2012年10月28日

【Nuke】「核なき世界」の新局面



国連軍縮週間シンポジウム
「核なき世界」への新局面
   ── 原発、プルトニウム、核兵器

2012年10月28日(日曜)14:00-17:00
於:明治学院大 白金キャンパス2号館Rm2101

主催: 核兵器廃絶日本NGO連絡会 + 明治学院大学国際平和研究所(PRIME)


※以下のノートは、細川による未編集のメモです。敬称略。
(これからもう少し整えますが、とりあえず速報のために公開 ── 誤記などお気づきのことあれば、km285@me.com までお知らせください。)

 当日の配布資料と発表スライドの一部は☞ こちら


【更新記録】
 2012.11.3 国連総会第一委員会の声明へのリンクを張りました。
 2012.11.4 赤十字の2011年11月の決議についての部分、組織名と略称の記載を訂正し、決議テキストにリンクを張りました。野村民夫さま、赤十字国際委員会(ICRC)駐日事務所さま、ご指摘とご教示、どうも有難うございました。なお、朝長先生の発表スライドの1頁め、3.の「IDRC」は IFRC の誤記と思われます。



開始時点で(スタッフ含め)50余名、終わる頃は約60名の参加

(0)森瀧春子(核廃絶をめざすヒロシマの会・共同代表)開会挨拶

・来年、オスロでノルウェー政府呼びかけにより「核兵器の人道的影響」についての国際会議
・日本政府の核政策の実態 ── 「2030年代の原発ゼロ」と「核燃料サイクルの維持」「原発輸出」という矛盾した方策
・「平和利用」と軍事利用を一体化させようという流れ
・日本が「核燃サイクル」を維持することの意味を鋭く問い質していかないといけない。
・福島の甚大な被害に対して、援護法の制定をはじめ、支えていかないといけない。被害の原点に立って運動を進めていくことが必須。
・核を否定しないかぎり、人類が核に否定されてしまう。核の非合法化をめざしていく。


第一部「「原発ゼロ」とプルトニウム問題」
 司会=高原孝生(明学・国際平和研)

(1)Prof. Frank von Hippel (Princeton University)

- Been involved 35yrs in this issue, esp. the debate over reprocessing and breeder-reactors.
- Most important thing is to move away from plutonium.

- IAEA projection 1975 - growth of NP up to 2000+ GWe by year 2000 - then not enough uranium, therefore belief in the need for breeders.
- now IAEA projection (2012) is as low as 500-1100 GWe of nuke power generation worldwide. Reprocessing/breeding no longer necessary with this updated projection.

- USA 10 yrs of nuclear policy reform:
    1974 NRC set up - distrust on AEC.
    1977 reprocessing (1500t/pa) cancelled; then, Pres. Carter tried to persuade Japan not to start up Tokai reprocessing pilot plant (100t/pa) in vain.
    1981 Pres. Reagan lifted the reprocessing ban; but utilities afraid of economic burden, asked Gvt to prep a spent fuel repository - Nevada chosen - local opposition - 2010 Pres. Obama abandoned the project - set up Blue Ribbon Commission to discuss the siting issue anew.
    1983, Crinch River breeder-reactor (US equivalent of Monju) cancelled by the Parliament, due to 10x cost increase.

- 9000kg separated Pu possessed by JPN domestically, equiv to 1000 bombs, if terrorist get 8kg of it, all the cities in the world put in jeopardy.
- JPN is the only non-NKweapon country that separates Pu. Korea requires the same right, other countries show interest as well. The JPN case is a destabilizing factor of NPT regime.

What reprocessing does and why it's dangerous?
- Spent fuel contains 1% Pu. (500kg 4m) at 1 meter 30mins yields a lethal dose. - very difficult for terrorist to steal them (20t canister necessary). Once separated, much easier to handle (and steal!) - three cans of Pu = one Nagasaki bomb.
A non-nuclear explosion of a nuke warhead -> 10kg of Pu - 100x1000s of cancer deaths.

Separated Pu is a major obstacle to nuke disarmament (see slide, p.2 左上)

Warning by Aomori Governor, if Gvt abandoned reprocessing then
 - Aomori will no longer keep returned HLW.
 - Mutsu interim depository won't get approval.
 - Spent fuel at Rokkasho will be sent back to respective origins (i.e. reactor sites).

Dry-cask storage is much cheaper, much safer, and much quicker to construct.
Cask cooling function - air cooling and convection (no meltdown)
Absorbs neutron, i.e. no chain reaction

If water lost at 1F pools, then Tokyo wd need to be evacuated.

Dry casks - no safety concerns even at 1F, even tsunami washes the site.

All you have to is put spent fuel in the dry casks!
Most NPP countries uses dray casks (Germany, France, US) - over 40yrs now.
Germany gave up reprocessing - built storage for spent fuels (dry casks in tunnels)
In JPN - dry casks in Tokai and 1F.

1F, plan to remove spent fuel from the central pool to make rooms for the damaged fuel of the three reactors.
Temporary dry cask storage bldg - as in Germany - simple structure , now copied by Tepco.

-what JPN to do with 44t+ separated Pu
(18t in France, 17t in UK, 9t in Japan)
if rokkasho starts up in 2012, then 8t added each yr.
Plan was to use most of them MOX - unrealistic.
Thus, crazy to start up Rokkasho.
FBR too expensive and unreliable.
"99.8% reduction" is not true - 80% at most, as transuranic remains in the reprocessing waste.

two realistic choices:
 1) ceramic immobilization - burial together with spent fuel and vitrified HLW
 2) solidification and burial in deep bore holes.

Other countries also in trouble with Pu burial issues.
USA - 50t excess Pu from weapons and breeder RD.

Reprocessing does NOT alleviate the waste problem. No evidence that reprocessing helps the problem.
 1 cost
 2 risk of surface leakage more or less equals risk of underground leak and reach to the surface via groundwater

Abandoning reprocessing means less cost and less danger + less proliferation probabilities.

Different (i.e. contradictory) pieces of message from US to Japan as regards reprocessing.

JPN's importance to the US nuke industry:
 - Toshiba owns Westinghouse
 - Hitachi partner of GE
 - JPN involved in 3 of the 4 major suppliers to the world NPPs.

Expression of concerns from US Govt:
- if JPN quits, then the market will be dominated by Russia/China/others who care less to non-proliferation or to the security.

International nuke management regime now dominated by US/EU/JPN - not by the numbers of reactors they operate, nor by the amount of separated Pu they possess, but by the numbers of experts, who will remain influencial even with much less numbers of reactors in operation.

Debate in USA
 - spent fuel put into dry casks on site; as long as reactors are in opertions, it is reasonable to keep the casks on site; but, once the reactors got shutdown, then where to deposit the casks is a hard question.
 - South Carolina miliary reprocessing plant - central storage also offered.

Putting spent fuel 500m undergroud is, in my perspective, the lowest level of danger/concern, compared with the misuse of nuke weapons (top level concern) and the danger of Fukushima-Chernobyl type (the second highest concern).

15:25 終了


第二部「核兵器禁止への新しい動き」
 司会=柏原 登希子(ふぇみん婦人民主クラブ)

(2)川崎哲(ピースボート、ICAN)
「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の動き」

核の非人道性と非合法化(国連総会・第1委員会)の35ヶ国声明(2012年10月)、日本政府参加せず。
・ICAN = 核兵器禁止条約を求める世界キャンペーン、2007年にIPPNWから発足
来年オスロ「核兵器の非人道性」に関する国際会議
・2010年NPT会議の総括声明で「非人道性」への考慮が言及された。2011国際赤十字「核兵器の非人道性」を決議。軍事問題から人道問題にframeが変わってきた。
・2012年5月 スイス、ノルウェー、デンマーク、オーストリアなどNATOの核の傘に入っている国も含め「核
の非人道性」に関する共同声明、国連に提案(日本は誘われなかった「我々の主張を薄めるであろう国には声をかけなかった。」と川崎は関係者から聞いた。)
・「核の飢饉」核の冬による農業への影響
・日本政府の立場「人道の精神には反するけれど、国際人道法に違反するとまでは言えない」
・2012年8月 ICAN広島会議「破滅的な人道上の危害」 → オスロ会議(2013年3月)から「核兵器禁止条約」にむけた交渉開始、という方針。非核国に重点。
・2012年10月「人道的軍縮」サミット、ICANも参加。新しい観点の軍縮運動の開始
・オスロ会議(政府会議)のポイント 1)核兵器の即時的影響、2)長期的影響 3)人道救援の困難性
3については福島でも大きな問題となった。
・会議自体は科学専門家の小規模会議、「人道上の結果」と「国際人道法」の関係を明らかにする。
 → 日本をどう動かすか=日本で何をするか


(3)朝長 万左男(核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委員会)
「「核の非人道性」オスロ会議に向けて」

・「国際赤十字・赤新月運動」による2011年11月決議のもつ意義(追記:赤十字国際委員会 ICRC、国際赤十字・赤新月社連盟 IFRC、および30ヶ国の赤十字社/赤新月社による共同決議)
・ジュネーブ条約「禁止兵器」 ── 核兵器を加えるよう求める運動、冷戦下では禁止は無理、核被害の救援に目標を絞った(トーンダウン)。冷戦終了後、「核兵器に関する議論が軍事・政治の考慮のみでなされるべきではない」とICRC総裁の2009年声明。「人道法の基本原則および人類全体への将来への考慮」のもとで議論されるべき。法的拘束力のある条約の必要性。
・ICJの勧告的意見1996「核兵器の使用は国際人道法の定める理念とは一般的に両立しない」 → 赤十字としてICJ勧告を支持・再確認、国際法での明文化にむけて努力することを赤十字の任務とした。(歴史的決議)
・広島長崎ヒバクシャ、白血病、早くに第1ピーク、現在は第2ピーク。
・原爆の非人道性 ── 核兵器の本質論
  無差別
  多重性(3回殺す)爆風・熱線・放射能
  生涯持続性
  救援が困難・不可能な状況を生む(医療施設をふくむインフラを破壊しつくす;入域被曝をもたらす)
・オスロ会議直前のNGO会議(3月2日・3日)


(4)金マリア(ピースデポ、from韓国)
「PNND国際会議「核実験禁止から核兵器のない世界へ」

・8/27-30 於:カザフスタン、アスタナ市
・セメイ市---セミパラチンスク実験上の最寄り都市
・ナザルバエフ大統領の基調演説 国内法で核兵器使用を禁止、核実験場も閉鎖
・ATOMプロジェクト(核実験反対オンライン署名)abolish testing our mission 大統領主導で政府として取り組み。永久的禁止、CTBTの早期発効、大統領の個人的ビジョンでもある。
・一方で、カザフスタン政府は原発を推進。会議でそのことを批判した人は、限られていた(ギリシャの議員などは明確に批判)。
・パネルセッション1「包括的核実験禁止条約 ── 核のない世界の礎石」
・カリプベク・クユコフさん(セミパラチンスク被曝者、ATOMプロジェクト名誉大使)
・パネルセッション2「核兵器のない安全保障 ── 非核兵器地帯」非核地帯の設定が安全保障につながる、という視点。たとえば、北東アジア非核兵器地帯が北朝鮮問題解決の枠組みとなる(ニュージーランド代表の発言)
・ダニエル・ベンシモン議員(イスラエル)「地域の平和は世界の平和につながる」と主張。
・核廃絶にむけた議員アピール(最終日に採択) ── 多様な視点が反映されたテキスト、興味深い。


(5)中村桂子(長崎大・核兵器廃絶研究センター RECNA)
「非核兵器地帯をめぐる新しい動き」

・「ズレを質す」(田上市長)日本政府は“核廃絶”を言いながら、廃絶にむけての国際的な動きには非協力的。
・長崎平和宣言2012 - 国連での共同声明と呼応する内容(非人道性)が含まれたが、日本政府が声明に賛同しないということで、ただちに市長として外務省に申し入れ
・長崎の声(国連声明への共感)が外務省にとって何の脅威にもなっていない現状
・世界に広がる非核兵器地帯、既存のどの条約も成立前には「絶対無理」と言われていた → トラテロルコ条約、ラロトンガ条約、バンコク条約、ベリンダバ条約、南極条約、中央アジア非核兵器地帯条約、モンゴル非核兵器地位 ── これら既存の条約を強化しようとする動きも(eg.バンコク条約の議定書批准問題など)
・「非核兵器地帯」の3要件 1)核兵器の不存在、2)消極的安全の保証(核使用・威嚇を禁止) 3)条約機構の設置
・スリー・プラス・スリー(3+3)構想=日韓朝が「北東アジア非核兵器地帯」(非核三原則)を締結し、米中露が日韓朝を核攻撃しないことを保証する議定書に署名する、という方式。
・モートン・ハルペリン氏(米国、クリントン政権で米朝交渉にかかわった国際政治学者)の提案
「北東アジア平和安全保障条約」
1 朝鮮戦争の戦争状態の終結
2 安全保障に関する恒久的協議会の設置 6ヶ国協議を母体に支援組織をふくめて創設
3 敵対的意図がないことの相互宣言
4 核その他のエネルギー支援
5 制裁の終結/条約違反への対応
6 非核兵器地帯の創設(3+3構想がベース)


(6)林田光弘(明治学院大学・学生、サークルPeace☆Ring)「学生の動き」

・BANG-NEAのキックオフ 欧州のBANGの北東アジアでのカウンターパート
・学内で Caf? de PRIME
・SNSによって活動の「敷居」が下がった
・T.A.Z (temporary autonomous zone)首相官邸前のデモと連動して実施、公園などを臨時の自治オキュパイ空間に。
・「複雑化したシステム依存」 → 思考停止 → 答えがない 一般市民の思考停止をどうするか、生き方を問われている。自分で考え自分で決める、お任せで文句たれる社会ではなく、感じ考え共有する社会をめざす。「創」(キズ)というコンセプト。


以下、会場との討論:


  • 「先制不使用」宣言、クリントン政権ができなかったのは、日本の反対があったから。米国への従属というのと別次元で、日本が足を引っぱっている側面があり、私たちはそれを直視しないとダメ(田窪・川崎)
  • IPPNWの日本支部は(国際本部とちがって)「平和利用」と核兵器の問題を十分議論できていない。(朝永)
  • 放射能の危険は「潜在的兵器」、敵がはっきりしていなくても兵器以上の脅威を与える。(金)
  • 兵器使用と原発事故の両方を経験した国は日本だけ。両者に共通する非人道性の側面を明確に世界に伝えるべき。原発事故後の汚染が社会を分断し、それが人々を苦しめるだけでなく、救援を困難にする、という側面に注意したい。(細川)
  • オスロ会議自体は、専門家会議なので、非人道性のエビデンスの検討が中心になる。市民の動きとして、そこに何を訴えるかは別の戦略が必要。(川崎)


17:40終了

2012年9月23日

高木基金(原発震災2011緊急助成)報告会


2012年9月23日(土)
於: 東京、日比谷コンベンションセンター


高木仁三郎市民科学基金(略称:高木基金)
2011年度原発震災緊急助成の成果発表会


  緊急助成の趣旨・経緯については → こちら
  発表会のプログラムは → こちら
  中間報告会(2011年10月1日)の実況記録は → こちら
  同じく中間報告会の映像記録は → こちら


※ 以下のノートは、細川が個人的に記録したメモを何人かの方にチェックしていただいた上で公開するものです。高木基金の公式記録ではありません。当日の発表内容を網羅したものではなく、ところどころ抜けている部分があります。今後、聞き間違いなどを修正する余地もあります。文責は細川に属します。敬称略おゆるし下さい。

【更新記録】 
  2012.10.14 掲載
  2012.10.15 (1)と(9)に一部追記
  2012.10.16 (2)の誤記1ヶ所と(3)の誤変換1ヶ所をそれぞれ修正
  2012.10.16 (2)の発表者お名前の漢字表記を訂正(滝 → 瀧)<(_ _)>
  2012.10.17 (3)の数字など4ヶ所修正、3ヶ所補筆
  2012.10.18 (2)と(7)の質疑部分に各1ヶ所補筆


10:40 開会、あいにくの雨模様
・司会=菅波 完(高木基金事務局)
・代表理事=河合弘之弁護士、挨拶 ── 推進派・原子力ムラの猛反抗という情勢
・開始時点で30数名(関係者含む; 最終的には関係者のぞき57名の参加)

・出席している高木基金の役員を紹介
  理事=河合弘之、藤井石根、堺 信幸、細川弘明
  選考委員=大沼淳一、貴田晶子、山下博美、鈴木 譲
  顧問=吉岡 斉
  事務局=高木久仁子、菅波 完、村上正子、小山貴弓、水藤周三


(1)青木一政(フクロウの会=福島老朽原発を考える会
「子どものの生活環境の放射能汚染実態調査と被ばく最小限化」

 (助成金額: 100万円+追加160万円指定寄付、計260万円)
  • 海外NGO(ACRO, NIRS)から測定器などの提供 → 福島に届け、小中学校の校庭測定、県内の4分の3が「放射線管理区域」のレベルに汚染されていることが判明
  • 20mSv/yrを適用する文科省の方針に対して、福島の親達が強く反撥、文科省への直接要請行動(11年4月・5月) → 「1mSv/yrをめざす」という大臣の言質
  • 子ども達の被曝量を最小化するための調査と実践活動を開始、課題を明確化、市民みずからが取り組みつつ、行政に何を求めるべきか戦略を練った。
  • 福島、周辺地域、首都圏ホットスポットなどの住民からの相談や依頼に対応
  • ACRO、神戸大山内教授など研究者・測定機関との連携
  • 行政へのはたらきかけ、メディアへの発信
  • 江東区でのホットスポット調査(江東区の市民グループと共同)幼稚園・学校・公園などの測定、スラッジプラント周辺の測定
  • 埼玉県三郷市でも同様調査活動
  • 福島市内のホットスポット(渡利地区)の汚染調査、2011年8月の「除染モデル事業」(福島市)実施後の測定で、相当な汚染が残っていることを明らかにした。
  • 土壌汚染を継続測定、ホットスポット地区で濃縮が進んでいることを解明
  • 土湯温泉(福島市内だがほとんど汚染されていない)への短期保養プログラム実施
  • 子どもたちの尿のセシウム濃度測定、検出マップ ── 1年以上たっても検出は続いている(初期被曝だけではなく、日常生活で継続的に内部被曝している)。高い検出事例については、フォローアップ。食生活、
  • 屋内の埃(ハウスダスト)のセシウム調査 ── 明らかに汚染
  • 国・行政の測定や対策では「子どもを守ること」が優先されていない。
  • 被曝を軽視する立場の巻き返しの動きが強くなっている。市民自らが測定することで、知識レベルと意識を向上させていく必要あり。市民の立場からの監視継続が重要。
  • ちくりん舎の設立、ACROからの6万ユーロの助成によりゲルマニウム半導体検出器を入手、たまあじあさいの会や他団体と共同で運営。

<質疑応答>
    吉岡顧問: 子どもへの施策、大人とは異なる形でどうしたらよいのか。
     ── 青木: コミュニティ単位での避難が第一。自主避難の多くは昨年の夏までに決断して動いた。残った人は「避難」できない事情をかかえた人たち。次善策として保養プログラムなどを組んでいくこと。

    貴田委員: 福島市内の下水汚泥焼却により新たな汚染源になっていると見てよいのか?
     ── 青木: 江東区の例、スラッジプラント周辺と風下が特異的に高い。施設内の線量も高くなっている。煙から粉塵が飛んでいる可能性と、焼却灰のストックパイルから飛散している可能性、いずれにせよ二次汚染が起きていることは明らか。

    貴田委員: 尿中セシウム濃度が下がる子と下がらない子の違いは?
     ── 青木: 運動部の子で土ぼこりを吸うことが多いといったケース。また、避難した子は下がっている。


    11:20
    (2)瀧岡 桂(未来につなげる・東海ネット 市民放射能測定センター、略称:Cラボ)
    「東海地方・市民放射能測定センターの開設と食品および環境の監視」

     (助成金額: 100万円+指定寄付134万円、計234万円)
    • 当初の目標=測定体制の確立、自主基準の提案、汚染地へのチーム派遣
    • 2011年7月に測定器(アロカのNaIシンチ)入荷、9月より依頼測定開始、幼稚園での陰膳調査、給食食材検査、岩手県での土壌測定調査など
    • 腐葉土からのセシウム検出など
    • 行政への申し入れ、新聞での
    • これまでの測定実績1250検体、国・自治体による分析件数11万の約1%に相当、公的機関による測定がいかに少ないか
    • 給食の脱脂粉乳や干し椎茸などのセシウム検出は、使用中止に結びついた。(暫定基準の時期)
    • 腐葉土から2万Bq/kg以上のレベルのセシウムを検出、愛知県がすでに把握していた汚染だったが市場からの回収漏れだった。県の農林水産部に通報、県が再測定したら800Bq/kg → 含水率補正計算で410、「有効数字は1桁」という丸め(農水省の指示)により400Bq基準をクリア(!)と判断され販売再開。
    • 20名のボランティア測定スタッフ
    • 自治体による測定器購入について、市民から多数問合せ、Cラボからの情報提供で機種変更に到ったケースも
    • マリネリ容器の導入、鉛遮蔽体の追加(水道管の廃材利用)により、ソフト改造による測定時間の延長・短縮、波形解析ソフトも。これらにより改良測定精度向上。
    • 全国の市民測定所間の測定結果標準化 ── クロスチェック、性能比較表、標準試料(玄米)の調整・貸し出し、統一フォーマットによるデータベース構築など
    • クロスチェックにより、測定器の特長に応じたばらつきも分かってきたので、標準試料の共有は重要。含水率を補正する計算法などを確立。
    • 岩手県南部の土壌放射能調査、若い母親中心のグループと連携。汚染マップ作成を目的に。調査のための講習会を開催。統一フォーマットによるデータの共有と総合化

    <質疑応答>
      藤井理事: 汚染食品の廃棄処分の方法は?
       ── 瀧岡: 行政や流通業界ではどうしているのか不明

      瀬川嘉之氏: 測定所では、どう処理?
       ── 岡: 食品以外は依頼者に返却。食品は保管し、クロスチェック後は生ごみとして処分。高い検出値のものは保存している。

      瀬川嘉之氏: 椎茸へのフォローは?高いことはもう分かっているので、どう対処?
       ── 大沼委員補足: 椎茸については、流通ルートを追跡してみると、とても複雑。複数の問屋を経由し、途中で混ぜられて、産地のロンダリングがおこなわれているようだ。

      茨城県取手市の男性: 茨城県では測定結果を公表してくれない
       ── 岡: Cラボは原則公開、ホームページに掲載している。

      Q 被曝家計簿のフォーマットは?
       ── 大沼委員: まだできていない。全品検査が実現していないので。

      吉岡顧問: 岩手南部での調査の結論や方向性は?
      ── 岡: 国の調査では15cm深さまでのサンプルをまぜて測定しているので低い数字になり、それで安全宣言。市民が不安 → 自主測定1000Bq超は80検体のうち約20(max4000Bq台)。一関ホットスポットの調査はまだできていない。
       ── 大沼委員補足: 雨樋下などの特異点は外している。子ども達の遊ぶ場所を中心に、空間線量率で高いところを土壌濃度で確認する、という作業。

      細川理事: 全国の市民測定ネットワークの戦略的見通しは?
       ── 岡: いま議論中。

      (事務局)菅波: 岡さんがCラボに関わった経緯は?
       ── 岡: 流通の会社で働いていて、東北の産品を扱っていたので、実態を把握したかった。

      河合理事: 判定基準は?
       ── 岡: Cラボでは食品ごとに自主基準、年間0.3mSv(内部被曝)におさまることを目安に。
       ── 大沼委員: おおむね30Bq/kg・L、測定精度があがって1桁Bqも確実に測れるようになると、かえって有機生産者を苦しめることになるのでは、という議論もしている。

      貴田委員: 標準試料やクロスチェックなどの試みはたいへん良い。市民測定の正確さを確保するうえで重要。134/137比の違いの原因は?
       ── 大沼委員: メーカーごとのソフトの違い。コンプトン比などの処理。

      奈良本英佑氏: 測定実績、Cラボで政府の1%というのは驚くべきこと。政府の調査データがそんなに少ないということか。
       ── 大沼委員: 厚労省がホームページで公表している件数(都道府県での測定の集計)と対比した。


      11:56
      (3)村上喜久子(母乳調査・母子支援ネットワーク)
      「母乳と乳幼児の尿の放射能検査を実施して」

       (助成金額: 100万円+指定寄付57.5万円、合計157.5万円)
         ※実際の調査費用は990万円かかってます!
      • 東北・関東のなかでも空間線量の高かった地域に限定して、調査。
      • 事故直後、行政から発信される母乳についての注意事項に疑問があった。放射線審議会、母乳から乳児への放射能の移行について要調査という勧告を(福島事故以前に)出している。事故後、国は母乳検査に(当初)取り組まず。
      • 当時、行政からまわってくる試料の検査で一般の検査会社は手一杯、市民からの検査要請に応じてくれるところは限られていた。東京の検査会社(東京ニュークリアサービス)で母乳の検査をやってくれることになり、11年3月下旬から測定(福島の母親たち、茨城の常総生協など協力)。10人にひとりくらいの頻度でヨウ素、セシウム検出。100ccサンプルなので3Bqが限界(正確な測定では1L〜5Lの母乳が必要)。
      • 問合せは東京・神奈川・埼玉のお母さんからが圧倒的に多かったが、全部に応じられず、当初は高線量地域のものに専念。寄付金が集まった時点で応じられるようになった。
      • 7月〜8月にかけて、検出率下がる。乳児の尿の測定に切り替える。紙おむつを回収、尿1kgあれば検査可能。2人に1人くらいの乳児の尿から0.数Bqレベルで検出。
      • 検査応募者が少なかった栃木、岩手南部などには、こちらから検査への参加を呼びかけた。1歳2ヶ月の乳児から7Bq/kg尿の検出例も。再検査してもあまり下がらない。
      • 福島県でしか健康調査がおこなわれていない。東京、神奈川、埼玉や岩手、茨城も栃木も健康調査をしていない。
      • 東京、神奈川などの関東圏からの自主避難者の子どもたち(0〜15歳)の甲状腺検査、血液検査。18人中16人で「要観察」と判定されている。早急な健診が必要。

      <質疑応答>
        瀬川嘉之氏:「子ども被災者支援法」ができたので、その枠を活用して、検査・健診も実現させていく必要がある。ただ、健診は、その結果にもとづいて「健康指導をする」ことが重要、それなしにやたら検査しても不安をあおるだけ。

        大沼委員: 紙おむつの尿検査について。Cラボではゼオライトで濃縮する試みをしているが。
         ── 村上: 検査会社では紙おむつから抽出して濃縮する、と言っている。

        鈴木委員: 非汚染区の対照データも欲しい。
         ── 村上: 費用と時間の制約から、できていない。


        12:25(定刻10分遅れ)
        <昼食休憩> 



        13:00
        (4)白石草(OurPlanet-TV
        「検証!テレビは原発事故をどう伝えたか」

         (助成金額: 30万円)
        • 中間報告のときは、日本のメディア制度の特殊性を論じた。また、当初計画では、フリーやソーシャルメディアの取材実態を記録・検証・評価する予定だった。 → 中間発表での反応(テレビ報道への怒り、etc)をふまえ、秋に、企画変更し、テレビ報道の検証を軸にする。
        • 原発事故を報じた初期テレビ映像の収集、1月までに全映像を入手。
        • 2月に朝日ニュースターで放送する予定だった。著作権をめぐり弁護士と協議、3月の放送2日前に局から中止要請あり、中止(その時間帯はフィラー映像 [きれいな景色だけ] が放映された!)。4月にインターネットで配信(4時間番組)。8月にJCJ(日本ジャーナリスト会議)賞受賞、大賞は東京新聞。
        • 検証の4つの視点: 緊急事態をどう伝えたか?、避難指示をどう伝えたか?、1号機爆発をどう伝えたか?、被曝リスクをどう伝えたか?
        • 直後の報道: 各社、はじめは女川に注目。NHKは民報よりも2時間遅れで「原発」を報道。
        • 原発(富岡の監視カメラ)の映像をライブで流しながら、それが福島第1原発であることを一言も言わなかった。NHKに到っては翌日まで福島原発の津波映像を流さず(同じ監視カメラからとった平常時の福島第1原発の映像を流していた!)
        • 1号機爆発(12日15:36)TBSが3分後に速報、福島中央テレビが爆発映像を放映、系列の日テレが流したのは16:51、フジ16:51、NHK16:52、テレ朝17:05、完全に横並び。保安院の指示に応じて報道。
        • OTVの検証番組を、TVの現場の人たちはわりと多く見てくれていて、応援(もっと厳しく検証しろ)の声を寄せてくる。TV局もみずから検証が必要。
        • OTVの検証番組で著作権の争いは起きておらず、同種の検証番組をさらに実施していくことが重要。(OTVの検証番組のDVDを実費で提供しています。)
        • MBS「たね蒔きジャーナル」の打ち切りについては、メディア関係者のあいだで疑問の声が多くあがっている。メディアが事故前に戻ってしまう、という懸念。カウンターが必要。
        • BPOへの苦情申立てをしていくべき(市民によるTV局追及)。TV局に言っても埒あかない。

        <質疑応答>
          吉岡顧問: 政府の事故調は、検察的な立場なので、「メディア報道が不適切だった」ということは言えない。自主的な検証が重要。報道に関しては「箝口令」など具体的にどのような統制がおこなわれたのか、「専門家」の人選の経緯などを、ぜひ検証してほしい。
           ── 白石: 「箝口令」というよりも、記者の問題意識の劣化がはげしい。取材による裏付けではなく、政府が発表したことをもって「裏付け」とみなして一斉に報道する、という現状。「専門家を呼ぶ」仕組みはとってもいい加減。安易に選んでいる結果(今までの人脈に依存、ほいほい出てくれる使いやすい人が優先される)、テレビ全体に蔓延している。箝口令よりも同調圧力による劣化というのが、実はより深刻な状況。

          青木一政氏: 福島第2原発の状況もほんとに危機的だった(SBOまで到った;電源車がはいって危機一髪)。女川も危うかった。あたかも何も無かったかのようにされてしまっている、これについての検証もぜひ。



          (5)島田恵(六カ所みらい映画プロジェクト
          「避難区域の人々の生活環境の変化と意識調査、六カ所村民・青森県民の意識調査」

           (助成金額: 30万円)

          ・編集中の作品『福島 六カ所 未来への伝言』のラッシュを部分上映。

          <質疑応答>
            藤井理事: 完成予定は?
             ── 島田:  2013年2月、完成上映会をめざしています。各地での自主上映を企画する。

            山下委員: 現地に住んでいる方に寄り添って作られている印象うけた。上映支援のお手伝いの方法は?
             ── 島田:  最初はプロジェクト主催の上映会を何回かおこなう。それを受けて各地で自主上映会を企画してほしい。ウェブサイトで通信あり。

            貴田委員:「伝言」の中味は? 核廃棄物のことはどう伝える。
             ── 島田:  六カ所のことを伝えたいというのが(事故前のクランクイン時の)当初の企画。本編ではインタビューなどを交えて状況をもう少し説明する。


            (6)吉田明子(eシフト=脱原発・新しいエネルギー政策を実現させる会
            「エネルギー基本計画の課題分析、市民版基本計画策定と社会ムーブメントづくり」

             (助成金額: 80万円)
            • 被害の最小化と責任の明確化、脱原発政策提言、社会ムーブメントづくりの3つを柱に活動。
            • 月1回、全体会合(都内)20〜30名。約60団体、個人をふくめ250人がMLに参加。6チーム:eシフト市民委員会、メディアアクションチーム、規制庁チーム、東電チーム、ブックレット編集チーム、選挙対策チーム。
            • 成果と課題: ゆるやかなネットワークの形成、情報共有・意見交換はうまくいっている。連携アクションも。多様性の維持と機動性・一貫性の確保には課題。意志決定の方法も課題。
            • 「原発ゼロ」選択肢(エネ基本計画)実現にむけたアクション(2012年夏)。「国民的議論」のそれぞれの場面でのアクション ── ウェブサイトでの情報発信、パブコメ(呼びかけ → 8万9千件のうち9割が原発ゼロ、即時ゼロが8割)、各地での意見聴取会、討論型世論調査、マスコミの世論調査、民間主催の説明会、自主的意見聴取会の開催(eシフト主催で東京・福島、全国22箇所で自主的な会合開催)
            • パブコメに、ほとんどコピペが無かったことは特筆に値する。「自分の言葉で語ろう」という呼びかけが通じた。政府も無視できず。9/14政府決定で「原発ゼロ」の文言が書き込まれたことは大きな成果。
            • 福島での聴取会はとりわけ印象深かった。「この苦しみを繰り返してほしくない」との思いが強く反映された。
            • 規制委員会の人事について、ほぼ全議員を訪問。「問題を知らなかった」という反応も少なくなかった。
            • 「脱原発総選挙」ウェブサイトを立ち上げたところ。

            <質疑応答>
              吉岡顧問: 市民版エネルギー計画の策定はどうなった。
               ── 吉田: 基本計画を8月に発表した(20頁程度のもの)。

              藤井理事: 原発ないと仕事なくなる、という人たちへのメッセージを具体的に。選挙対策チームは具体的に何を?
               ── 吉田: 候補者アンケートが有力手段。「エコ議員通信簿」(マエキタミヤコ氏らが以前からやっていた)の発展版として実現したい。「投票に行こう」という呼びかけも重要。ポスター投稿・公開のウェブの仕組みを作った。

              瀬川嘉之氏: 規制委員会への今後の対応は?
               ── 吉田: ひきつづき監視。

              細川理事: シャドー規制委員会をぜひ立ち上げよう。またパブコメはすごい資産。政府・官僚は脅威を感じて棚晒しにしている。あれをもっと使っていこう。
               ── 吉田: たいへん大きな実績であるし、リソースとしても大きいので■

              大沼委員: 東海地方の若い人は「落とすんじゃー」運動をやってる。当選・落選の星取りもふくめて戦略を。
               ── 吉田: 「落とすんじゃー」運動の人たちもeシフトに加わっているので一緒に考えていきます。

              河合理事:「脱原発基本法」が衆議院で継続審議になっている。選挙も大事だが、原子力基本法の第1条が「原発推進」であることが根源的問題、これを変えなくちゃ。


              14:26
              (7)佐藤大介(ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン
              「福島原発事故の全容をアジアに伝える ── 脱原発に向けたアジア連携構築」

               (助成金額: 30万円)
              • インドのジャイタプール原発計画(Areva、計900数十万kW、世界最大)こちらがインド反原発の焦点であったが、昨年からクダンクラム原発(ほぼ完成、ロシア製)が前面に。
              • 昨年7月・8月にNNAFを東京+福島+広島+祝島で開催、インドからはウダヤクマール氏。
              • 氏の帰国直後8/16から、クダンクラム原発反対のハンストなど大規模な反対闘争(非暴力)が盛り上がる。ピケ張って工事止めた。去年運転開始予定がずっと遅れている。反対運動への弾圧も強まってきている(死者2名)。ウダヤクマール氏にも200件以上の嫌疑で逮捕状。インドのマスコミも大きく取り上げている。
              • まだ燃料棒は装荷されていない。
              • 福島事故後のアジアでのマスコミ報道。「たいしたことはなかった」「もうおさまった」
              • NNAF2011の東電交渉で東電は「輸出には参加しない(出資しない)」と言明していたが、その後、二転三転している。
              • NNAF2012は韓国で開催(原産サミットへの対抗)。コリ原発がSBOをおこす、サムチョク原発の新計画が発表されるなど動き
              • インドネシアのムリア原発計画のほかマドゥラ島など新しい立地計画も出て、抗議運動も展開。
              • 大飯の再稼働に対するアジア各地でのアクションも。
              • 台湾ではNNAF2011について公共放送局で5日間連続特集で扱われた。
              • 輸出先のベトナムにもベトナム語で福島のことを伝えるパンフなど作った。
              • モンゴル(予定地マルダイ)核廃棄物処分場、日本からの原発輸出した国(ベトナムなど)から使用済み燃料をひきとるパッケージの行き先としてモンゴルが想定されている。

              <質疑応答>
                石巻の日下氏: モンゴルの計画は中止になったかと思っていたが?
                 ── 佐藤: 昨年、国連でモンゴル大統領が「外国の廃棄物は受け入れない」と発言したが、モンゴルのウランを輸出した場合は「外国の廃棄物」とは見なさない、という落とし穴。ウラン開発と使用済み燃料受け入れがセットにされてしまう。国家予算に核施設建設の項目が入っている。

                奈良本英佑氏: ヨルダンへの輸出計画は? 建設予定地は、水のない砂漠で、地震帯の真上でもある。下水処理の水を使うという無茶な計画。あれはどうなった?
                 ── 佐藤: ヨルダン国会では反対の声が強い(反対決議もあがった)が、国会の知らぬかたちで計画進行している。予断をゆるさぬ状況。反対運動は強い。


                14:50 <休憩>


                15:00再開
                (8)川崎哲(ピースボート共同代表、「脱原発世界会議」実行委員会)
                「「脱原発世界会議 2012 Yokohama」の開催 ── 福島の経験を世界の市民と共有し、教訓と行動提言を生み出す」

                 (助成金額: 350万円)
                • 2011年9月から準備、2012年1月14・15日にPacifico横浜で1万人規模の国際会議を開催(ネット視聴をふくめて10万人参加)。6NGOが連携、ピースボートが事務局を担った。
                • 福島事故を受けて日本がどのような方向に向かうのか ── 世界的なインパクトを持つ。
                • 会議の概要を紹介するDVD(60分) ── 海外ゲストの福島視察(バス2台、飯舘・南相馬)、「ふくしまの部屋」(福島からの参加者と一般参加者が直接はなしあう場の設定)、「海外ゲストと話そう」(海外ゲストとの車座になっての直接のやりとり)、子ども達の積極的参加(子どもPRESSなど)、が今回の会議の特色。
                • 専門家どうしが話し合ういわゆる「会議」とは違う形を積極的に盛り込んだ。もちろん、専門家も大勢来て、会議部分も充実していた。
                • 会議の成果: 世界宣言と行動ネットワークの結成、311一周年に飯舘村の長谷川さんが欧州議会に招待された。南アでは「脱原発アフリカ集会」(やはり311に開催)。脱原発首長会議の結成。

                <質疑応答>
                  吉岡顧問: 政府事故調の委員をしていたので出ない方がよいとの判断で出なかったが、良い会議だったと聞いている。中国とのネットワークつくりは?
                   ── 川崎: 会議では東アジアのセッションもあった。当面、日本と韓国の連携が中心になって活動進めるが、中国・台湾の動きも巻き込みたい。

                  瀬川嘉之氏: 反省点は?
                   ── 川崎: 大イベントなので運営上の問題(とりわけ準備期間が短かったことに伴う問題点)は多々あった。昔から原発のことに取り組んできた人と311後に取り組み始めた人たちとのあいだで、色々な差もあり、十分連携できたのかどうかは反省点。政府の「安全策」への監視・対抗も必要。12月には東京・福島で大きなアクションをすべく準備中。

                  河合理事: 世界の原子力ムラが連携している。きっちり対抗表現をしていかないと。総力をあげて頑張ってほしい。

                  大沼委員: 大規模な会議でおカネもかかっている。市民の運動として、そこでの倫理性などをどう保つ?
                   ── 川崎: 費用の大半は会場費(Pacificoは高い!)とゲスト旅費。お金をかけるなら、まず福島への支援という声ももちろんあった。パブコメや官邸前デモに見られるように、ある種の規模を実現するというのは社会運動としては大切であるし、正当な取り組みのあり方。(5400万の出費、数百万の赤字)

                  細川理事: 欧州議会の積極姿勢を、日本の国会への働きかけにむけるべき。戦略は?
                  ── 川崎: 横浜会議の段階では、政党との厄介な関係をひきこみたくなかったので国会議員よりも首長の参加を重視した。欧州の自治体首長会議(反核、自然エネルギーなど)との繋がりもでき、また会議後、日本の国会でも「ゼロの会」など超党派組織もできてきたので、次に国際的にしかける際は、これらの連携を重視していきたい。



                  15:30
                  (9)高田久代(グリーンピース・ジャパン
                  「原発フリーの夏プロジェクト ── 原発再稼働問題の焦点となっている関西電力大飯原発周辺自治体への緊急キャンペーン」

                   (助成金額: 300万円)
                  • 福井県庁の裏のアパートに「福井アクションセンター」を開設、駐在員を置いた(高田)。現地の人と連携したアクションをおこなった。
                  • 距離でみると、大飯原発の「地元」は福井ではなく京都・滋賀(福井市は60キロ圏外)。福井の人口も産業も政治の中心も、実は原発から遠い(少なくとも京都市のほうが近い)。
                  • 活動目的: 再稼働阻止、3月定例県議会を焦点に、「地元合意」の阻止、県が強引に「地元合意」をとりつけることを阻止
                  • 活動内容: 議会傍聴(ストップウォッチプロジェクト)、ドイツ専門家を呼んで脱原発・自然エネの講演、紙風船による拡散予測調査、情報公開請求(SPEEDIなど)、住民意識調査、福井の若者の声の発信。県の原子力安全専門委員会の傍聴。
                  • ストップウォッチ・プロジェクト 傍聴席が満員になったのは県議会史上初! すべての委員会・本会議を傍聴。原発について話された時間を計測。議論の中味をみると、状況確認だけで、どうしていくかという話はほとんど全くされていなかった。
                  • 原発やめてどうするんだ、という地元の疑問に答える企画。トーマス・ブリュアー講演(グリーンピースの自然エネ担当、元ドイツ銀行)
                  • 紙風船調査では、24時間で埼玉県にまで飛ぶことを確認。ヘリウムをいれて3時間で抜けてしまうので、そのあとは風の動き。とばした際の風向と最終的にたどりついた方向とがしばしば違うことも分かった。SPEEDIによる拡散予測を非立地県は入手できない。
                  • 再稼働をめぐる意識意識: 福井・京都・大阪・滋賀・福島の住民を対象に実施。福井では経済よりも安全性を気にしていることが判明。
                  • 福井の若者の声をUstreamで発信。ツイッターと連携。
                  • 県の原子力安全専門委の傍聴。公開はされているが中継されていないので、各委員の発言を書き留め、紹介。全国各地から委員あての直筆の手紙を出してもらうアクション。
                  • 成果: 原発フリーの2ヶ月、「地元合意」無しに再稼働が進んだという認識が全国に伝わった。
                  • 地元の活動家からは、「原発も老朽化したけど自分たちも老朽化してるんだよ」という声。福井の若い人のアクションが動きだしたことに大きな意義。
                  • 今後はおカネの流れ、企業のあり方などを追及。福島への支援も進める。

                  <質疑応答>
                    瀬川嘉之氏: 防災をどう考えるか?
                     ── 高田: 現地に行ったら防災が不可能であることがよく分かる。若狭の原発はすべて半島の先っぽ。大飯原発では、住民の避難訓練は311後、おこなわれていない。地域住民がどう逃げるか、まったく決まっていないまま「安全確保」とされてしまっている。

                    大沼委員: 風船の単価と回収率は?
                     ── 高田: ゴムより紙が高い。特注品なので市販はしてない。その場でヘリウムをいれて飛ばす。

                    河合理事: 原発をやめてどうするかについて地元の声は?
                     ── 高田: たくさん聞いた。嶺南に産業がないというもともとの状況、定検での雇用と助成金への依存。原発ゼロと同時に助成金一気にゼロではなく、一定の時間幅で無くしていくようなプランを提案する必要あり。
                     ── 細川理事補足:  滋賀県の防災計画見直しと放出シミュレーションについて。

                    河合理事: 青山貞一さんが開発した放射能拡散シミュレーションプログラム(10万円で販売)を推奨します。
                    大沼委員: 岐阜市民グループが敦賀から飛ばしたゴム風船は多く岐阜県内(一部は名古屋)に落ちたので、それを受けて、岐阜県としても独自プログラムでシミュレーションした。ヨウ素剤も購入した。各県の放射能測定担当者は、毎年、放医研でSPEEDIの研修を受けている。それを利用できないか。やはりSPEEDIのほうが青山プログラムとは比較にならないスケールなので、国民の税金で作ったものだからなるべくそれを使えるようにしたい。


                    (10)後藤政志(APAST
                    「「非政府系」科学者・技術者の結集による福島原発事故の検証と、NPO法人設立による永続的な活動体制の確立」

                     (助成金額: 300万円助成)
                    • 各事故調の報告、それぞれの立場により中味ちがう。
                    • APASTの立ち上げとほぼ同時期、国会事故調が起動。APASTの関係者の多くが国会事故調の委員や調査員として関わった。事故調はそれとして、非政府系の専門家による総合的検証をする仕組みは必須。
                    • 科学技術へのAPASTの視点 ── 地球から、地域から、未来からの3つ。コストパフォーマンスだけで見るのでなく、安心か、持続可能か、長く使用できるか、地産地消、廃棄物の行方、地球環境汚染などをチェックし、命を脅かさない科学技術を考える。
                    • 福島第一の事故原因の究明(地震による構造破損、格納容器の圧力抑制機能の喪失 [ スロッシングのことは設計段階では全く考えていなかった ]、など) → APASTでスロッシングのシミュレーション=ストレステスト(動画)、国会事故調の報告書に反映されてます。

                    <質疑応答>

                    河合理事: 2号機の爆発との関係は?
                     ── 後藤: 圧力上昇は関係あるが、損傷の箇所や度合いが分からないので確実には言えない。水による圧力抑制機能が担保されないと沸騰水型の格納容器はだめ(マーク I にかぎらず、II でも III でも ABWRでも)。

                    藤井理事: ストレステストはシミュレーションなので実証はできない。それをどう考えるか?
                     ── 後藤: 安全解析の前提はフェールセーフ、原発ではそうなっていない。

                    吉岡顧問: 議会も「鉄の三角形」の一環なので、独立性ということは言えない。
                     ── 後藤: 原子力基本法が「推進」を前提にしていることと安全確保とは本質的に矛盾する。技術の原点からすると

                    日下氏: 基準地震動が現実の地震によってどんどん超えられてきた事実は大変な事態だと思うのだが。
                     ── 後藤: 推進側は「絶対安全」は無いのだ、という開き直りから「多層防護」の発想に逃げ込もうとしている。「五重の壁」は平時のバリアにすぎず、事故時には格納容器以外は役に立たない。それなのに、格納容器が壊れたからといって今更「多層防護」を言い出すのは意味ない。格納容器にベント弁をつけるということの矛盾を深刻に考えないといけない。どうしても安全な原発を作れということだと、格納容器の設計を一からやりなおして、はるかに巨大な容器をつくるしかない。もちろん原発のコストはその分余計にかかる。



                    16:38
                    高木久仁子(高木基金事務局長)挨拶

                    16:40 終了、撤収。参加者数57。

                    2012年8月4日

                    【Nuke/Mundo】ギンリンさん台湾の若者たちの運動を語る


                    陳炯霖(ダン・ギンリン)さん報告会

                    「台湾 原発のいま
                    台北の若者と過ごした二年間」

                    集会ちらしで予告されたタイトルは「台湾の原発は今」でした。)


                    会場: 大阪・天満橋の「エルおおさか」南館 75号室
                    日時: 2012年8月4日 14:40-16:30
                    主催: ノーニュークス・アジア・フォーラム
                    参加者40名弱でした。


                    以下、当日会場からの中継ツイートに加筆修正してまとめました。
                    オリジナル・ツイート(43連投)は → こちら

                    ※印をつけた箇所は、細川の感想。【質問】は聴衆からの質問。その他は、特に発言者が明記されない限り、陳炯霖さんの発言および映像の内容を細川が抜粋・要約したものです。


                    まず、映像での紹介。台湾の「反核四」2010年8月ヒューマンチェーンの様子、若い人の参加が多い。(※とてもカラフル。)ヒューマンチェーンの最後は大雨にたたられたが、虹が出て、参加者は皆、「おぉ、これはイケるかな!」と思った(そうです)。

                    「諾努客」(NoNuker)の運動、「直走珈琲」諾努客たちのコーヒーショップ。2008年の学生運動の盛り上がり(野草莓學運)。台湾では「今の若者はイチゴのように弱い」と言われるので、開き直って「野イチゴ」運動と名乗った。

                    台湾の学生運動は、とても真面目という印象。2009年rulesを作り、「直走珈琲」店を運営。店員はアクティビスト!という規定。2010年、核四廠(第4原発)の稼働問題に取り組み、現地(貢寮 コンリャオ)でミニコンサートなど開いて地元住民と交流。

                    若者が急に大勢来たことで貢寮の人たちは喜んだ。現地の反原発運動(自救会)は老齢化して「疲れて」いた。2011年2月、貢寮反核自救会の再結成大会を老若合流で開いた。予定ではすでに核四は稼働していた筈だが、事故・故障が続いてまだ稼働してなかった。

                    かつての自救会は強力な住民組織だったが、疲弊していた(30年「反対」を続けるのは大変)それを立て直そうということで再結成大会。その直後、フクシマ3.11の衝撃。

                    2011年4月15日「経済部」(日本の経産省にあたる)に黄色い大きなバナーをかけた。「原発ないと電気が足りない?ウソ!」というバナー。4月30日にはサウンドデモ「向日葵廢核行動」総統府の前などで展開。

                    当時のニュース映像を流す。福島から大賀絢子さん、うのさえこさんも参加【 集会チラシ(このページ冒頭でリンク)の裏面の写真参照 】して、大規模な集会、ダイインなど。台湾の有名な芸能人も参加した。(※とてもカラフル!)

                    このとき(2011年4月30日)、初めてデモに参加するような人、若い母親とかも大勢参加した。諾努客(NoNuker)は、ちょっと変わった新しいことをしたいという機運強かった。映像での紹介続く。(※グルーヴ感なかなかである。)

                    こういう感じのデモ(サウンドデモ)は台湾でも初めてで、従来の環境団体からはかなり文句言われた。沿道でちょうど試験をしていた学校もあって「うるさい!」と言われた。でも、従来のデモの表現方法(エイエイオー!)は面白くないと思った。はでにやりましたww

                    このあと、東京・高円寺の「素人の乱」の人たちもサウンドデモやったと聞いて、台湾に呼ぼう、ということで5月末に松本哉さんらを招待。でも政府は第4原発への予算追加を決定(2011年6月)。

                    予算追加は、別に安全対策を追加するということではなく、資材の値上がりに対応したもの。与党(国民党)絶対多数だったので、可決確実だった。ここは真面目に抗議しないと、ということで本格的なデモや座り込みをした。ニュース映像紹介。

                    台北の北の選挙区、原発に近い地域なのに、そこの与党議員は「いま否決したら、これまで費やした予算が無駄になる」と主張、ひどい人。立法院の敷地内に「突入」、しかしそうした直接行動しないと社会が注目してくれない。(※ニュース映像では炯霖さんもゴボウ抜きされてましたな。)

                    立法院「突入」は、やはり過激行動と見なされるので、一般民衆の共感は得にくい(そういったパターンの運動に台湾民衆はもう飽き飽きしている)、環境団体からの批判もうけた。でも大きく報道されたインパクトもあった。

                    核四廠・安全検査委員会のメンバーで原発エンジニアの林宗堯(リンツォンギャオ)氏が2011年7月に「核四論」という長大論文を発表。工事の質がむちゃくちゃであること、原子力委員会の検査機能がはたらいていないこと、などを指弾。この人は推進派だが、今のままではとてもまともな原発は建たないという危機感をあらわにした。衝撃の論文。

                    推進派の中からこのような声が出たことで、台湾の人々が工事の実態や検査のいい加減さに注意を向けるようになった。電気系ケーブルの引き直し工事が命令されるなど、いろいろな反響。2016年商業運転予定、馬総統はそのとき総統でないので、問題を先送りして凌ごうとしてる。

                    工事の質が社会問題化したことをうけて、2011年11月5日、ふたたび大規模サウンドデモ(開唱電音派對街頭遊行)、台湾電力本社ビル前に集結。映像で紹介。鉄腕アトムも登場!台湾電力突入(※おいおいw )。法律では10pmまで騒音出してもよい(?)ので、ばんばんやりました。

                    第4原発建設は予定通り進まない公算大きくなってきた。運動の盛り上がりも大きい。しかし、まだどうなるか分からない。台湾は社会問題めじろおし。馬英九総統の再選も悪い材料。住民決起事件(師大夜市の「撤去」)、メディア買収事件などなど続発。

                    メディア買収は、中国本土の資本による台湾メディア支配なので、将来への影響大きい。毎日いろんな社会問題続発するので「原発どころじゃない」という雰囲気も。「直走珈琲」も師大夜市エリアにあったので、住民決起の圧力をうけ、閉店。告別祭を3日間やった。総力で騒音!

                    今年3月、核二廠(第2原発)で基礎ボルトがたくさん折れる事故発覚【 集会チラシ(このページ冒頭でリンク)裏面の写真参照 】、再稼働をめぐり、馬総統は「台湾のどの人間も原発に反対していない」と発言、芸能人たちの「私は人間だ」というアピール(我是人、我反核)が続く。道路でゲリラ的にダイインする行動をあちこちで。

                    ゲリラ的にいろいろな場所でやった「ダイ・イン」の映像紹介(※とても面白い!)── 台湾中央駅のホール、黄色いレインコート着た人たちが大勢横たわって「人」の形をつくり「我是人、我反核」と叫び、警官が来る前にさっと解散。Facebookで大反響、各地で模倣行動、「我之宅、我反核也」(ぼくはオタクで反核)というのも。

                    2012年、貢寮海洋音楽祭 ── 出演者は「我的音楽不挿核電」(あたしの音楽は原発の電気を使わない)などのアピールを打ち出した。NoNukes花火がんがん!

                    台湾の原発は電力の17%、電力余裕は十分(予備電力19%ぶん有り)なので脱原発可能。脱原発政策をうちだす政党もある。

                    元原発労働者(喉のガンに苦しむ李桂林さん、台湾電力と訴訟中)の紹介【 集会チラシ(このページ冒頭でリンク)裏面の写真参照 】、台湾電力は全否定。李さんの裁判を傍聴したが、証言にたつ社員から侮辱を受けるなど、とても厳しい状況。


                    ※ここから、質疑応答にはいります。

                    【質問】「台湾は地震はどうですか?」
                     ── 炯霖さん回答: ワシントンポストの「世界で最も危険な原発」という記事で台湾の原発が複数リストアップされてます。

                    【質問】「福島のことはたくさん報道されてますか?」
                     ── 炯霖さん回答: 盛んに報道されてるけど、他の社会問題続発で、最近はややかすみがち

                    【質問】「第4原発の工事の質はなぜ悪い?」
                     ── 炯霖さん回答: 「分離発注」が問題。GEの設計だが、あちこちばらばらに発注されて、それぞれ勝手に設計変更したりしてる(もちろんルール違反)、第4原発で特にひどい状況。

                    【質問】「野党=民進党の政策は?」
                     ── 炯霖さん回答: 2000年に政権とったときは脱原発で核四も止めると言ってたが、できなかった。核一から核三は40年廃炉、核四は工事は進めるが稼働しないと言ってる、意味不明。民進党の脱原発政策はがたがたぼろぼろ。

                    来場されていた服部良一さん(衆議院議員)から、原発輸出の状況について説明あり: 機械プラントの仕事をしてたので、台湾のごみ処理場の建設などにも関わった。第四原発の工事の杜撰さは台湾の水準のなかでもかなりひどい。原発輸出は何としても止めたい。台湾の国会のなかでどういう動きが可能か、情勢さぐっているところ。

                    佐藤大介さん(No Nukes Asia Forum 事務局長)より補足: 東芝日立は「台湾の実績」を輸出につなげたいところだが、トラブル続きで困っているのが正直なところ。

                    【質問】日台の国交が無いのに原発輸出ができるのか?
                     ── 佐藤大介さん回答:主契約者はGEなので、米台間の契約で、東芝日立はその下請け。日本政府は交換公文でクリアさせてしまっている

                    以下、ふたたび炯霖さん
                    今日、西梅田公園で6pmからサウンドデモがあるので、駆けつけたいです。皆さんも行きましょう!

                    台湾の法律では「3人以上」の集会は届けないといけない。でも、民衆運動の実績で、なんとかやれる。警察の事情聴取は受ける。人文字アクションは無許可でさっとやってさっと散る。でも有名人は事情聴取を受けて報道されたりもしている。

                    服部議員質問:「発電所敷地内の活断層の調査は?」
                     ── 炯霖さん回答:「しょぼい報告書が出て、大丈夫です、ということにされてしまっている。原子力委員会は独立していない。経済部の組織。」(あれ?内閣の組織じゃないのかな??)

                    食品汚染の基準を370から600Bq/kgにあげようとしている。日本からの輸入を目論んでいるのか?

                    【質問】「使用済み燃料や核廃棄物が原住民の土地に押しつけられている問題は?」
                     ── 炯霖さん回答: 蘭嶼の処分場は中間処分地、最終処分先はまだ決まっていない。候補地2箇所はいずれも原住民の土地。動かすべきかどうか、環境運動としても扱いが難しく苦慮している。燃料棒は敷地内50年乾式貯蔵。使用済み燃料棒の最終処分地の候補地で大きな地震があって、論議を呼んでいる。北朝鮮に運ぶ話は10年以上前に頓挫。モンゴルも狙われているか?
                     蘭嶼の処分場内の扱いの杜撰さなどスクープ報道もあった。今年2月。今年3.11の大きなデモにも蘭嶼の人々参加していた。反対運動は大きく盛り上がっているが、ではどこへ運ぶかという問いに答えは出ていない。

                    【質問】「デモの映像をみると警察の“護衛”がないが?」
                     ── 炯霖さん回答: 台湾はそこはゆるいですね。こいつらは騒ぎたいだけ騒いだら帰るから騒がせておく、というふうな対応。(※へぇ〜?!)

                    【質問】「夜市撤去で住民が“決起”するというのは、どういうこと?」
                     ── 炯霖さん回答: 再開発がらみ。夜市が再開発の邪魔になる、と考える住民がいる。強硬撤去はそういった思惑に支えられている。

                    (参加者の男性から補足: 戒厳令時代に較べて自由になって、それを謳歌している感じだが、それで社会運動が収斂していくわけでない。)

                    炯霖さん:住民間や当事者間のコミュニケーションが不足する傾向つよくなっているように思う。それが原発を支えてしまう。

                    【質問】直走珈琲の「直走」ってどういう意味?
                     ── 炯霖さん回答: まっすぐ歩く、右にも左にもぶれない、という意味。


                    16:32終了(拍手!)。
                    (※いやぁ、映像あれこれ、とても面白かったなぁ。)

                    2012年7月18日

                    【Egy/Env】地域から持続可能な社会をつくる


                    環境市民20周年記念セミナー
                     
                    地域から持続可能な社会をつくる
                     ── 100%再生可能へ! 欧州のエネルギー自立地域

                    2012年7月18日(水)
                    於:ハートピア京都 大会議室


                    村上敦さん(環境コンサルタント、ドイツ在住
                    池田憲昭さん(森林環境コーディネーター、ドイツ在住)
                    滝川薫さん(環境ジャーナリスト、スイス在住)
                    杦本育生さん(NPO「環境市民」理事長)

                    司会 下村志津子さん(NPO「環境市民」)



                     Ustやインターネットでの中継はしないでください、との主催者の要請があったので、会場からの連投はせず、お話をききながら入力したメモを、セミナー終了後にまとめて公開することにしました。ついつい中継ツイート調の書き方になってしまっていますが、悪しからず。
                    (お話しされた皆さんに、まだ内容確認をしていただいておりません。今後、訂正・追加などあるかも知れません。文責・細川ということで、ご了解ください。)


                    (0)イントロ:村上敦さん 18:17-18:27

                    • 欧州の再生エネルギー普及の1番のポイントはおカネ。平均世帯の年間エネルギー支出、年間30万円(ドイツ・スイス・オーストリアなど)、小さな自治体規模で考えても十数億のお金が毎年エネルギーに支払われる。この金額をいかに地域内にとどめるか、地域外の企業に吸い取られないようにするか。小さな保守的な共同体で「自然エネルギー100%」というようなコンセプトが実践に至ったのは、この「お金を地域内に留める」というのが大きなインセンティブだった。
                    • ドイツであれば、ロシアや北海油田に支払うのでなく、地域内の林業者に支払う、というような選択。
                    • 地方の過疎化、農村部の疲弊、石油の値上がり、といった要因が背景にある。“何の取り柄もない”小さな村では、企業を誘致するというビジネスモデルはもう成立しないし、公共事業で食っていくというのも展望がない。じり貧の世の中になってきたとき、地方の小自治体にとって、外に払うお金を減らし、地元で循環させるというのが合理的な選択。


                    (1)池田憲昭さん「木質バイオマスの有効利用」18:27-18:58

                    • 南西ドイツ、フライブルク大学で森林環境学を学んだ。ドイツ在住十数年。森林資源のエネルギー利用についてお話しする。
                    • 独日を比較すると、ドイツより日本のほうが森林資源のポテンシャルは大きい(面積、1ヘクタール蓄積、生長量)。持続可能な年間の利用量でいうと、ドイツ実測8立米(m^3)/ha、日本推計12-14立米/ha(1haあたりの生長量x0.7) ── 元金に手をつけず利子だけを使う、という比率。面積をかけた総量でいうと、ドイツ8000万立米、日本は人工林のみで1.2-1.4億立米(人工林1000万ha、天然林1500万ha)cf.日本の国内木材需要1.1億立米
                    • ドイツの林学者が見ると、日本の森の土はとても豊か。
                    • 中央ヨーロッパの林地の生産性の高さの秘密のひとつは道路。林道が水の流れをコントロールしている。沢水を道路の路肩でいったん横に受け止めて、勢いを弱めてから暗渠で下に流す。林道は等高線に沿って整備。
                    • 中欧の木質バイオマスは熱利用が中心(8割)、薪・ペレット・チップ・
                    • 薪ボイラーは自動化が難しい。薪の集積場があちこちに。チップ・ボイラーは自動化が可能。50kW以上のボイラーで数世帯の地域暖房。
                    • 発電利用の場合は、不均質ガスの発生、燃料の安定供給、過剰な熱発生のため熱利用の受け皿がととのわない、などの問題がある。バイオマスの発電利用はこれらの制約ゆえに少ない。
                    • 薪は地元におカネがおちる。ペレットは工業製品なので、地元からおカネが出てしまう場合もある。ペレットは木質のなかでは最も燃料費が高いが、石油・ガスと較べると圧倒的に安い。ゆえに石油・ガス・ボイラーからペレット・ボイラーへの切り替えが進んだ。石油・ガスが今後安くなることは考えにくい。
                    • 木質と太陽熱のコンビネーション。石油・ガスと違って、点火消火が随意にできない。熱を溜めるしくみが必要。太陽熱利用との組み合わせで、あまり大きくないペレット・ボイラーを設置。冬場のピーク需要にあわせると大きなボイラーが必要だが、太陽熱との組み合わせで大きさを抑制できる。
                    • 林地の枝葉、土壌の貴重な栄養分(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)。バイオマス利用による土壌劣化の危険を避けるため、樹皮・枝・樹冠などを林地に残す措置を推奨。土壌をしっかり守ることがバイオマスの持続利用の条件。
                    • ドイツの林業就業人口132万人(cf.自動車産業75万人)、年間売り上げ1800億ユーロ(GDPの5%)。日本はドイツよりも森林資源量ポテンシャルが大きい。
                    • 森林木材クラスター雇用の場は、製材合板工場、木材加工(家具など)、木材手工業(工務店、内装業)、パルプ産業など。全部熱利用してしまうと、これらの産業が育たない。製材合板工場の残材の有効活用を追求するのがよい。なるべく森の地各区に小規模の製材工場を立地させる(5000〜2万立米規模を想定)。林地残材は水分を含む不均質な資源、
                    • 森だけで日本のエネルギーをすべて賄おうとすると、森林や土壌の劣化を招く。他の再生エネとの組み合わせを組むことが重要。地熱のポテンシャルもバイオマスより大きいだろう。足りない分をバイオマスで補う、といった設計を。
                    • 木材のカスケード利用: 楽器・工芸品>家具・建具>建築用材>木質プラスチック>木質ボード>紙>燃料。燃やすのは最後の手段、かつ熱利用を中心に。カスケード利用が持続的利用の決め手。
                    • 日本の場合、人工林の複相化も課題。


                    (2)滝川薫さん「スイス都市部における未利用エネルギーの利用」19:00-19:29

                    • スイスは、九州くらいのサイズ、750万人、気候は東北に近い。
                    • 先進地域としてバーゼル都市州などの事例を紹介したい。
                    • 未利用エネルギーは「環境熱」(空気熱、地下水、水道、河川、湖、地中熱)と「廃熱」(ごみ焼却熱、下水熱、機器廃熱)
                    • スイス、再生エネが2割、水力12.2、バイオマス4.3、環境熱1.2、ごみ2.4
                    • 環境熱はヒートポンプで温度を上げ、全館暖房に使うのが一般的。戸建て新築では87%にヒートポンプ設置(うち4割が地中熱)。ヒートポンプに要する電気1あたり2〜4倍のエネルギーを確保。電力需要の4%がヒートポンプ、これが冬のピークに重なるのがデメリット。生電気暖房(ヒートポンプを使わずに電力で暖房をすること)は多くの州で禁止されている。現状では生電気暖房6%、生電気給湯4%、これらをヒートポンプで代替していくことにより、電力総需要を抑制可能。
                    • 地中熱利用、高効率で任期。フリークーリング(地中熱をヒートポンプを介さずに直接利用)も一般的になりつつある。太陽熱温水器との組み合わせ。ヒートポンプの電源は光発電。全体としてゼロエネルギー(使う電力を上回る電気を供給し、効率的に熱利用)。
                    • チューリッヒ市営電力公社、ヒートポンプの電源を再生エネでまかなう。排熱利用をすすめる。湖水熱を用いた地域冷暖房システムを設置。
                    • ごみ焼却熱、1991年から熱利用を義務づけ。すべての焼却場で電熱併給が基本。郊外ではなく町のなかにあるので、地域熱供給が基本。都市の主要熱源となっている。
                    • 現状ではスイス全国のエネルギー熱効率は40%台、これを70%台に高めていくのが目標。
                    • 下水熱利用、ヒートポンプで地域冷暖房。大きな処理場の近くの大きな施設(建物)で使うようにエネルギー・マスタープランで調整。eg.ルツェルン駅前のオフィスとホテル、市(エネルギー公社)からの働きかけで保険会社が施主となり設置。
                    • 下水処理場の処理後水を地域にまわして熱利用している例(チューリッヒ市)。
                    • 両市ともマスター・プランで下水熱利用の指定地区を定めている。下水熱の直接回収(建物内)もおこなわれている。
                    • 利用促進をささえるのは ── 1化石燃料への炭素税、2建物の断熱義務、3自治体ごとのエネルギー供給マスタープラン(GIS)の策定、地図に落とし込み、建設条例で義務づけ、4市営エネルギー公社の存在(独立採算の公営企業)、エネシフの建設・運転・仲介調整など
                    • バーセル都市州の先進事例。19.2万人。人口密度の高い都市。住民投票1973で「原発の電気を使わない」と決定。電気については100%再生エネを実現。州環境エネルギー部、商工会議所、エネルギー公社の三者がエネシフを牽引してきた。電力への「補助金税」再生エネ&省エネの補助財源、1の補助金で8〜20倍の投資が地元企業に還元される効果。
                    • IWB社(州営インフラ・エネルギー公社、100%州有)、ガス石炭原子力による大型発電所への出資は禁止。100%再生エネ(9割水力、残りごみ、光、風力、木質バイオ) ── 周辺広域との連携
                    • IWB社の地域暖房(熱供給網)長さ200km、4.5万世帯に接続(工場、学校、病院、一般家庭)、熱源の6割がCO2フリー(ごみ43%,木質バイオマス12%,など)
                    • リーヘン市では温泉水による地域暖房網、IWBとリーヘンしの合資会社。シュトゥッキセンター(工場の再開発地区、店舗、ホテル、オフィスなど(汚泥焼却の排熱、夏は冷房(吸収式冷凍機)、冬は暖房、排熱だけで5000世帯に熱供給。
                    • ビンニンゲン市(バーゼル市地域)での事例、河川熱・下水熱・ガスコジェネの組み合わせで地域暖房
                    • サンクトコンブ地区(バーゼル市地域)の事例
                    • 多種多様な熱源を効率的に組み合わせる、建物単位ではなく地域暖房を組む、自治体が中心に促進(マスタープランが重要な役割)、地域密着型のエネルギー会社、ヒートポンプの電源は再生エネで賄う、コージェネも必ず組み合わせる。都市部では100%再生可能な熱供給が可能、熱は都市の宝!


                    休憩 19:30-35


                    (3)村上敦さん「なぜ欧州は、エネルギー自立ができたのか?」19:35-20:07

                    • 風力や太陽光で発電がんがんやります、という話ではない。余ってる熱や残材を有効利用するというケチケチで細かい話、小さい設備を積み上げていく。そうしないと地元の雇用や産業が生まれない。メガ設備をどか〜んと作る方式だと地域でおカネが回らない。
                    • エネルギー自立の動きは欧州では30年前くらいから始まった。デンマークなど。当時は石油価格安かったので、何をしているんや、という受け止め方が一般的。しかし、今や、エネルギー自立に早く取り組んだところほど地域経済が順調。
                    • スイスは小さな国のわりには各地域毎の多様な事例がみられる。保守的で地域分散の精神が強いのと、うまく噛み合っている。
                    • 以下、ドイツの場合。kWh=¥(キロワットアワー・イズ・マネー)夏に出す新しい本のタイトルです(^_^;)
                    • エネルギー価格、毎年3-5%、複利であがっていく、と考える。たいへんな支出。eg.長野県(210万人)、年間5300億円がエネルギー費用として県外に流出。cf.県の農業産出額2,623億円、観光消費額3,349億円。
                    • 日本は2050年には国土の6割で地域人口が半減
                    • 2030年には基盤インフラ維持のため、今の約2倍のお金が必要
                    • 世界的に燃料枯渇、残りの原油の可採埋蔵量は1.1〜1.4兆バレル、ブラジル沖など7000mの海底で掘削、メキシコ湾も3000m深。エネルギー費用の高騰は始まったばかり。
                    • ドイツのエネルギー政策: 熱6割、うち2割は産業用。断熱することで大幅な削減。電気2.5割の0.5は産業用熱、0.5は産業用動力、消費抑制は困難、再生エネで支える。交通政策はあまりドイツのまねしないほうがよい。
                    • ドイツのエネルギー戦略目標(エネルギーコンセプト2010)、CO2排出を劇的にエラしていく。再生エネの比率2030年までに50%、2050年までに80%。
                    • ドイツでは保守政党がこういう政策をとる。なぜか? 地域経済界の突き上げが強いから。再生エネが主流になったのは、
                    • 毎年2%ずつエネルギー利用効率化することが大前提。
                    • 優先順位1は建物(新築時)の省エネ: ミニマムスタンダード(新築燃費基準)の推移、1984年に義務化、年年厳しくなっている。日本では北海道だけでとられている政策。新築に義務づけることで、設計ノウハウが蓄積する。省エネ建材が普及し価格低下する。新築は建物のほんの一部なので、すぐにエネルギー総量抑制されるわけではないが、ノウハウ蓄積と価格低下によって、既築分のリフォーム(エネルギー改修)に影響する。毎年40万戸が改修、安定した仕事として確立。エネルギー改修の経済効果は大きい。消費税が大きい(19%)ので、国としても補助金を回収できる!
                    • ドイツ、のべ床面積は増加しているが、使用エネルギーの総量は減っている。年間1.5兆円ずつ節約している勘定。しかし、建物の省エネはひとまわりするのに40年かかる。
                    • 優先順位2は高効率化: 地域暖房による熱源の集中、コジェネによる熱効率向上、地域の熱需要マップの作成(1haあたり何MWhの熱が使われているか、1軒1軒の聞き取り調査をふまえ、地図で可視化する) → 地域暖房でまかなう計画をたてる。ボイラーの更新時期を把握して、集中化をはかる。小規模でも大規模でも、熱供給をやりくり。
                    • コジェネの電気も電力会社に買い取り義務。
                    • FIT法(1991年施行)や3%の再生エネ電力が20%に。風力と光で大半。この2つは不安定電力。安定供給がなかなかできない。年間電力供給のわずか4%の光発電が、7月頃のピークには全グリッドの40%を埋めてしまう!冬には風力で同じことが起こる。いずれの季節も、グリッドが過負荷でブラックアウトしないようにピークカットをしている実態(ソーラーや風車のスイッチを切る)。余った電気が大量。そこでpower to gas(余った電気でガスをつくる;水を電気分解して水素ガスを作っておく、CO2とまぜて人工メタンガスにして、パイプラインに混ぜ込む)
                    • 順番は明確: 省エネと効率化が先、それで足りないところを再生エネで補う。


                    (4)杦本育生さん「原発のない、持続可能な社会をいかにつくるか、環境市民の戦略提案」20:08-20:35

                    • 3名の方のお話の共通点: 経済の話、地域が鍵。
                    • 未曾有の経済危機、貧富の拡大
                    • 持続可能な開発の条件である環境・経済・社会の3つともガタガタ。
                    • スウェーデンは「持続可能発展省」を設置
                    • バックキャストとビジョンこそが肝腎
                    • 「アジェンダ21」の28章 地域の参加協力が決定的。スウェーデンやドイツはこれが大きく影響。日本はほとんどしてこなかった。京都はローカルアジェンダ決めたが、不十分。
                    • 政策転換は地域から起こる。公害もそうであった。これを忘れてはいけない。
                    • ドイツの小都市の商店街と日本の地方都市の商店街の大きな違いは、いる人の数。「住むに値する町」をつくるというビジョン。自動車が無いと住めない町は「住むに値するか」?というような議論をした(エッカーンフェルデ、環境首都) → 自転車と自動車の共存、車椅子でふつうに買い物ができる中心街区、といった形を実現。
                    • ひとつの政策を縦割りをこえてやっていく(環境政策/雇用政策/...というふうに分断しない)。
                    • スウェーデンのハンマルビー・シェースタード、同じライフスタイルをとりながらエネルギー消費を半減させてしまった。
                    • ドイツの環境税(電力税、燃料税) → 年金保険料率の低減、雇用を生む。環境政策と雇用促進をくみあわせる方式。
                    • 日本の再生エネルギーのポテンシャルはきわめて大きい。「資源小国」は嘘。化石燃料で考えると小国、しかし再生エネならばエネルギー大国になれる。再生エネの投資額、日本はG20中11位(1位は中国)。
                    • 原発を生み出した経済と、原発を必要としない経済のしくみ、パラダイム・シフトが必要。技術偏重・利益偏重には原子力がうってつけ → 逆のパラダイムを求めていく。地域主権・情報共有・自立開放型の発展。文明転換という視点で進めないとだめ。
                    • エネルギー資源の購入(輸入)にあてる支出を国内産業にまわしていくことが重要
                    • 京丹後市、バスの運賃上限200円を設定したら、利用者が増え、赤字縮小しつつある。長崎市電はいまでも均一120円。
                    • 「環境首都コンテスト」の実践をへて、自治体との戦略的協働ネットワークを結成(11月予定)。地域から率先例をつくっていく。こんなことが出来るという事例を増やしていく。既存制度や法律が障害になる → 制度改正の必要性を明確にしていく。
                    • 「グリーン・ウォッシュ」をなくそう! 311後の東芝の広告“自然エネルギーを上手に使う新しい社会の船出です” ── 日本は「環境広告」が世界一多い国だが、内容はむちゃくちゃ、言いたい放題、根拠まるで無し!


                    閉会挨拶: 堀孝弘さん(NPO「環境市民」事務局長)

                    • 報告は刺激的だったが焦りも感じる。日本の現状を思うと、「原発は危ないからやめましょう」という面だけでなく「原発よりも良いものがこんなにたくさんある」というところを是非、シェアしていきたい。
                    • エネルギー環境政策のパブコメ、ぜひ意思表示をしましょう。
                    • NPO「環境市民」は20歳の誕生日むかえました。記念入会キャンペーンもやってます。活動に参加したり、イベントに参加したり、いろいろな形で関わっていただければ!


                    20:43 終了 

                    2012年7月14日

                    【Paz/Musica/TLS】film+talk+songs



                    映画『カンタ!ティモール』
                    上映&トーク&ミニライブ 

                    2012年7月14日(土)
                    於:京都精華大 対峰館 T-109


                     会場から中継ツイートしましたが、その後、事実関係について少し訂正・加筆したので、ここにあらためてアップしておきます(文責・細川)。お気づきのことありましたら、お知らせくださいませ
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                    【更新履歴】
                    7月21日 リンク設定のエラーにつき、短縮リンクを変更
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                    (1)上映 13:10-15:00 

                    (2)広田奈津子さん(監督)のお話 15:15- 

                    • 独立式典にソウルフラワーユニオンが出演するので、そのお手伝いで、東ティモールを初めて訪れた。大学を出てすぐの時だった。映画に出てきたアレックスもそのとき出あった。
                    • 再訪のとき、住所もわからず、そもそもアレックスは家が無かったのであえるかどうか。東ティモールは「家族なん人?」ときくと「368人!」とか答がくるところなので、人づてに辿りつけた。
                    • ビザがぎりぎり切れるまで300時間くらい撮影して、この映画の素材になった。おカネなくて、ミニDVテープを使った。兄の仕事場の使いまわしのテープをもらったりして!
                    • フルに3ヶ月滞在してホテルに一泊もしてない。行く先々で泊めてもらった。インタビューを受けてくれた人が次のシーンでは通訳をやってくれたり、機材もってくれたり、ほんとにあたたかい国。編集も未経験、マックとウィンドウの違いも知らなかった私たちが手探りで。
                    • 言葉の種類もたくさんあるし、歌ではスラングも多いし、歌詞を理解するまで時間かかった。独立のとき、ジャングルで戦う人も重要だったが、世界に出て現状を訴える人たちが大きな役割を果たした。
                    • スピーキング・ツアー、少しでも東ティモールのことに耳を傾けてくれる人がいたら感謝したい、という村のおばあさんの言葉を、若い人たちが世界各地を回って伝えた。対話で独立をめざすという哲学。武力では圧倒的な差。
                    • ティモール島の東と西で争ったのではなく、インドネシアという大国と東ティモールという小さな国の闘い。きのう7/13関電前の再稼働反対のアクションに参加してきたときにも思ったが、東ティモールの非暴力の精神から学んだものはほんとに大きい。
                    • 歌のちからも大きい。一晩でも軍が遠ざかる夜があれば輪になって踊ったという。命にかかわる音楽のちから。森の妖怪ルリックの存在感も大きい。入ったら帰ってこれなくなるよ、といった注意も受けた。森がリスペクトされている世界。
                    • 沼にも妖怪がいて、こないだも韓国の人が沈んで出てこなかった!なんて話されて、え=?!となったり。独立運動にこういった目に見えないちからが効いていた。映画のなかのシャナナのインタビューでも話題になってた。【シャナナ・グスマン大統領(当時;現在は首相)】
                    • こういった事柄を聞くのに、英語を介した通訳ではなかなかうまくいかないので、観念して現地の言葉の勉強を始めた。東ティモール独立の闘いは武力では勝負にならないのは明らかだったので、戦略重視、言葉の訴えに重きをおいた。これは軍事リーダーも最初から言っていた。
                    • 仲間どうしでも言葉での表現、それを伝えることをとても大切に。それと自然信仰の強さ。怒りを持ち続けると、自分の体を蝕むので流しなさい、と言われる。相手を赦すのは自分のため。


                    (3)東ティモールからのゲスト、ジュジュさん
                    ── 広田さんによる紹介: 私も今日はじめて会います。ディリで生まれ育った。お母さんはエルメラ、お父さんはオッスのご出身。どちらも美しい山間地。

                    ジュジュさん(京都大学大学院で研修中):

                    • みなさん、この映画みてもらって、良かった。歌の重要さや、ルリックのことも出てきて。ルリックは独立闘争の一部を担っていた。インドネシアとの闘いだけでなく、ポルトガル人による植民地化との闘いでも、大地のちからがティモール人の支えだった。
                    • 私たちは、いつでも歌う。よろこび、団結、大地、牛を追うとき、田んぼやるとき、布を織るとき、いつも歌う。死んだ人とともにあるため、生きてる苦しみを抜け出すため。
                    • 独立のたたかいで山に入って、山のちからを借りることになった。独立した後もそれを大事にする。



                    (4)フロアとの質疑応答

                    Q:友人からこの映画を薦められて見に来た。見て、ほんとうに良かった。歌も良かった。映画のなかで都市でのデモの場面でカバンとかものが飛んでいるシーンが、どういうことか分からなかった。
                     ── A(ジュジュさん):ジャカルタの外務省前での東ティモール人の抗議行動の場面。押し出されたとき、みんな持ち物を落として、それを警察がぽんぽんと投げてよこした。そういう場面。

                    Q:上映はどうしたらよいですか。
                     ── A(広田さん):暗く出来る部屋と音響設備があるところだったら、参加者ひとり500円という設定で開いていただけます【→申込み こちら。配給会社と契約することも検討したが、東ティモール人のスピーキング・ツアーのようなやり方を続けることに意義があると思い、口コミで招いてもらうような細々とした方法をとってます。ぜひ伝えてください。

                    Q:とても若いときに取り組みを始めて、現地で話をきくのはどうでした?
                     ── A(広田さん):各地でインタビューをして回ったとき、辛い話もたくさん。映画にいれてない酷い話もたくさん。女性が被害を悪夢で見る話など。戸を固く閉ざさないと聞けない、という感じだった。あるとき、道で穴に落ちそうになって、居合わせた人に救ってもらい、「ありがとう、ありがとう」と御礼いって、そのあと、どっと涙が出てきてしまい、思い切り泣いた。こんなに助け合い、やさしい人たちが親兄弟を殺される体験してきたんだと、胸が一杯になってしまった。でも思い切り泣いたことで、その後、インタビューを続けることができるようになった。東ティモールの人から、恨みとかネガティブなこと、ほとんど聞かない。本当に愛に満ちた文化。

                    Q:なぜ怒りを手放すことが出来たのか?
                    A:(ジュジュさん)まず怒りを持ち続けることは体に悪い。日本と較べて、東ティモールの家族はとても大きい。いつも近くで関わり合い言葉をかけあうことで、怒りを手放せるのだと思う。

                    Q:東ティモールは日本をどう見てる?
                     ── A(広田さん):感情的な反日というのは無い。けど、日本人と日本政府はきっちり区別されている。日本政府の過去と現在の対応には、厳しい批判がある。今年決まった円借款には反対の声も多い。
                     ── A(ジュジュさん):ティモールの人たちは過去を見るのが嫌い。過去にインドネシアの侵略を支援したのは日本だけでなく、オーストラリアとか米国もそうだった。そういった過去で、現在の日本との関係を縛りたくない。日本の印象は、やはり「勤勉」。広島・長崎の惨状から復興したというのは東ティモールにとって心強い。津波からの復興の様子にも印象を受ける。日本の人はほんとにいい人たち。


                    (5)16:20- SADAM(小向定さん)のミニライブ


                    • まず、アレックスが作った歌から。(とても柔らかくあたたか。。。)
                    • 2曲め、映画のテーマ曲。オー マルチーナ、オー ウルチーナ、星降る島に、夜が明ける。
                    • ジュジュさん、実は日本語けっこう話せます。サダム「なんだ、それなら苦労してテトゥン語の通訳しなくてよかったのに、言ってよ=!」ww
                    • ジュジュさんが「みんなで踊りましょう」。サダムが参加者にマラカスと太鼓わたして、やっぱここは「テペ」群舞でしょうと。ジュジュさんのステップを見よう見真似。サダムの歌にジュジュさんが高いカウンターを見事に!オ〜ヘレレー、オ〜ヘレラー!
                    • 3曲テペして(みんな汗だく!)、上映会&トーク 16:50 めでたく終了。
                    • 参加者30名強。去りがたく会場のあちこち、話の輪。


                    2012年7月7日

                    【Env】『環境教育学 ── 社会的公正と存在の豊かさを求めて』出版記念シンポジウム


                    シンポジウム
                    「環境教育をラディカルに問い直す」

                    2012年7月7日(土曜)13:00-17:50
                    於:京都精華大学 清風館 C-103教室
                    主催: 京都精華大学 人文学部 環境教育指導者養成プログラム
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                    13:00 開始、趣旨説明(井上)  これまでの 環境教育〉 の枠組みを根本から問い直す。4月に法律文化社から刊行された『環境教育学 ── 社会的公正と存在の豊かさを求めて』(井上章一・今村光章 編著)ISBN: 978-4589034083 で展開した諸論考を手がかりに、持続可能な未来社会の実現に貢献できる環境教育にはなにが必要か、環境思想と教育哲学の立場から探る。


                    第1部 持続可能で公正な社会を求めて 
                    話し手=井上章一、林美帆、五十嵐有美子、木村裕、細川弘明
                    コメント=林浩二

                    第2部 共にいまを生きる豊かさを求めて 
                    話し手=今村光章、岡部美香、宮崎康子、辻敦子
                    コメント=田中毎美


                    話し手9名は上記論集の執筆者、
                    コメンテータのおふたりは、
                    環境教育実践と理論のベテランである林浩二さんと
                    教育哲学・臨床教育学の大先達である田中毎美さん。

                    なお、第1部の模様について、
                    当日参加された奥田みのりさんが
                    『オルタナ』誌に報告記事を書いて
                    おられますので、ご参照ください。

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                    【更新記録】
                    7月12日朝、発言者の敬称記載の不統一を訂正、第2部ディスカッションの細川発言、岡部発言の字句を微修正、あおぞら財団へのリンク追加、奥田みのりさんによるツイッターまとめ(togetter)へのリンク追加。
                    7月12日夜、『モンサントの不自然な食べもの』京都上映へのリンク変更。
                    7月13日朝、塩川哲雄さん、安藤聡彦さんのお名前を記載。最後の井上さんのコメントを追加。
                    7月13日夕、田中毎実さんの配布資料(微修正版)のダウンロード・リンクを設定。
                    7月14日昼、木村裕さんの配布資料のダウンロード・リンクを設定(PDF版)。木村さんの発言4箇所について、木村さんから提供されたテキストに差し替え(発言趣旨は変わらず、より正確な表現に)。
                    7月14日昼、田中毎美さんの配布資料リンクWord版をPDF版に差し替え(同一内容)。
                    8月16日、五十嵐有美子さんのコメント(第1部の(3) )をご本人提供のメモを参考に補充。
                    8月16日、井上有一さんの総括コメントをご本人提供のメモをもとに補充。
                    (五十嵐さん、井上さんからはそれぞれ7月18日と17日にメモをいただいていたのですが、対応がひと月も遅れてしまい、ごめんなさい。)
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                    第1部 13:00-15:05


                    (1)井上有一(京都精華大): 第1章「環境教育の「底抜き」を図る ── ラディカルであることの意味」について

                    • <エコロジカルな社会>の3つの指標 ── 持続可能であること、社会的に公正であること、存在の豊かさが実現されていること。現代の社会の実情は、これらの条件が悉く満たされていない。したがって、ラディカルな変革が必要。
                    • 「底抜き」の意味。たこつぼも掘って掘っていくと底が抜ける。となりのたこつぼと繋がる。環境教育、開発教育、平和教育、ジェンダー教育、食育、多文化共生教育、人権教育、などなどが底でつながっていく、という展望。


                    (2)林美帆(あおぞら財団): 第2章「公害教育 ── 環境教育の原点から未来をつむぐ」について

                    • 公害教育が環境教育に変わっていった、というふうに位置づけられることが多いが、公害が実は終わっていない以上、公害教育も終わっていない。
                    • スタディツアーという形で「直接体験」してもらうこと、多様なステイクホルダー(被害者、行政、支援者、企業、etc)の話を聞く。話を聞いた人も変わるが、ヒアリングを受けた人も変わる。今後どう関わっていくかを皆が考える機会になる。


                    (3)五十嵐有美子(京都府立大): 同じく第2章について

                    • 公害問題も地球環境問題も、加害 - 被害という同じ社会構造をもつ。日本のこれまでの公害教育の成果は、社会批判的に考え、加害 - 被害の構造に目を向け、主体的に学びとり行動する、そういう人たちを育成するところにあった。公害教育が必要である理由は、まさにそこにある。
                    • 公害教育は、かつて「偏向教育」と言われてしまい、さらに「公害は終わった」とされて、「公害教育」から「環境教育」へ、現在では「ESD」(持続可能な開発のための教育)とその名称が上書きされてきた。国も近年は「ESD」を推進している。
                    • しかし、テサロニキ宣言にみられる本来の理念、つまり「自然と人間」のつながりだけでなく、「人間と人間」「人間と社会」といったつながりにも目を向けるという点において、ESDと日本の公害教育の理念は共通しており、両者は同じ社会像を目指していると言える。
                    • そもそも公害教育は、日本独自の貴重な経験であり、国連などの会議の場で取り決められた「ESD」よりも、日本の歴史的経緯にねざした公害教育を今こそ見直し、その経験から得られたものを活かす必要がある。
                    • 環境教育に対して与えるインパクトは、まだ沢山ある。




                    (4)木村裕(滋賀県立大): 第3章「開発教育研究から学校教育を問い直す ── 環境教育の実践に向けた新たな展望」について
                    • 「社会の再生産装置」としての学校教育をラディカルに問い直さないと、社会の変革を射程に入れた環境教育を実践することは難しい。
                    • 教師が専門家としての力量を発揮できるようにすることが重要。社会変革への契機に子どもを向かわせるにはどうしたらよいか。
                    • 「社会の批判や変革それ自体」を開発教育や環境教育の目的とするのではない。よりよい社会を実現するために、必要に応じた変革を視野に入れて現状分析や将来構想をおこなうことのできる学習者を育てることが重要。
                    • 政治的リテラシーを育成することの重要性。系統的なカリキュラム編成が必要。これまでは、ともすればワークショップ形式で単発的、一過性のものに留まった。
                    • 学校運営に子どもを参加させることで政治的リテラシーの育成を促す。
                    • 社会認識の深化、自己認識の深化、問題解決にむけた行動への参加、という3つの側面で、子どもが身につけるべき「学力」を考える。
                    • 「専門家としての教師」とくに方法論を身につける専門性、変革のビジョンを持つこと、加えて教師が力量を発揮するための制度的サポートが重要。



                    (5)細川弘明(京都精華大): 第4章「ポスト・フクシマ時代の社会的公正への視座」について 

                    • 当初企画(3.11以前)では、海外のへの視線の弱さと歴史的視点の欠乏が(日本の)「環境教育」の弱さだった。
                    • そういったことを中心に書こうとしていたが、3.11で頭のなかふっとんでしまい、章の構成を一から考えなおした。福島事故が多くの立場の人にとって「敗北」であったこと。環境教育もまた「敗北を抱きしめ」るところから立ち上がるほかない。
                    • 環境問題と原発問題の相似性を認識できていなかった従来の環境教育の欠陥。問題の多面性やステイクホルダーの多様性を捨象する傾向。
                    • チェルノブイリ事件を水俣事件と結びつけて理解・対処しようとしてこなかった「環境教育」の浅はかさ。これを克服していくことがポスト・フクシマの環境教育の課題。



                    (6)林浩二(千葉県立中央博物館): 第1部へのコメント

                    • なぜ「論」ではなく「学」なのか?
                    • 3つの原則(環境持続性、社会的公正、存在の豊かさ) ── TPS(technological, personal, social)という環境教育の枠組みとの関連。自分のやってきた「環境教育」が何であったのかと振り返るよい指標になった。
                    • 従来の環境教育にカッコをつけて差別化することは当然、反撥も招く。deep/shallow論争でもこの危うさはあった。
                    • 「底抜き」は「協働」とは違うのか。安易に協働ではなく、ぎりぎりまで掘り下げることに意味があるということか?(そうしないと本当の協働はできない?)2つの対比はかなり本質的
                    • 開発教育がこの本に含まれていることに、驚いたし、嬉しかった。環境教育と開発教育は、それぞれ学会があり、交流も試みられた(80年代、90年代)が、あまり深まらなかった。とくに環境教育サイドでの開発問題への関心が弱かったように思う。開発教育サイドはどう見ているか。
                    • 「リテラシー」の概念を正面から扱ったという意味でも第3章は重要。専門家学者は、すこし専門がちがう分野については何も分かっていなかったりする。それで科学リテラシーがあると言えるのか? そういった状況は30年前と変わらない。
                    • 教員への具体的なサポートとして何ができるのか、もう少し論じないといけない。
                    • 博物館で何をするか、より、学校に帰ってから/家に帰ってから何をするか、それをサポートするために博物館で何をするか、というふうに考えないといけない。わずか2時間の時間を充実させることも大切だが、その2時間が子どものその後の人生にどう影響するかを追求したい。
                    • 環境教育等促進法の改正にあたって、条文のなかに「公害」という言葉が唯一使われていた箇所「過去の公害の経験に学び」が削除されようとしていた。働きかけて最終的には残ったが、ともかく「公害」も「公害地域の再生」もすべて抹殺されようとしていた。
                    • 原発事故を「公害」としてとらえる見方は、まだ少ない。公害としての側面を認識することは重要。ただ、便益の対象があまりに広いため、「公害企業」への通常の対応が簡単にとれない。
                    • 教育機関としての大学の役割が問われている。社会的変革に何か貢献できるのか? 専門家の再生産機関としての側面はどう機能しているのかいないのか。
                    • ビオトープ・自然再生の場の事例。手賀沼への利根川からの導水によって、沼が川になり、水が滞留しなくなり、アオコが減った。しかし水質汚染(急激に増大した住宅地から沼への未処理下水の放流)が解消されたわけではない。外来シジミが手賀沼に侵入。専門家は手をこまねいていた。一方で市民のビオトープ活動にはうるさくケチをつけたりする。そのアンバランスさ。
                    • 博物館も大学も、来年うちの組織はあるのか、という現実の問題を抱えている。非正規職員ばかりになりつつある。これまでのほほんとし過ぎていたという反省はある。この現状で、博物館・大学は持続可能な社会への貢献をいかになすべきか。自分たちのやっていることの外からの評価をもっと求めていかないと。


                    (7)第1部ディスカッション 14:20-15:05

                    今村:「学」とつけた理由は3つ。1)「理論の理論」が欠けていたので、実践/論/学(メタの論)というレベルを考えていくことが大切。2)従来の環境教育学より守備範囲をぐっと広げたかった。3)鬼頭秀一さんの『環境倫理学』に触発された(よく売れたらしい、ということも含めて)。

                    木村: 開発教育サイドが環境教育をどう見ているかは、人それぞれ(会場笑)。開発教育が当初から中心テーマに掲げてきた「貧困」「格差」を軸に、それが他の問題とどうつながっているかということについて議論が深まってきた。その過程で環境問題とのつながりも取り上げられてきたが、環境教育の研究蓄積との十分な対話がなされてきたのかについては検討が必要。

                    木村:「学力」という言葉にかえて「リテラシー」というようになったことの意味を考える必要(eg 算数の学力 → 数学的リテラシー)。身につけた力をどのように使って、問題や社会をどのように読み解き、どのように解決していくのか、どのように変えていくのかという側面への注目。

                    林美帆: 教員が現場の雰囲気(西淀川の人たちの明るさ、富山の人たちの辛抱強さ、etc)を直接体験してもらうことが重要。コーディネータの役割が大きい。公害教育でも「学ぶことが楽しい」という感覚が重要。公害教育って何が学べるの?という疑問にストレートに応えていかないとファンが増えない。

                    塩川哲雄さん(大阪府の高校理科教員、地域環境教育、人権教育など担当):教員の「業界」がはたして「社会変革の必要性」に目覚めることはあるのか、という疑問はある。環境教育の現場は「負け続け」なので、もう「敗北」なんて言わんといて欲しい、というのが正直なところ。だが、この本読んで、また勉強したいという気持ち出てきた。内容雑多だなぁとも思ったが、子どもらが目がキラっとすることにつながる雑多さ(ただ雑多ではなく、高め合うことが前提)であれば。

                    フロア男性(枚方環境ネットワーク会議、環境教育サポート部会): 枚方市のSEMS制度、環境教育啓蒙の活動

                    井上: 「家庭のこころがけ」に終始させないことが決定的に重要。

                    ・15:05-15:30 休憩

                    再開、まず、各種アナウンス



                    第2部 15:40-1750

                    (8)今村光章(岐阜大): 第5章「詩的に大地に住まうこと」について

                    • 環境教育という“負け戦”をたたかうことの教育学的意味はどこにあるのか? 環境教育の3つの限界(本書pp.107-111)知の限界(科学的実証ができる範囲を超えた問題に直面)、操作性の限界(自然を操作しきれない)、教育的制御の限界(自然体験をおぎなえば環境問題が解決するわけではない、知識を増やしても解決しない、合意形成力を鍛えても環境に配慮した行動をする人間になるとは限らない)
                    • 環境教育にたずさわりながら、つねにアンビバレントな感情を抱いていた。
                    • 森のようちえんのこころみ(pp.113-119)詩的に住まう技法が身につくのは、(手段としての)教育プロジェクトの結果としてではない。



                    (9)宮崎康子(神戸女学院大)第6章「大人の論理を超える子どもの遊び体験」について

                    • 遊び体験の減少が子どもの自己肯定の弱まりにつながっているとの指摘。自然体験学習もこういった観点から推奨されてきた。
                    • しかし「自然体験学習」と「遊び」は同じものではない。遊びは徹底した自由、そのこと自体の目的性。遊びと教育を結びつけることは原理的に矛盾。
                    • 人間が生きることと不可分の営み、として教育を捉え直せば、遊びとつながる余地がでてくる。
                    • 遊びの結果にたまたま教育的効果が生じることはある。教育のなかで子どもが遊びを感じることはある。そのような体験が子どもの生を深いところで変える可能性はある(バタイユの「遊び」論)。
                    • 意識が死で限りなく近づくことで、生命の輝き ── 遊びに没頭している子どもに見られる生命の輝きと同質。
                    • 「遊び」と労働概念、目的・手段関係に規定された近代的労働観、それに反する「遊び」への規制、労働につながる競争の遊びのみ「良い遊び」として許容。
                    • また、近代的「子ども」の観念の成立。子どもにとっての「良い遊び」「悪い遊び」の規定、しかし子どもが没頭するのは原初的な生の輝きにつながる遊び。大人(近代)の論理を超えたところにあるもの。
                    • 環境教育は、豊穣な遊びのちからから学ぶところ多いはず。


                    (10)辻 敦子(奈良女子大): 第7章「「いまを生きること」の豊かさを求めて ── 児童文学『モモ』が語る生命の時間」について

                    • 物語と人生(生きること)をあわせて考える。
                    • 時間意識を問い直す。過去ー現在ー未来というのとは違う捉え方の可能性。
                    • 辻信一(わたしのおじいちゃんと同姓同名!)の『スロー・イズ・ビューティフル』に『モモ』が出てきたので関心をもった。
                    • Time is money か Time is life か。「時間泥棒」との闘い。モモは灰色の男たちに追われ、時間の国にたどりついて、時間の秘密を知る。「いま」とは星々から語りかけられることによって生まれるもの。心臓が止まると時間が終わり、過去にさかのぼり、「人生への銀の門」をくぐって、音楽になる。その音楽こそ「星々からの語りかけ」。
                    • 自分の人生をゆたかだと感じるとき、私たちは物語をつむいでいる。


                    (11)岡部美香(京都教育大): 第8章「無為の生み出す豊かさ」について

                    • 教育は実践なので、うまくいっているかどうかの評価が必要だが、評価の視点・基準をどうするか。教育哲学という分野が「中立」を旨とすることは、そのような事情。しかし、教育哲学では、ジェンダーとか労働といった題材がほとんど扱われない。
                    • 阪神淡路大震災、芸予地震での経験、「揺れたものを落ち着かせる」ようなものを書いてきた。しかし、東日本大震災でそういうことが繰り返せなくなった。「動くこと」だよ、と助言うけた。正解がでない、落ち着かない、そのこと自体を書くことも必要。
                    • 「無為」という概念、教育学において欠かせない「発達」概念の批判につながる。資質をとりだして現実かする、というのが「発達」概念。「何になる」のかがはっきりしないと教育にならない、という見方。しかし、そこを問い直さないと公害にも環境にも向き合えない。
                    • 樹を見たとき、よい椅子になりそうだ、とかいう見方をせず、ただ樹と向き合うこと。
                    • 無為は不安・違和感・落ち着きなさを生むとみられがち。ほかの人たちとともにそこに留まる。自分の視野に入ってこない人と「ともにある」ことはいかに可能か。環境教育から教育や教育学を問い直す可能性。



                    (12)田中毎実(武庫川女子大): 第2部へのコメント
                    【★当日の配付資料の微修正版「問題提起」PDF版のダウンロード
                    • “負け戦”が続いてくると、どう負けたらよいかが分かってくる。「反オルタナティブ」二者択一の発想をやめる。この本がさまざまなオルタナティブの集合体として構成されることに違和感あり。
                    • 教育は「正義」(公正)を伝達することが目的なのか? 教育は社会化であるよりも深いところで人格化。オルタナティブの主体を生み出すことこそ本来の目的。
                    • 相手と話が通じなくなる戦術はよくない。相手の言葉を逆手にとって同じ土俵でたたかうほうがよい。オルタナティブの主張によって生じるコミュニケーション障害は深刻。それではだめだということは歴史的に証明されている。
                    • ラディカルな選択肢をとれるような主体を生み出すことが肝腎。
                    • 「環境の学び」(教育をしなくても人間は環境を学んでいる)のなかで「環境教育学」はどのような位置にあるのか。ユクスキュルの言う「環界被拘束性」と「世界開放性」、人間は後者(学習の余地、存在のしかたの未確定性)。
                    • 外からの呼びかけ(教育)も内からの応答も、より大きなちからの一部(西田哲学)。
                    • 「存在の豊かさ」という概念は、生きることの肯定に立っている。しかし、教育は根源的に「死」と切り離せない。
                    • 近代教育は能動的モダニズム(開発・発達)とかたく結びついている。そのオルタナティブとしての「存在の豊かさ」の意味は分かる。しかし、教育の本来は「死にゆく世代が残される世代へ応答しようとする営み」
                    • もうじき死ぬと分かっている子どもに教育をした実践をどう見るか。社会化論からすれば無意味。教える側と学ぶ側の「死に媒介された生の充実」というのが教育の根底。
                    • 脳性麻痺の子ども達の算数と理科の授業を参観して感じた。死に逝く世代の祈りこそ教育。
                    • 環境教育の実践をどう考えるか。何かを伝達しようとするのか、人間の存在のありようそのものに手を加えようとするのか?
                    • 学校教育のひとつの領域なのか、それともひとつの機能なのか。
                    • 上記4つの側面は本書で語られる実践にすべて含まれている。道徳教育の実践と似ている。「道徳」の時間をとっておこなわれる教育は、全教科・学校のすべての営みのなかでシャワーのようになされる“道徳”教育にとてもかなわない。では、環境教育も「環境教育」の時間を確保することでは何も達成できないだろう。


                    (13)第2部ディスカッション

                    今村: 社会学者・大澤真幸によるチャレンジャー爆発後3分30秒をめぐる論考。宇宙飛行士たちが最後のときをどのように過ごしていたかについて、ネットでの山のような憶測。そこから転じて、「私たちの世界は実は終わっている」まちがいなく死を迎える私たちが残りの時間をどう過ごそうとしている、という大澤の示唆。田中先生の話と結びつけて共感は憶える。

                    今村: 特定のオルタナティブに限定して提示したいわけではない。本書がどこに向かって語っているのか、という田中の問いに対しては「主流に対して」と応えたい。私たちなりのずらし方を試みている。環境問題だけを解決する教育はない。ケナフ植えれば解決、節電で解決、という方向に走りがちな現状への疑問。

                    岡部: 戦後教育学は「子どもを戦争に駆り立てた教育」への反省から、強く「反国家」「個の自由」に傾いた。しかし、経済成長の矛盾が出てきたとき、国家と個人がそんなに行動原理が違うか(個の自由で問題がすべて解消するわけでもない)という視点も出てきた。

                    今村: 第2の戦後が来るのか、教育関係者にそういう発想(環境敗戦のあと、ということ)はあるのか?

                    宮崎: この本を高校の先生たちに送って、多くうけた2つの反応は「分かんない」と「読んで悲しくなった」。子ども達を元気にしなくちゃ教育じゃない、という現場の感覚「じゃぁ、どうしろって言うのだ」(研究者は「天の声」を与えることが求められている)。しかし、先生がたが悲しくなっても子どもらもそうであるとは限らない。不登校の相談に対して、「行かなくてもいいんじゃないですか」「いま学校に行かないことがその子に必要なこと」というふうに言えば、教師としては悲しく感じるだろう。教師も枠にとらわれている。

                    細川: 田中先生のコメントには、虚を突かれた面はあるが違和感は無い。オルタナティブにもいろいろな次元があり、原発をどうするかという次元よりも、原発についてなぜこういうことを考えてこなかったかということの意識を高める次元でのオルタナティブが重要。教育の根底に「死」を意識すべきとの指摘も、同感。

                    田中: 臨床教育学の立場からすれば、現場の実践の否定だけだと言葉が途絶える。

                    堀孝弘さん(NGO「環境市民」事務局長): スウェーデンでは「環境教育」の時間は無い。すべての教科で、環境・平和・人権を扱うべし、ということになっている。負け続けというが、まだやり尽くした上での敗北には至っていない。

                    安藤聡彦さん(埼玉大・教育学部;社会教育、環境教育): 埼玉から来た。本書で「環境教育には覚悟が必要」と書いてあったのが印象的。人間形成学と環境学のつながりを示してくれている。で、田中先生から「甘いよ」と言われそうだが、未熟ですが頑張りますと言いたい。第1部と第2部のつながりが分かりにくい。それを明確にしないと「環境教育学」の全貌がつかめない。環境教育人間学であることは分かるのだが。

                    田中: 福沢諭吉は「封建主義は親の仇」と言ったが、僕の親の仇は「技術合理性の支配」と「官僚制の蔓延」。同じようなことを考えている若い人がいることを知って嬉しい。



                    (14)井上有一: 総括コメント


                    • 「オルタナティブ」ということが議論の焦点になったので、それに関連して、『環境教育学』の編者としての考えを述べておきたい。
                    • 田中先生からいただいたコメントには、たいへん強い共感を覚える。とりわけ、「私たちは、オルタナティブのいずれかに向けて教育することにとどまることはできない。むしろ、オルタナティブに直面して判断し選択する主体こそが生み出されなくてはならないのである。」というくだり(配付資料2頁)は、まったくもってそのとおりであって、このように表現すればよいのだと思った。
                    • この場合の「オルタナティブ」とは、かなり具体的かつ固定的なものが想定されているのであろう。二者択一しか許されないなかのひとつの選択肢、という意味である。これは、まさにこれまでの主流の<環境教育>を是とするのではない、私たちが『環境教育学』で取り上げた意味での“強い政治性”をもつ教育観だと思う。
                    • 田中先生は、また、つぎのようなご指摘も下さった。「教育は、ラディカルな変革そのものを生み出すのではなく、場合によってはラディカルな変革をも担う事のできる主体を生み出す仕事である。さらに正確に言えば、ラディカルな変革を選択肢の一つとして選択することができる主体を生み出す仕事である。」(配付資料2頁) ── 田中先生は「反オルタナティブ」と言われるが、この考え方は実はすごく「オルタナティブ」だと思う。これも、まさに本書『環境教育学』を編むにあたって、私たち執筆者が広く共有した考え方であった。
                    • すなわち、こうした考え方そのものを「オルタナティブ」として、私たちは提示したいと願っていたのだと思う。この場合の「オルタナティブ」は固定的なものではまったくなく、今日の強大にすぎるメインストリームの環境教育観やその具体的な取り組みに代わりうるものを、自由で闊達なやり取りのなかで生み出していきたいと考えているのだといえる。多様性が前提としてあり、いまは「とんでもない」と一蹴されるような選択肢も含めて考えてみる必要があるのだと思う。
                    •  さらに、ひとつ、付け加えておきたいことがある。『環境教育学』という著作は一定のイデオロギーにもとづくものであるのかどうか、という問いへの回答である。編者としての考えでは、この本の基底にあるものがイデオロギーであることは明白。『環境教育学』を作る際には、社会民主主義的な価値をかなり意識していた。
                    •  第1部のやり取りで言及されたが、2002年に京都精華大学で開催した環境教育シンポジウム(記録PDFファイル ☞  こちら  )で詳しくとりあげた『環境のための教育』で、著者 John Fienは、「イデオロギー:教育における志向性」として、3つの流れを引いて教育とイデオロギーの関係を論じている。それは、職業/新古典主義、自由/進歩主義、社会批判主義の3つである。今回の本は、イデオロギー面で無色透明ということではまったくなく、この分類で言えば3つ目の社会批判主義的な志向を前面に打ち出したものと考えている。
                    •  ついでながら、ここで「職業/新古典主義的志向」と呼ばれているものは、権威主義的な教育であって、『環境教育学』のなかで <環境教育>  と括弧をつけて批判されている取り組みのいくつかがそれに該当する(学習者自身がみずから考えて判断していくという機会をあまり与えないで固定的な指示を与えることに終始するなど)。
                    • また、「自由/進歩主義」であるが、(以前に今村さんたちといっしょにカナダで活躍する環境教育学者 Bob Jickling の議論を検討したときに気のついたことであるが)、これはこの立場自体がひとつの政治的な立場であるとともに、さらにこの主張の底部には、民主主義的な価値観が前提としておかれていると思われる(イデオロギーの自由な選択が被教育者に委ねられるているのではなくて)。たとえば、この立場は全体主義や強い国家主義の思想と相容れるものではない。
                    •  もうひとつ、安藤先生からは重要なコメントをいくつかいただき、ひとつひとつ、そのとおりであると思った。深く感謝している。そのなかに、第1部と第2部とをきちんとつないでおかなければ、「環境教育学」の姿がつかめないのではないかというご指摘があった。第1部と第2部とが有機的につながっていないというご指摘はそのとおりであると思う。それぞれが主題とした社会的公正と存在の豊かさは、断ちがたい関係でつながるものと考えるが、本書『環境教育学』において、言葉を尽くしてその連環を明確に示しえたとは言えず、また各章の記述にその関係がみえるように書き込むまでには至っていない。つぎの課題としたい。
                    •  なお、『環境教育学』という書名についてであるが、本書の内容やアプローチだけが「環境教育学」の名にふさわしいという傲慢な考えをもっているわけではまったくない。むしろその逆で、いまだ「学」としては至らないと考えることが膨大に残っている。ただ、批判的に環境教育を「学」として扱う試みが必要であるとは思っている。
                    • 本書の第1部、第2部は、それぞれ社会と存在をテーマとした章で構成されているが、これは、本書がエコロジカルな未来に向かう3つの課題(環境持続性、社会的公正、存在の豊かさ)という見方に依拠したことと、これら2つのテーマが2人の編者のそれぞれの関心に合致するということがあったからにすぎない。環境教育学がこれら2つの下位領域で構成されると主張するつもりもまったくない。
                    • 「持続可能な社会」という概念は、上記3つの課題とは違ったかたちで捉えることもできるし、同じように、環境教育学は本書とはまったく違った領域の研究によって構成されうるものでもあろう。これから先のさまざまな展開をおおいに期待したい。



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