雑誌『オルタ』2010年1+2月号の原稿です。3月初旬刊行かな。
核実験の土地を先住民族に全面返還
細川弘明
そしてこのほど、南オーストラリア州の旧マラリンガ実験場のなかで放射能濃度がもっとも高いとされる「セクション400」という約3千km2の区域が南オーストラリア州政府から正式にアボリジニーに返還され、2009年12月18日、現地で返還式がとりおこなわれた。マラリンガ出身のアボリジニーや近親者あわせて数百名が式典に参加し、州総督から証書を受け取った。人々は涙につつまれたが、この日を見ることなく亡くなった人も多い。
これで旧実験場のすべての土地がアボリジニーに返還されたことになる。土地は先住民法人「マラリンガ・チャラジャ」の共同所有となり、希望する人は移住地からここに戻って暮らすこともでき、そのための支援も受けられる。しかし現在も放射能レベルが高いため、封鎖されたままの地区もある。
英国はマラリンガでの一連の実験に先立ち、同州内陸部イミューフィールドで2回の大気圏核実験(長崎型原爆)をおこなっているが、その放射能汚染による健康被害の補償を求め5名のアボリジニーが今年になって英国で提訴した。その弁護団長をひきうけたのが、なんとシェリー・ブレア弁護士(トニー・ブレア前首相の妻)だということで話題になっている。訴訟を支援する南オーストラリア州の「アボリジニー法律権利運動」(ALRM)のニール・ギレスピーはABC放送のインタビューに答えて、さらに100名近いアボリジニーが原告に加わる準備をしていること、ブレア弁護士が2月から4月にかけて訪豪し、詳しい調査をおこなうことを明らかにした。
先住民族によるこの動きと並行して、エイボン・ハドソンら元兵士のヒバクシャも英国政府を訴える準備をしており、ブレア弁護士は彼らの代理人もつとめる意向であるという。
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