での紹介続く。(※グルーヴ感なかなかである。)

こういう感じのデモ(サウンドデモ)は台湾でも初めてで、従来の環境団体からはかなり文句言われた。沿道でちょうど試験をしていた学校もあって「うるさい!」と言われた。でも、従来のデモの表現方法(エイエイオー!)は面白くないと思った。はでにやりましたww

このあと、東京・高円寺の「素人の乱」の人たちもサウンドデモやったと聞いて、台湾に呼ぼう、ということで5月末に松本哉さんらを招待。でも政府は第4原発への予算追加を決定(2011年6月)。

予算追加は、別に安全対策を追加するということではなく、資材の値上がりに対応したもの。与党(国民党)絶対多数だったので、可決確実だった。ここは真面目に抗議しないと、ということで本格的なデモや座り込みをした。ニュース映像紹介。

台北の北の選挙区、原発に近い地域なのに、そこの与党議員は「いま否決したら、これまで費やした予算が無駄になる」と主張、ひどい人。立法院の敷地内に「突入」、しかしそうした直接行動しないと社会が注目してくれない。(※ニュース映像では炯霖さんもゴボウ抜きされてましたな。)

立法院「突入」は、やはり過激行動と見なされるので、一般民衆の共感は得にくい(そういったパターンの運動に台湾民衆はもう飽き飽きしている)、環境団体からの批判もうけた。でも大きく報道されたインパクトもあった。

核四廠・安全検査委員会のメンバーで原発エンジニアの林宗堯(リンツォンギャオ)氏が2011年7月に「核四論」という長大論文を発表。工事の質がむちゃくちゃであること、原子力委員会の検査機能がはたらいていないこと、などを指弾。この人は推進派だが、今のままではとてもまともな原発は建たないという危機感をあらわにした。衝撃の論文。

推進派の中からこのような声が出たことで、台湾の人々が工事の実態や検査のいい加減さに注意を向けるようになった。電気系ケーブルの引き直し工事が命令されるなど、いろいろな反響。2016年商業運転予定、馬総統はそのとき総統でないので、問題を先送りして凌ごうとしてる。

工事の質が社会問題化したことをうけて、2011年11月5日、ふたたび大規模サウンドデモ(開唱電音派對街頭遊行)、台湾電力本社ビル前に集結。映像で紹介。鉄腕アトムも登場!台湾電力突入(※おいおいw )。法律では10pmまで騒音出してもよい(?)ので、ばんばんやりました。

第4原発建設は予定通り進まない公算大きくなってきた。運動の盛り上がりも大きい。しかし、まだどうなるか分からない。台湾は社会問題めじろおし。馬英九総統の再選も悪い材料。住民決起事件(師大夜市の「撤去」)、メディア買収事件などなど続発。

メディア買収は、中国本土の資本による台湾メディア支配なので、将来への影響大きい。毎日いろんな社会問題続発するので「原発どころじゃない」という雰囲気も。「直走珈琲」も師大夜市エリアにあったので、住民決起の圧力をうけ、閉店。告別祭を3日間やった。総力で騒音!

今年3月、核二廠(第2原発)で基礎ボルトがたくさん折れる事故発覚【 集会チラシ(このページ冒頭でリンク)裏面の写真参照 】、再稼働をめぐり、馬総統は「台湾のどの人間も原発に反対していない」と発言、芸能人たちの「私は人間だ」というアピール(我是人、我反核)が続く。道路でゲリラ的にダイインする行動をあちこちで。

ゲリラ的にいろいろな場所でやった「ダイ・イン」の映像紹介(※とても面白い!)── 台湾中央駅のホール、黄色いレインコート着た人たちが大勢横たわって「人」の形をつくり「我是人、我反核」と叫び、警官が来る前にさっと解散。Facebookで大反響、各地で模倣行動、「我之宅、我反核也」(ぼくはオタクで反核)というのも。

2012年、貢寮海洋音楽祭 ── 出演者は「我的音楽不挿核電」(あたしの音楽は原発の電気を使わない)などのアピールを打ち出した。NoNukes花火がんがん!

台湾の原発は電力の17%、電力余裕は十分(予備電力19%ぶん有り)なので脱原発可能。脱原発政策をうちだす政党もある。

元原発労働者(喉のガンに苦しむ李桂林さん、台湾電力と訴訟中)の紹介【 集会チラシ(このページ冒頭でリンク)裏面の写真参照 】、台湾電力は全否定。李さんの裁判を傍聴したが、証言にたつ社員から侮辱を受けるなど、とても厳しい状況。


※ここから、質疑応答にはいります。

【質問】「台湾は地震はどうですか?」
 ── 炯霖さん回答: ワシントンポストの「世界で最も危険な原発」という記事で台湾の原発が複数リストアップされてます。

【質問】「福島のことはたくさん報道されてますか?」
 ── 炯霖さん回答: 盛んに報道されてるけど、他の社会問題続発で、最近はややかすみがち

【質問】「第4原発の工事の質はなぜ悪い?」
 ── 炯霖さん回答: 「分離発注」が問題。GEの設計だが、あちこちばらばらに発注されて、それぞれ勝手に設計変更したりしてる(もちろんルール違反)、第4原発で特にひどい状況。

【質問】「野党=民進党の政策は?」
 ── 炯霖さん回答: 2000年に政権とったときは脱原発で核四も止めると言ってたが、できなかった。核一から核三は40年廃炉、核四は工事は進めるが稼働しないと言ってる、意味不明。民進党の脱原発政策はがたがたぼろぼろ。

来場されていた服部良一さん(衆議院議員)から、原発輸出の状況について説明あり: 機械プラントの仕事をしてたので、台湾のごみ処理場の建設などにも関わった。第四原発の工事の杜撰さは台湾の水準のなかでもかなりひどい。原発輸出は何としても止めたい。台湾の国会のなかでどういう動きが可能か、情勢さぐっているところ。

佐藤大介さん(No Nukes Asia Forum 事務局長)より補足: 東芝日立は「台湾の実績」を輸出につなげたいところだが、トラブル続きで困っているのが正直なところ。

【質問】日台の国交が無いのに原発輸出ができるのか?
 ── 佐藤大介さん回答:主契約者はGEなので、米台間の契約で、東芝日立はその下請け。日本政府は交換公文でクリアさせてしまっている

以下、ふたたび炯霖さん
今日、西梅田公園で6pmからサウンドデモがあるので、駆けつけたいです。皆さんも行きましょう!

台湾の法律では「3人以上」の集会は届けないといけない。でも、民衆運動の実績で、なんとかやれる。警察の事情聴取は受ける。人文字アクションは無許可でさっとやってさっと散る。でも有名人は事情聴取を受けて報道されたりもしている。

服部議員質問:「発電所敷地内の活断層の調査は?」
 ── 炯霖さん回答:「しょぼい報告書が出て、大丈夫です、ということにされてしまっている。原子力委員会は独立していない。経済部の組織。」(あれ?内閣の組織じゃないのかな??)

食品汚染の基準を370から600Bq/kgにあげようとしている。日本からの輸入を目論んでいるのか?

【質問】「使用済み燃料や核廃棄物が原住民の土地に押しつけられている問題は?」
 ── 炯霖さん回答: 蘭嶼の処分場は中間処分地、最終処分先はまだ決まっていない。候補地2箇所はいずれも原住民の土地。動かすべきかどうか、環境運動としても扱いが難しく苦慮している。燃料棒は敷地内50年乾式貯蔵。使用済み燃料棒の最終処分地の候補地で大きな地震があって、論議を呼んでいる。北朝鮮に運ぶ話は10年以上前に頓挫。モンゴルも狙われているか?
 蘭嶼の処分場内の扱いの杜撰さなどスクープ報道もあった。今年2月。今年3.11の大きなデモにも蘭嶼の人々参加していた。反対運動は大きく盛り上がっているが、ではどこへ運ぶかという問いに答えは出ていない。

【質問】「デモの映像をみると警察の“護衛”がないが?」
 ── 炯霖さん回答: 台湾はそこはゆるいですね。こいつらは騒ぎたいだけ騒いだら帰るから騒がせておく、というふうな対応。(※へぇ〜?!)

【質問】「夜市撤去で住民が“決起”するというのは、どういうこと?」
 ── 炯霖さん回答: 再開発がらみ。夜市が再開発の邪魔になる、と考える住民がいる。強硬撤去はそういった思惑に支えられている。

(参加者の男性から補足: 戒厳令時代に較べて自由になって、それを謳歌している感じだが、それで社会運動が収斂していくわけでない。)

炯霖さん:住民間や当事者間のコミュニケーションが不足する傾向つよくなっているように思う。それが原発を支えてしまう。

【質問】直走珈琲の「直走」ってどういう意味?
 ── 炯霖さん回答: まっすぐ歩く、右にも左にもぶれない、という意味。


16:32終了(拍手!)。
(※いやぁ、映像あれこれ、とても面白かったなぁ。)