2005年10月31日

【Aust】 オーストラリアの選挙結果が確定、アボリジニーの国会議員はゼロに

10月28日に AP-Greens のメーリングリスト
http://groups.yahoo.co.jp/group/AP-Greens
に配信したテキストに、大幅な加筆と数字の訂正を加えて、ここに掲載します。

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 接戦で、選好票(プリファレンス票、次善票) ── オーストラリアの選挙制度では、ある候補者の落選が確定した場合、その候補者の票が有権者の指定にもとづいて別の(まだ落選確定していない)候補者に再配分される ── の集計に時間がかかっていた上院議員選挙だが、10月28日にすべての州で議席が確定した。

 最後の最後までもつれこんだクインズランド州、国民党が最後の上院議席を獲得し、緑の党の名簿第1位ドリュー・ハットン候補は、残念ながら次点に終わった。
http://www.abc.net.au/news/newsitems/200410/s1229626.htm

 緑の党の上院議員は、非改選の2名をあわせて、4名(うち女性3)となった。タスマニア州のクリスは、ひやひやさせられたが当選した。しかし、クインズランド州で及ばなかったことで、与党保守連合が(下院にひきつづき)上院の過半数(76議席中の39議席)を制することになった。
http://www.abc.net.au/news/newsitems/200410/s1229626.htm

 これまで、保守連合のハワード長期政権下でも、上院はつねに野党が多数をしめ、重要案件についての政府案はたびたび否決されたり修正を強いられた。先住民族の土地権をめぐる1997年のマボ修正法(ウィック法案)をめぐる攻防は記憶に新しい。

 連立与党が上下両院を制したことで、今後、森林政策、エネルギー政策、温暖化対策、安保政策、自由貿易、社会福祉などの面で、反動的な法案が次々と出てくるおそれが大きい。
http://www.theage.com.au/articles/2004/10/27/1098667835621.html

 今回の選挙で選ばれた新しい上院議員の任期は2005年7月からであり、それまでは現状の「ねじれ」(上院では与党が少数)が続くので、11月からの会期ですぐに極端な動きはないものと思われるが、しかし既に、京都議定書を拒否する方針の継続、先住民族行政委員会(ATSIC)を廃止する方針の維持、公立大学(現在は州政府が管轄)を「国立化」する(連邦政府の管轄下におく)方針
http://www.theage.com.au/news/National/Union-threatens-action-over-changes/2004/11/02/1099362143359.html
などといった動きが目立ち、さらには、インドネシア領内の「テロリスト」の拠点への先制攻撃の検討(!)
http://www.theage.com.au/news/War-on-Terror/No-preemptive-strikes/2004/11/02/1099362144230.html
などといった物騒な観測気球までがあがっている。

 惨敗した民主党は、党首アンドリュー・バートレットが副党首にしりぞき、リン・アリスン上院議員が党首となる模様(彼女のこれまでの政治姿勢からすれば、緑の党とのさまざまな連携が考えられる)。唯一の先住民族出身議員だったエイドン・リジウェイ上院議員(NSW州選出、民主党)は落選した。アボリジニーの国会議員はこれでゼロとなった。


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上院での新勢力の分布は、下記の通り(2005年7月より)

 与党(保守連合)39 (自由党33、国民党5、地方自由党1)
 労働党     28
 緑の党      4
 民主党      4
 家族一番党    1

 ※単一民族党(One Nation Party)は全員落選して、議席を失った。


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下院での新勢力の分布と第1得票率は、下記の通り(2004年11月より)

 保守連合 87(46.8%)(自由党74 [40.9%]
              国民党12 [5.9%]
              地方自由党1 [0.3%] )
 労働党  60(37.7%)
 緑の党   0( 7.1%)
 家族一番党 0( 2.0%)
 民主党   0( 1.2%)
 単一民族党 0( 1.2%)
 その他   0( 6.0%)

 ※緑の党は、NSW州での唯一の議席を失った。民主党、家族一番党、単一民族党は、もともと下院議席をもっていない。
 ※「第1得票率」は、選好票が再配分される前の第1希望候補の得票率。

2005年10月30日

【Aust/Nuke/Env】 カカドゥのウラン鉱山で汚染事故

 オーストラリア北部、世界遺産カカドゥ国立公園地域で操業している唯一のウラン鉱山であるレンジャー鉱山(※)で小規模な汚染事故があったようです。

(※)リオティントの子会社ARE社が運営し、関西電力・四国電力・九州電力に核燃料用の酸化ウランを供給している。

以下、メルマガ「ジャビルカ通信」で出す予定のメモを載せておきます。
「ジャビルカ通信」の既刊分は次のサイトで読めます。
http://SaveKakadu.org

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レンジャー鉱山に併設のウラン製錬所内の
イエローケーキ(精製済み八酸化三ウラン)をドラム缶につめる設備内で作業員が汚染された模様。ただし、3月の事故(※※)のような内部被曝には至らなかったようだ。
http://www.theage.com.au/articles/2004/10/29/1099028207016.html
http://www.abc.net.au/news/newsitems/200410/s1231263.htm
http://www.abc.net.au/news/newsitems/200410/s1231129.htm

(※※)ウラン精製施設の処理水の配管の接続をまちがえて(!)、作業員の飲み水やシャワーの水にウランその他の放射性物質が混入し、150名以上が被曝した事故。製錬所内の水道水のウラン濃度は規制値の400倍に達した。

くしくも、ちょうど(3月の事故の責任をめぐる)行政裁判が始まっており(鉱山管理法違反として、9月末提訴)、早ければ今月下旬には、裁判所の判断が出る。
http://www.abc.net.au/news/newsitems/200411/s1233598.htm
http://www.abc.net.au/news/newsitems/200411/s1233377.htm

おそらく日本円にして数百万程度の罰金ということになるのだろうが、ことによると、操業の一時停止命令もありうる。


2005年10月18日

【Aust】 オーストラリア総選挙 上院のもつれ、緑の党の趨勢

 上院の集計が進んでいるが、例によって、最後の最後まで結果が分からない州が多い。(開票・集計になぜこれほど時間がかかるかは、10月10日のログを参照)。

 クインズランド州とタスマニア州で当選ほぼ確実と思われていた緑の党が、ここへ来て、危うくなってきている。これは、自由・労働・民主などの既成政党が選好票(プリファレンス)を緑の党よりもキリスト教右派の「家族一番」党(Family First Party)にまわしており、家族一番からの選好票も、緑よりは民主や労働や自由にまわっているためだ。

 ABC放送の政治評論家アントニー・グリーンの選挙分析によると、緑の党は、西オーストラリア州では議席を得る見込みだが、クインズランド州とタスマニア州で逆転敗退する可能性が高い。彼の選挙分析には定評がある。

 彼の票読み(選好票の再配分の詳細なシミュレーション)の結果を要約すると、次のようになる。(10月18日時点)

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● Antony Greenの分析(数字は各州ブロックの獲得議席数、定数は各6)

-WA 自由3 労働2 緑1 Rachel Siewert(←労働からの選好票により当選)
-QLD 自由3 国民1 労働2 (緑の Drew Hutton にもかすかな可能性)
-SA 自由3 労働3(←家族一番党からの選好票により3議席めを確保) 緑は可能性なし
-VIC 自由3 労働2 家族1 Steve Fielding 緑は可能性なし
-NSW 自国3 労働3 緑は可能性なし
-TAS 自由3 労働2 家族1 Jacquie Petrusma (←民主・労働・自由からの選好票により急浮上) 緑のChristine Milneにもかすかな可能性【分析後述】

※民主党と労働党が選考票を家族にまわしたのが痛い!
タスマニア州での集計見通しについて、アントニー・グリーンの分析は次の通り。
(ABC放送の選挙サイト http://www.abc.net.au/elections/federal/2004/results/sendTAS.htm)

If all votes are assumed to be ticket votes, then the final vacancy in Tasmania goes to Jacquie Petrusma of Family First ahead of Christine Milne from the Greens. However, the final margin of victory is only 4,300 votes. In 2001, one in five Tasmanian votes, or around 60,000 ballot papers, were cast below the line. Christine Milne is a well known political figure in the state, and it is quite likely that many below the line votes from the Labor, Liberal and Australian Democrat tickets will leak to Milne. The final result in Tasmania will now be known until all below the line votes are entered into the computer counting system, and the button is hit to distribute preferences.

(説明をおぎなって訳すと: 選好票の再配分が、すべて政党への投票(=チケット投票)にもとづいておこなわれるとすれば、上院タスマニア選挙区の最後の議席(=未確定の6つめの議席)は、家族一番党の名簿第1位ジャッキー・ペトルーズマ候補のものとなり、これまでリードしていた緑の党のクリスティーヌ・ミルン候補は落選することになる。その場合の票差は、わずかに4,300票だろう。前回2001年の上院改選では、有権者の5人に1人、票数にして約6万票は、政党にではなく候補者個人に投じられた。クリスティーヌ・ミルンはタスマニアでは知名度の高い政治家であり、労働党・自由党・民主党などの支持者が投票にあたって、選好票をミルン候補にまわすよう個人指定して投票した可能性はかなりある。したがって、この州の上院の確定議席を知るためには、これら個人指定の選好票がすべて集計入力され、電算機により選好票の再配分計算をしなければならないだろう。)

※【補足説明】 オーストラリアの選挙では、有権者は、政党に投票することも、候補者個人に投票することもできる。前者を「チケット投票」という。各政党は、自分の党の候補者が落選した場合、その票をどの党に再配分するかを優先順位つきで細かく指定している。それに対して、個人候補に投じられた票は、有権者が選好票の配分も個別に指定する(順番に番号をうつ)ことができる。上院選挙では数十名の候補が立候補しているので、これはなかなかに大変な作業(投票用紙も新聞をひろげたような大判の紙!)で、多くの有権者は簡単なチケット投票を選ぶのだが、タスマニアでは個人候補への投票を選ぶ有権者がほかの州よりも多い傾向がある。

※オーストラリアの選挙制度における「選好票」(プリファレンス、次善票配分)については、10月10日および9月27日のログを参照。



2005年4月3日

【Indig】レッドレイク居留区の若いこころみ

 最近、銃撃事件のことで日本でも報道された米加国境(ミネソタ州)レッドレイク先住民居留区(Red Lake Indian Reservation)を事件前に訪れていたスティーヴン・コーネル教授(ハーバード大学アメリカン・インディアン経済開発プロジェクト)に、オーストラリア放送協会(ABC)がおこなったインタビュー(05.3.22放送)の文字起こしがABCのサイトで公開されている。居留区の若い世代の社会運動が描かれていて、興味深い。

http://www.abc.net.au/pm/content/2005/s1329399.htm

2005年3月22日

【Nuke】 浜岡データ隠しに開示命令

 静岡地裁は、中部電力(本社・名古屋)に対し、浜岡原子力発電所の耐震設計データを開示するよう命令(3.16付)。東海地震がおこれば直撃をうけることになる浜岡原発の運転差し止めを求める訴訟で、市民側原告が浜岡原発の炉心および格納容器の耐震性に関する計算書などの提出を求めたところ、中電は「企業秘密だ」として重要な数字をすべてふせた資料しか出さなかったため、裁判所が全面開示を命じたもの。

中部電力は、裁判では「浜岡原発はどんな地震にもゆるがない」と強弁しているが、一方で大規模な耐震補強工事をおこなう計画であることが今年になってから判明した。原子力安全委員会(耐震指針検討分科会)の委員側から同社に工事内容の説明を要請したところ、同社は「説明すべき技術的内容はない」(??!)としてこの要請を拒んだという(2005.2.6付毎日新聞)。

2005年3月18日

【Paz/Media】ジュリアーナの手記 原典版

 2005年3月6日付『イル・マニフェスト』紙に掲載され、すぐに米CNN、英『ザ・ガーディアン』紙、仏『ラ・リベラシオン』紙に翻訳された。しかし、TUPによれば、これらの翻訳には、原文から大きくニュアンスのずれた表現や省略、明らかな誤訳があるという。TUPでは、イタリア語から翻訳が提供されている。

TUP速報478号「私の真実」解放後に米軍に銃撃された記者の手記 (2005.3.16)
http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/message/518
(翻訳はTUPの今村 和宏さん)

原文(イタリア語)は↓こちら
http://www.ilmanifesto.it/Quotidiano-archivio/06-Marzo-2005/art7.html


2005年3月8日

【Aynu】 知床世界遺産

先住民族ニュース(58)

報道記事につき取り扱いに御配慮ねがいます。

=====転載はじめ=====

Asahi.com 2005.3.8

アイヌ民族参画、IUCN「考慮」 知床・世界遺産登録

 世界自然遺産を目指す知床についてアイヌ民族の差別是正などに取り組む団体が、自然保護にアイヌ民族の思想を生かすよう、遺産登録の審査機関「国際自然保護連合」(IUCN)に求めたところ、担当者から「考慮する」との返書が送られてきたことが分かった。

 IUCNが少数民族の存在に配慮をみせたとみられる。遺産登録の可否には影響しないが、登録後に知床とアイヌ民族とのかかわりが課題として浮上する可能性もある。

 働きかけたのは、「少数民族懇談会」(事務局・札幌市)。同会はIUCNのデビッド・シェパード保護地域事業部長あてに昨年末、書簡を出した。同部長から1月下旬に、「(ユネスコに提出する)報告書の準備に関して、申し込みを考慮する」との返書が届いた。

報告書の中で、知床に残るアイヌ民族の遺跡の保存問題や、アイヌ民族のガイドの育成問題などが掲載される可能性がある。

 環境省などがまとめた知床の管理計画にはアイヌ民族は関与できていなかった。

=====転載おわり=====

2005年2月25日

【Nuke/Abs】 カカドゥでのウラン開発に先住民族の拒否権が確立


本日ひさびさ発信のジャビルカ通信のテキストです。


2005.2.25 ジャビルカ通信 第152号

 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
 ┃ ジャビルカ鉱区の長期管理協定に調印   ┃
 ┃ ミラル・グンジェイッミ氏族に拒否権確立 ┃
 ┃ ERA社、将来の開発の可能性を否定せず ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

「ジャビルカ長期保全管理協定」(the Jabiluka Long-Term Care and Management Agreement)が正式に調印されました。

これにより、ミラル・グンジェイッミ氏族 Mirarr Gundjehmi の人々(ジャビルカ地区の伝統土地権をもつアボリジニー集団)は、将来の鉱山開発に対して、完全な拒否権を確立しました。

理屈のうえでは、「ミラルの同意があれば、開発を再開することができる」ので、ERA社は将来の開発を目論んでいることを公言しています。しかし、ミラル側が同意することは、当面、まず考えられないでしょう。

この協定は、3年近くにおよぶ交渉の末、ようやく決着したものです。
オた。また、この協定を連邦政府と北部準州政府が認めるかどうかの交渉にも時間がかかりました。)

本日の調印について、詳しくは、AAP通信の配信記事とABC放送の定時ニュース原稿をご覧ください。

■http://www.theage.com.au/news/Breaking-News/Aborigines-to-have-last-word-on-Jabiluka/2005/02/25/1109180087882.html

■http://www.abc.net.au/news/newsitems/200502/s1311401.htm

■http://www.abc.net.au/news/newsitems/200502/s1310872.htm

■http://www.news.com.au/story/0,10117,12366558-17001,00.html

すみません、いま仕事がたてこんでいて、速報のみで失礼します。
このニュースを大庭里美さんに聞いていただけないのが、なんとも悔しいです。

実は、カカドゥ国立公園で、もうひとつ別のウラン鉱山(フランスが採掘権をもつクンガラ鉱床)を開発する話が動き始めており、まったく一難去ってまた一難、ええ加減にせんかい!という感じです。

そこらを含めて、近日中に解説記事を書きます。


2005年2月22日

【Env/Paz】 兵役拒否と自然エネルギー

 ドイツでは、いわゆる「良心的兵役拒否」が制度化されていて、兵役につくかわりに公共奉仕活動に一定期間従事することが認められている。「兵役代替奉仕」(Ersatzservice des militärischen Services)というそうだ。

 従来は、介護などの福祉活動と、河川保護や景観保全などの環境保護・自然保護の分野が認められてきた。このほど、ドイツ連邦環境省は、再生可能エネルギー(日本で言うところの「自然エネルギー」)の分野での活動(たとえば、バイオマス施設ではたらくとか、風力発電の研究の手伝いをするとか)も、この「兵役代替奉仕」として認めるように、連邦兵役代替奉仕省(...というのがあるんですね!)に要請したそうだ。

── 『地球号の危機ニュースレター』295号(2005年1月)、p.10.
(発行:大竹財団 http://www.ohdake-foundation.org)

元ネタは、↓こちらだね。
http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=8767&oversea=1

さらなる元ネタは↓こちら(ドイツ連邦環境省の記者発表)
http://www.bmu.de/pressearchiv/15_legislaturperiode/pm/6548.php

2005年2月21日

【Env】 APG 京都大会、大成功でした

昨年秋以来、宣伝しつづけてきた
 《 アジア太平洋みどりの京都会議 》  2月11日〜13日開催
http://www.nijitomidori.org/ap-greens/top.htm

★予想以上に参加者が多く(それゆえ混乱も若干ありましたが)大成功でした。
報道記事の↓一部です。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050212-00000274-mailo-l26
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2005021200099&genre=H1&area=K10

2005年2月8日

【Env】 はずかしながら...

めずらしく、いたちまるの職場の宣伝です。

第14回「地球環境大賞」の受賞者が今朝、発表されました。
http://www.business-i.jp/eco/jusyou/index.html

【グランプリ】 松下電工
【経済産業大臣賞】 シャープ
【環境大臣賞】 大日本印刷
【文部科学大臣賞】 清水建設
【優秀環境自治体賞】 静岡県三島市
【優秀環境大学賞】 京都精華大学
【優秀市民グループ賞】 とよなか市民環境会議アジェンダ21
【地球環境会議賞】 新日本製鐵
【日本経団連会長賞】 日本郵船
【フジサンケイ賞】 富士ゼロックス
【ビジネスアイ賞】 山形サンケン
【特別賞】 グンター・パウリ氏

... こう並べてみると、うちの職場だけ、なんだか異色ですわね。

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「地球環境大賞」というのは、フジサンケイグループ主催で、WWFジャパン(世界自然保護基金)が「特別協力」し、経産省・環境省・文科省の御三家が「後援」し、日本経団連が「協力」するという、いかにも体制御用達的なもので、受賞の顔ぶれをみても「産業界の内輪褒め」みたいな感じがする。精華の「正体」を知らない人がきっと選んでくれたのでしょう(・_・;
http://www.business-i.jp/eco/about/

こういうのを、精華が「体制的」になっていく兆候とみて、イヤな顔をする人もいると思いますが、まぁ、それほどたいした話ではありません。シャレみたいなもんです。

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今回の受賞者で、なかなかしぶい(coolな)のが、山形サンケンとG.パウリ博士です。

●山形サンケンは、廃棄物リサイクル99%達成(いわゆる「ゼロ・エミッション」)で有名な会社。

●パウリ氏は<ゼロ・エミッション>の提唱者として有名ですが、「日本では“フェイクの”(似非=えせ)ゼロエミッションが横行している」という的を射た苦言を呈した方でもあることを思い出しましょう!
http://www.earthdaymoney.org/mondo/index.php?id=1


2005年2月7日

【Nuke】 劣化ウラン兵器の禁止にむけて

3月9日の晩、同志社大学(京都)にて
A.ドラコビッチ博士講演会「放射性兵器の環境と人体への影響」
Environmental and Human Health Impacts of Radioactive Weapons

コメンテーター)天木直人氏

くわしい場所・時間は↓こちら
http://www.kyoto-seika.ac.jp/jinbun/kankyo/event/event_526.html

【参考】http://www.jca.apc.org/stopUSwar/DU/no_du_report23.htm

2005年2月4日

【Libros】 もうひとつの世界は可能だ!

変革の実践と知性が↓ここに凝集
『世界社会フォーラム ── 帝国への挑戦』 作品社 2005年1月刊
http://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/shakai/tanpin/20162.htm

2005年2月3日

確定申告の季節になったので...


【確定申告の季節になったので...】

●「国境なき医師団」ではインターネット寄付を受け付けています。(1万円をこえる寄付金は所得税から控除できます。)

詳しくは↓
http://www.msf.or.jp/support/tax.php


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【就活の季節になったので】

エコビジネスネットワーク編(2003)『環境の仕事大研究』産学社 1,500円+税
http://www.dimages.org/book3/

●環境ビジネス関連企業、一般企業の環境部、NPO・NGO、行政に至るまで、はばひろい環境の仕事を網羅。どんな企業がどのように関わっているか、意外と知られていない仕事の内容、さらには就職へのアドバイスなど、有用情報満載。


2005年1月30日

【Env】 バルディーズの打撃、予想以上

 1989年のアラスカ原油流出(悪名高いエクソン・バルディーズ [= バルデス] 号事件)による現地での環境影響は、いまだ「回復からはほど遠い」という状態にあることが、最近の研究報告であらためて確認されたという。

 海と沿岸生態系への影響が長期におよぶことは、ある程度予想されていたが、事故から15年、人々の記憶も薄れつつあるのとは裏腹に、ラッコ、シャチ、海鳥などに予想以上の汚染影響が残っている。1991年に巨額の賠償金を支払って事故の法的責任をとったエクソン・モービル社は、現地の環境はとっくに回復していて問題は残っていない、とする見解をとる。
── ロイターの環境ニュース(2005.1.28付)
http://www.planetark.com/avantgo/dailynewsstory.cfm?newsid=29251


 20年以上前のボパール事故(インドでの米国ユニオン・カーバイド社の農薬工場の爆発事故)でいまだに現地の飲料水源が汚染され続けている、と報じた昨年秋のBBCのニュースを思い出す。
http://www.abc.net.au/news/newsitems/200411/s1243228.htm

2005年1月27日

【Aynu】 静かな力泳

 昨日(2005.1.26)付の日経新聞(文化欄)に小川早苗さんの長文エッセイ「アイヌ女性 誇りの紋様」が掲載されてます。

 「伝統をうけつぐ」という行為が、アイヌの場合、淡々と受け身で出来ることではなく、波にさからって泳ぐような激しい意識を保ちつづけることでのみ可能だということがよく分かる。

 しかし、小川さんのエッセイからは、そのようなアグレッシブな側面よりも、むしろ、到達した静かで穏やかな境地が感じられる。

2005年1月26日

【Dev】大津波その後 ── スリランカ漁村支援

 元日のログで紹介したように、PARC(アジア太平洋資料センター)が漁村支援活動をしていたスリランカ北端のジャフナ半島も、先月の大津波で被災。避難キャンプの様子について、PARC現地駐在員の今成彩子さんから報告が届いた。

 → http://www.parc-jp.org

2005年1月25日

【Indig/Env】 サハリン・ブロッケード

 19日のログに書いたサハリン先住民族による「緑の波」ブロッケードは予定通り、開始された。現地の先住少数民族協会は、国際協力銀行(JBIC)の篠沢総裁に対し、書簡を送り、次の点を指摘し、JBICがサハリン石油開発に融資しないよう求めた。

*サハリン開発がJBICの環境社会配慮ガイドラインに違反していること
*同じくILO169条約にも違反していること


 同書簡(2005.1.21付)の日本語訳は、FoE-Japanからも入手できるが、いたちまるに連絡いただいてもテキストを回送します。

この問題について、これまでの経緯は、こちら↓から:
http://www.foejapan.org/aid/jbic02/sakhalin/index.html

2005年1月24日

【Abs/Art】 アボリジニー美術

バラリンジ・デザイン展 2月4日〜26日 於)銀座

 → http://www.arts.australia.or.jp/events/0501/balarinji/

2005年1月19日

【Indig/Env】 サハリン、先住民族による抗議行動、パイプライン封鎖

 ロシア政府と多国籍石油会社(と裏でこそこそ立ち回る日本政府と日本企業)による開発強行に抗議し、サハリン北方先住民族が明日から本格的な道路封鎖に。

 以下、FoE-Japanの村上 正子さんからのメールをもとに、いたちまる流に編集して掲載します。
── もとは、ODAメーリングリストNo.5172として配信されたプレスリリース(2005.1.19)です。

 ニブヒ、ナナイ、ウイルタなど、サハリン北部の先住民族グループは、2005年1月20日正午よりサハリン北部ベンスコエで道路封鎖、パイプライン封鎖などの抗議行動を開始する。厳寒の中、抗議活動は数百人規模、24時間体制で続けられる。

 今回のブロッケード行動は、「緑の波」と名づけられている。

 これは、ロシア政府とエクソンモービル、英BP、サハリンエナジー(シェル・三井・三菱)など、サハリン島で石油・天然ガス開発を行っているすべての石油会社に対して行われる抗議活動である。

 不当な弾圧を受ける恐れもあることから、サハリン北部先住民族代表は、昨年末、サハリン石油ガス開発事業へ融資を検討している国際協力銀行(JBIC=日本の政府機関)や欧州復興開発銀行(EBRD)に「調停役」として現場に立ち会うよう要請していた。JBICは、この件に関して「調査中」とし、姿勢を明確にしていない(1月18日現在)。

 自然と密接にかかわりあって暮らすサハリン先住民族にとって、開発による影響は甚大。森林や動植物が失われることは、先住民族にとって死活問題である。彼らは魚への悪影響をすでに察知している。

 北方シベリア極東ロシア先住民族連合(RAIPON)は声明文の中で「これまで企業は、サハリン先住民族の権利を考慮してこなかった。環境評価には、先住民族の伝統的な暮らしへ長期的な視点での影響や対応策などが全く含まれていない」と述べている。


◆詳しい背景、および、今後の情報は、FoE-Japanの「サハリン石油開発」のページへ:
http://www.foejapan.org/aid/jbic02/sakhalin/index.html
http://www.foejapan.org/aid/jbic02/sakhalin/letter/20050114.html

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 いたちまる思うに、先住民族は、かれらの文化・慣習・生活を十分考慮にいれた公正な <社会的影響評価(SIA)> の実施を求めているのだ。まともなSIAをおこなわない事業に融資するのは、JBICの環境ガイドラインに対する明らかな違反ではないか?

【Indig】サハリン続報

先住民族ニュース(57)

前便で配信したサハリンでの先住民族による道路封鎖行動の続報です。


ロシア政府と多国籍石油会社(と裏でこそこそ立ち回る日本政府と日本企業)による開発強行に抗議し、サハリン北方先住民族が明日から本格的な道路封鎖に。

以下、FoE-Japanの村上 正子さんからのメールをもとに、いたちまる流に編集して掲載します。
── もとは、ODAメーリングリストNo.5172として配信されたプレスリリース(2005.1.19)です。

ニブヒ、ナナイ、ウイルタなど、サハリン北部の先住民族グループは、2005年1月20日正午よりサハリン北部ベンスコエで道路封鎖、パイプライン封鎖などの抗議行動を開始する。厳寒の中、抗議活動は数百人規模、24時間体制で続けられる。

今回のブロッケード行動は、「緑の波」と名づけられている。

これは、ロシア政府とエクソンモービル、英BP、サハリンエナジー(シェル・三井・三菱)など、サハリン島で石油・天然ガス開発を行っているすべての石油会社に対して行われる抗議活動である。

不当な弾圧を受ける恐れもあることから、サハリン北部先住民族代表は、昨年末、サハリン石油ガス開発事業へ融資を検討している国際協力銀行(JBIC=日 本の政府機関)や欧州復興開発銀行(EBRD)に「調停役」として現場に立ち会うよう要請していた。JBICは、この件に関して「調査中」とし、姿勢を明 確にしていない(1月18日現在)。

自然と密接にかかわりあって暮らすサハリン先住民族にとって、開発による影響は甚大。森林や動植物が失われることは、先住民族にとって死活問題である。彼らは魚への悪影響をすでに察知している。

北方シベリア極東ロシア先住民族連合(RAIPON)は声明文の中で「これまで企業は、サハリン先住民族の権利を考慮してこなかった。環境評価には、先住民族の伝統的な暮らしへ長期的な視点での影響や対応策などが全く含まれていない」と述べている。


◆詳しい背景、および、今後の情報は、FoE-Japanの「サハリン石油開発」のページへ:
http://www.foejapan.org/aid/jbic02/sakhalin/index.html
http://www.foejapan.org/aid/jbic02/sakhalin/letter/20050114.html

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いたちまる思うに、先住民族は、かれらの文化・慣習・生活を十分考慮にいれた公正な <社会的影響評価(SIA)> の実施を求めているのだ。まともなSIAをおこなわない事業に融資するのは、JBICの環境ガイドラインに対する明らかな違反ではないか?


なお、詳細は、FoEのウェブサイト:
http://www.foejapan.org/aid/jbic02/sakhalin/index.html
http://www.foejapan.org/aid/jbic02/sakhalin/letter/20050114.html

2005年1月18日

【Abs】 歴史にひたるアボリジニの時間感覚

 保苅くんの『ラディカル・オーラル・ヒストリー』(2004.9.11のログ参照)の書評が日曜日の毎日新聞(2005.1.16)に載っているのに、今朝気がついた。辻原登・評。

 「豊穣なアボリジニの時間と [中略] 植民地主義的時間が、本書の中で対決する」という要約は、的を射ている。

2005年1月16日

【Paz】 思想検閲の時代に、私たちはいかなる技をみがくか

「右傾化」などという言葉が可愛く聞こえるような、この国の昨今。もはや、検閲をいかに防ぐか、よりも、まかり通る検閲にいかに効果的に対抗していくか、その技を磨き、市民が共有していくことが肝要だろう。

旧ソ連やチリ軍政下などでの人々の経験から、少なくとも次の2つがきわめて有効な「技」であることが分かっている。

*統制対象となった情報を流通させること ── あれこれ能書きをつけなくとも、「隠されようとした事実」をなるべくそのまま流すのが、一番効く!

*おちょくり、嗤い、皮肉り、戯画・パロディー化し、コケにしまくること(「ほめ殺し」ってのも、あったわな) ── 「遠吠え」に見えても、みながへこたれず元気を保つことが次につながる! 笑ひは癌の特効薬だそうですし...


■こちら↓にNHK番組から削除された元日本軍兵士による加害証言
http://www.ne.jp/asahi/tyuukiren/web-site/syougen/nhk_special.htm

■NHK内部から↓の声
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200501040201362

■元チーフプロデューサーによる↓告発会見
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20050113k0000e040067000c.html

■こちら↓が検閲の的にされた「女性国際戦犯法廷」
http://www1.jca.apc.org/vaww-net-japan/womens_tribunal_2000/index.html


AB王子様のTVでの「大反論」を見ましたが、声うちふるえ、眼が泳ぎ、「激昂」というよりは「動揺」しているのが分かりますな (^_-)

2005年1月11日

【Paz】 戦争で儲けた会社ランキング

 米国が世界各地で戦争をしかけてまわるのは、石油確保と軍需産業の仕事確保のため、というのがほぼ定説といってよいが、このほど核時代の平和財団(NAPF)が配信したファクトシートは、そのことを分かりやすく示してくれている。

The Nuclear Age Peace Foundation, 31 December 2004
"The Top Ten War Profiteers of 2004"
http://www.wagingpeace.org/articles/2004/12/31_center-corporate-policy_war-profiteers.htm


 日本語訳は、益岡賢さんがすばやく『Falluja, April 2004 - the book』のサイトに載せてくれている。さすが!
   ↓
「2004年に戦争で儲けた企業トップ10」
http://humphrey.blogtribe.org/entry-2d5e8d4fc030aa4f9c462b483dcd5d16.html

2005年1月9日

【Egy】 萬晩報から四題

 メールマガジン『萬晩報』は、それぞれの筆者の個性とそれを裏打ちする体験の豊かさが感じられて、いつも面白い。

 本日着信の藤澤みどりさんの「南アジア津波災害ー3分間の沈黙」(2005.1.9付)
は、う〜ん、欧州人の共同体意識というものの奥深い強さが感じられる報告で、一読に値する。おすすめ。黙祷のとき、バスも路肩に寄って止まる、銀行も郵便局も窓口の仕事が止まる、ラジオも沈黙する、というのは、やはりハッとさせられるね。

『萬晩報』の主宰者である伴 武澄さんの最近の配信では、電気の「直流/交流」をめぐって、なるほど目からウロコ、はたと膝をうちました。

「直流ハウスでエネルギー革命は可能か!?」(2005.1.6付)
http://www.yorozubp.com/0501/050106.htm

「エジソン時代の直流・交流論争」(2005.1.7付)
http://www.yorozubp.com/0501/050107.htm

「究極の分散型電源は燃料電池車」(2005.1.8付)
http://www.yorozubp.com/0501/050108.htm

2005年1月8日

【musica】 トスカニーニはやっぱ、すごいわ

 もはや、松もとれてしまいました(というても、わが家では松飾りも何もしないんですが...)。

 どうも、また、目を△にする毎日が始動してしまったようなので、ちょいと精神の均衡をとりもつために、最近のお気に入りの曲と演奏を紹介。

 ずいぶんひさしぶりに、トスカニーニの演奏をきいた。BBCシンフォニーとのライブでブラームスの2番。たぶん1938年の演奏会。LPにはなっていなかったのが、93年にCDに焼かれたものらしい。

 いやぁ、昔々 ── もう40年近くも前の頃(^^;) トスカニーニが好きで好きで、よくきいたものですが、その頃は、彼の快テンポの疾走ぶりがたまらなかった。でも、このニ長調シンフォニーでは、テンポはあいかわらず早いのだけど、ものすごく歌うフレージングが印象的だ。快速なのに、ゆったりときこえる。

... 昔はそういうところが分からなかっただけなのかも知らんが。

 CDレーベルはEMI系列で、Testament SBT-1015 モノラルですが、充〜分堪能できます。

【Indig】 先住民族の国際10年、しきりなおし

 1993-2004年は、国連の「世界の先住民の国際10年」だったのだが、「先住民族の権利宣言」の草案(本来は、人権委員会→経済社会理事会→総会と順次クリアしていくべきもの)が塩漬けにされるなど、実質的な権利保障の進展のないまま終了してしまった。これでは、いくらなんでも、というので、仕切り直しの第2期を設定することになった。

 この第2期国際10年(Second International Decade of the World's Indigenous People)は正式に決まったのか、という問い合わせを受けたので、チェックしてみたら、次のように確定したようだ。

第59回国連総会の公式記者発表10321番(2004年12月20日付)
http://www.un.org/News/Press/docs/2004/ga10321.doc.htm
のなかに、こう明記されている。
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Among new initiatives enacted as a result of the Assembly's actions in other areas of its work, a second International Decade of the World's Indigenous People was proclaimed, to commence on 1 January 2005. By the text, the Secretary-General was requested to appoint the Under-Secretary-General for Economic and Social Affairs as the Second Decade's Coordinator, and to establish a voluntary fund as a successor to the already-existing Voluntary Fund. The Assembly also decided to continue observing the International Day of Indigenous People during the Second Decade.
----------------------------

第59会期の総会決議の一覧表
http://www.un.org/Depts/dhl/resguide/r59.htm
を見たところ、174番決議(A/RES/59/174)がこれにあたることが分かる。

決議本文はまだ上記の国連ウェブサイトには掲載されていないが、いつものペースだと、2月頃にはアップされるのではないかしら。

決議の原案は、次の国連サイトからダウンロードできる(PDF文書)
http://daccess-ods.un.org/TMP/2934065.html
けれど、これは原案なので、総会にかかる前に微妙に修正されていると思われます。

2005年1月7日

【Nuke】 平井さんロング・インタビュー、連載完了

大晦日に紹介した故・平井憲夫さんのロング・インタビュー記事、市民新聞『JanJan』で8回連載が完了した。

最終回(8)のページ↓から、各回にリンクしてます。
http://www.janjan.jp/living/0501/0412292142/1.php

2005年1月6日

【Indig】 アンダマン諸島の続報

目に付いた記事を2本

●ロイター(2005.1.6)「Indian Tribe May Struggle to Survive After Tsunami」
http://www.planetark.com/avantgo/dailynewsstory.cfm?newsid=28817

先住民族(漁撈採集民)に直接の犠牲者はあまり出なかったようだが、津波でマングローブ林と入り江の生態系が掻き乱されたため、彼らの食料採集がしばらく難航する恐れがあり、そうなると、人口の少ない集団(オンゲ、ションペンなど)はかなり危機的状況に陥る恐れがある、との見通しが語られている。

●日刊ベリタ(2005.1.4)「孤絶して生きるアンダマン諸島の先住民 大きな被害は免れる? 」
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200501041834192

こちらの記事では、逆に、町の生活に同化していない自然のなかで暮らす集団は、森から食料調達できるが、むしろ同化して都市での食糧供給に依存してしまっている人々のほうが危機は大きいだろう、とのサバイバル・インターナショナルの見解を伝えている。

2005年1月5日

【Indig】 アンダマン・ニコバル、追伸

 なぜか、毎日も読売も共同通信も、アンダマンからの取材報告を競うように記事にしている。自由に取材に動ける地域ではないので、いきおい、似たり寄ったりの伝聞を並べている。5日付けの毎日は、BBCの報道内容を紹介しているが、その中味は実はAFPの記者が沿岸警備隊のボスから聞き出したこと(1月2日の当ログを参照)。

インド政府が外国からの支援を「謝絶」したというのは、アンダマン・ニコバルにあまり外国人をいれないことと関係があるのかな、という気もするが、邪推か。

2005年1月4日

【Indig】アンダマン・ニコバル続報

 サバイバル・インターナショナルのソフィー・グリグさん(1月3日のログを参照)からメールの返事があった。
 
 津波の直後、島々でくらす先住民族が大勢流されたという噂が流れたが、確たる根拠は無かったそうだ。一方、インド軍は「大丈夫、大丈夫」ときわめて楽観的な報告をしたが、これも根拠は無かったそうだ。ニコバル本島のションペン人のように、もともと入植インド人との接触が少なく、人が行っても隠れたり散ってしまう集団なので、津波後の状況について、確実な情報は何も得られていないとのこと。

 確実な情報がはいったら、また知らせてくれるとのこと。

 昨日ログを書いた時点では見ていなかったのだが、今日、仕事始めで職場に届いていた元日の『朝日新聞』をみたら、なんと、アンダマン・ニコバルの報告が載っていた(大阪14版の2面と4面、大野良祐特派員のポートブレアでの聞き込み)。それと、今晩のTV朝日(報道ステーション)の大津波特集のなかでもアンダマン・ニコバルの紹介があった。伝統的な狩猟採集生活を続ける少数先住民族がいること、取材が制限されていること、インド海軍にとって要衝であること、などが紹介されている。

 記事や番組ではふれられていなかったが、この地域に入植しているインド人は、まったくの一般人というわけではなく、退役軍人が多くを占めているので、全体として“軍の島”という様相を呈している。政府は「少数民族はちゃんと保護されている」と言って取材をさせないが、サバイバル・インターナショナルはかねてから人権侵害や土地剥奪がある(とくにジャラワ人の場合)としてキャンペーンを展開している。

2005年1月3日

【Indig】アンダマン・ニコバル

 きのうのログでアンダマン・ニコバル諸島の先住民族への津波被害の心配のことを書いたら、そのあとサバイバル・インターナショナル(※)からの記者発表(1月2日付)が届いた。

それによると:

*ジャラワ人(270人)は被害なし(居住地域が沿岸ではない)。
*オンゲ人(約100人)海の動きを熟知していたので、大津波を察知し、 高台に逃れて無事。
*アンダマン本島の41部族、おそらく被害はないものと推定されるが、確認とれず。(昨日のログで紹介したションペン人については「信頼すべき情報なし」とされている。)
*センティネル島民(50-250人)、ヘリから見たところ、生存している模様だが、島に着陸できないので確認とれず。
*ニコバル人(3万強)津波被災いちじるしい。

 今回、アンマン諸島よりもニコバル諸島のほうではるかに被害が大きかったそうだ。先住民族諸集団のうち、政府の直接保護管理下にはいっている(指定集落に定住している)部族については状況が把握できているが、そうでない人々については十分な状況把握ができていないらしい。

 AFP電との内容の不一致については、サバイバルのアンダマン担当であるソフィーにメールで問い合わせを出しておいたので、返事がきたら、紹介することにする。


【註】 Surviaval International は、世界各地の少数先住民族の生存、文化維持、人権擁護のためのキャンペーンを展開するNGO。1969年設立。人類学者をはじめとする多くの研究者やジャーナリストらが参加している。
http://www.survival-international.org
日本でのネットワークは
http://www.asahi-net.or.jp/~vi6k-mrmt/survival.htm



【Indig/Env】 サハリン先住民族の道路封鎖

先住民族ニュース(56)

FoEの村上正子さんからの情報の転送です。
(重複してご覧になる方、ごめんなさい。)

=====転載はじめ=====

『サハリン北部の先住民族が石油ガス開発に抗議し、2005年1月20日より
建設道路の封鎖を開始。石油会社との調停をJBICなど4行に申し入れ』

ニブフ、エベンキ、ナナイ、ウイルタなどサハリン北部の先住民族が、
サハリン島で行なわれている石油・ガス開発に抗議し、1月20日より
「建設道路封鎖などの抗議行動」を行なう決定をしました。先住民族
はサハリンエナジーなど石油会社に対し、サハリン開発が過去、現在
そして未来にわたって先住民族の環境と伝統的な生活に与える影響を
判断するための「民俗学的専門調査」の実施を求めています。

これに先立ち先住民族の代表は、現在サハリンII第2期工事への融資を
検討している国際協力銀行(JBIC)など4行に対し、石油会社との問題
解決を行なう「調停役」として、抗議行動に合わせてサハリン入りを
要請するレターを提出しました。憲法に基づく権利を訴える先住民族
に対して、州政府や石油会社から不当な圧力がかけられる恐れがある
とされており、問題解決にはJBICなど金融機関の関与が重要だとして
います。

レターで先住民族の代表らは、JBICに返答を求めています。今後の
状況が分かり次第またお伝えしていきます。以下、先住民族代表より
12月28日付けでJBICに送られたレターです。

———————

国際協力銀行
総裁 篠沢 恭助 殿

ユジノサハリンスクで2004年10月29日、第5回サハリン北部先住民族
大会が開かれました。少数民族の代表が集まり、サハリン島で進めら
れている石油ガス開発が、サハリン少数民族の古来の環境や伝統的な
土地使用、および生活に与える複雑な問題について話し合い、分析し
ました。

そこで我々は、この開発によって少数民族と石油会社の間に生態学的・
社会経済的にさまざまな問題が起こっていることを確認しました。
石油会社の中には、サハリンII第2期工事に伴い、現在貴行に巨額の
公的資金の融資を要請しているサハリンエナジー社も含まれます。

今大会で少数民族の代表は、採掘基地モリクパックが設置された1998年
以来、サハリンIIプロジェクトが先住民族に対して漁業資源の損害など
数々の影響を及ぼしていることを宣言しました。こうした状況にもかか
わらず、サハリンエナジーとその株主のシェル、三井、三菱は、先住民
族コミュニティに対し、適切な補償を直接行なってきませんでした。同
プロジェクトが始まってから10年の間にサハリンエナジーが行なった慈
善的金銭支援は約33万ドルと十分なものではなく、そして今、同プロ
ジェクトは急ピッチで進行しています。

我々は、サハリンIIプロジェクトの建設により、パイプラインがサケの
産卵する川を掘り起こし、横切ることで漁業資源が減少することや陸上
パイプラインがトナカイの牧草地や何種もの野生生物が生息する森を破
壊すること、そして先住民族の環境が汚染されることを懸念しています。

先住民族が伝統的に使用する土地での動植物への被害は、先住民族の生活
に死活的な損害をもたらします。しかしこれまで、先住民族の伝統的な
土地使用や生活様式に与えられた損害は考慮されておらず、サハリンエナ
ジーの経営者にも明らかにされていません。

それゆえに、第5回サハリン北部先住民族大会の代表は、サハリンIIを含む
サハリン石油開発計画が、先住民族の伝統的な自然資源の保護のために
近代的かつ文明的なアプローチを取っていないどころか、先住民族の厳しい
生活状況をさらに悪化させていることを声高に表明します。

開発が進む中、第5回サハリン北部先住民族大会は、サハリンIIプロジェ
クトの主要な道路やパイプライン建設ルートを塞ぐ抗議行動を実施する
ことを決めました。指揮を取るために設置された特別運営委員会によって、
2005年1月20日より封鎖を開始することが決定されました。

我々の要求は、サハリン先住民族の環境と伝統的な自然資源使用に対して
サハリンIIプロジェクトが過去、現在そして将来に与えた(る)影響を
判断するための「独立した民俗学的専門調査の実施」だけです。

先住民族に与える影響に関して、サハリンエナジーが行なった環境社会
影響評価書(ESHIA)は信用できるものではありません。民俗学的専門調査
は、完全に独立的に行なわれなければなりません。それを実現するためには、
「先住民族コミュニティあるいはその代表が、独立専門家か専門的組織を
選ぶ権利を有すること」と「サハリンエナジー社が、民俗学的専門調査に
かかる費用を負担すること」を提案します。同プロジェクトの設計変更など
も含めた、適切で不可欠な予防措置と補償方法を決定できるのは、この方法
しかありません。

これまで、問題解決を探るために石油会社と対話を試みてきました。石油
会社に対し、独立民俗学専門調査の実施に合意し、サインするよう提案して
きました。そして2004年12月15日、サハリンで開発を行なっているすべての
石油会社と会合を持ちました。しかし、ロシア国営企業ロスネフト社から
CEOのラミル・バリトフ氏が参加しただけで、サハリンエナジーなど外国の
石油会社は、問題解決に対し何の権限も持たない広報の社員を送ってきました。
これは、サハリンエナジー社とその株主であるシェル、三井、三菱が、
サハリンの先住民族を軽視していることを意味しています。

もはや我々には、建設を妨げる長期的な抗議行動を取る以外に、サハリンの
先住民族の環境、自然資源、伝統的生活様式を守る可能性は残されていません。

サハリン先住民族組織の代表は、サハリンIIプロジェクトの融資を検討して
いる各行の総裁に対し、こうした問題を解決するための協力を要請します。
抗議活動は2005年1月20日から実施予定ですが、その期間、サハリンエナジー
と先住民族の調停役として貴行から代表をサハリン島へ派遣しほしいのです。
こうした調停が、問題解決に向け重要な役割を果たすことを確信しています。

貴行の代表がこの期間にサハリンにいることが、先住民族に対する石油会社や
ロシア政府からの不当な弾圧を防ぐ事になることにもどうぞ留意してください。

このレターに対する返事をメールあるいはファックスでいただけるようお待ち
しています。

Alexey Limanzo,
President of the Association of Indigenous Peoples of North Sakhalin Region
(サハリン北部先住民族協会代表)

Vladimir Sangi,
Chair of the Council of Elders, Noglik Society of the Nivkh People Ketnivgun,
tribal chief and member of the UN Economic and Social Forum organization International League for Human Rights
(ノグリキ地域ニブフ長老議会議長、国連経済社会フォーラム組織人権国際連盟部族長)

Kim Limanzo,
Chairman of the Association of Indigenous Peoples of Nogliki District
(サハリンノグリキ地区先住民族協会議長)

Vladimir Machekhin,
Chairman of the Regional National Cultural Autonomy “Evenki of Sakhalin Region”
(サハリン地区エベンキ:地方民族文化自治議長)

=====転載おわり=====

over

2005年1月2日

【Indig】 大津波でアンダマン諸島は...

 インド洋大津波の起因となったスマトラ沖地震第2波の震源域がアンダマン・ニコバル諸島の直近だというので、ジャラワ(アンダマン・ニコバル先住民族)の人たちがどんな状況におかれているのか、気になっている。

 以前からインド政府(軍)の報道規制がかたくて、マスメディアにはほとんどまともな情報が流れない地域なのだが、今回、ロイターとAFPで異なった見方が報じられている。

 ロイターのほうは、先住民族は島々の奥の森林を中心に居住しているので、ほとんど被災していない、という沿岸警備隊筋の見解を伝えている。
http://www.planetark.com/avantgo/dailynewsstory.cfm?newsid=28746

 AFPのほうは、沿岸湿地(マングローブ)地帯にくらすションペンと呼ばれる集団がほぼ壊滅した恐れがあるという見方を、海軍筋の説明とAFP通信員の取材情報として伝えている。
http://www.abc.net.au/news/newsitems/200412/s1274291.htm

 ジャラワの諸集団(いわゆる Andaman Islanders)は、人類学では「有名部族」だが、ここ何十年かはインド政府の隔離政策のもと、外国人研究者はアクセスできない状況が続いていると聞く。インドネシアとの領有権争いも背景にあるのだろう。インドの人類学者による報告はあるのだが、その政治性から、報告内容の評価は難しい。
(※もしかすると、いたちまるの勉強不足で、最近は状況が変わっていたのかも知れませんが... ご存じの方いらしたら、ぜひ教えてくださいな。)

2005年1月1日

インド洋大津波 緊急支援

あけまして、すこしだけおめでとうございます。

●インド洋大津波の被災地への緊急(および長期的)支援が赤十字、国連、WHO、各国政府機関、さまざまなNGOを通じて、取り組まれていきます。

このような規模の災害は、既存の政治・経済・社会的差別を増幅するというかたちで「人災的に増幅」していくことがあまりに多く、支援がどのような形で現地の人々に届くか、実際の「支援活動・支援物資」が現地の社会にどのような影響をもたらすかという難しい問いをつねに私たちにつきつけてきます。

そのような視点から、もっとも社会的に弱い人々に直接支援がとどく信頼できる窓口として、いたちまる個人的おすすめは、次の2つです。詳細はそれぞれのサイトをご覧下さい。

★アチェ(スマトラ島北西地域)の被災者支援: 
インドネシア民主化支援ネットワーク(NINDJA)
→ http://www.nindja.com/gempa.html

★スリランカ北部(とくにジャフナ半島地区)の被災者支援: 
アジア太平洋資料センター(PARC)
→ http://www.parc-jp.org/campaign/sriranka/sriranka041227.html